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2009年11月02日(月)
夕暮れすぎて








夕暮れすぎて夜になったら
まだ夕暮れのままの場所まででかけましょう
そこはビルが半分だけ立っていたり
もう半分で海が見えたりするところ
コートを着たままやって来たのに
まだ夏の匂いのするところ

夕暮れどきは子どものものだとおもうから
少し恥ずかしくても子どもの姿になってしまうから
子どもの姿でいるだけで
お喋りすることがいくらでもあるでしょう
そこはもう会えないひとたちが木の後ろに隠れて
話だけ聞いててくれそうなところ
もう会えないひとたちの名前がほんとは夕暮れなんだと
気付いてはまた忘れていってしまうところ

夕暮れどきが
夕暮れすぎる場所に立ってみれば
振り返ってみるだけで町も
少しだけ離れたところにいてくれる
おとなの姿のままのきみがもしも
そんな場所で僕をみかけたら
なんだ、ひとりじゃないかっておもうのかもしれないけれど

それは外灯がちらちら灯りはじめた隙間にいて、僕も
ただの詩の一行になっているのかもしれないところ
風には汚れた手を洗いながら
でも生きてた、よかったねと言ってあげられるかもしれない、
でも死んでたとしたってそれはどっちでもいいよって
おもえるかもしれないところ