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沙夜



 葛藤

映画はやめてスタバでお茶した。
1時間程の間に、2回もトイレに立つ彼。


(善)
具合悪そうだし、夜ご飯も食べられそうにないみたい。
今日はもう帰してあげなくちゃ。
少しでも会えたんだし、初詣に行けただけでもいいじゃない。


(悪)
会って2時間で、もうさよなら?
次に会えるのは3週間後だよ?
この寂しさを充電しないまま3週間なんて耐えられない。


(善)
自分の気持ちなんかよりも、彼の身体の方が大事でしょ。
彼は「帰りたい」と言えないでいる。
だから私が「帰ろう」と言ってあげなきゃ。
食欲も性欲もないって言ってるのに、どこに行くっていうの?


(悪)
やだやだやだー。
エッチなんかいいから、一緒にごろごろしたりテレビ観たりしたい。
ホテル行こうよー。
こんな早い時間に家に帰りたくないー。


なんて脳内で葛藤しながらも「今日は帰りましょ」とか言っちゃう私。
バカ〜。


帰っちゃうの?

うん。ご飯、食べられそうにないでしょう?

…ごめんね。

仕方ないよ。


あー、もう、泣きそう。
バカバカバカバカ。>自分


地下鉄の改札まで送ってくれながら、彼は何度も「ごめんね」って言う。


早く治すからね。今度会う時は元気になってるからね。
あ〜、ダメだよな〜。なんで正月っから…



私はただ「うん、うん」としか返事が出来なかった。
なんか言わなくちゃ。
『いいの。少しでも会えて良かった。早く治して元気になってね』とか。


ああでも、ダメだ。いっぱいいっぱいだ。
帰りたくないよーー。


(ぐず。ぐず)


沙夜ちゃん? あれ、泣いてるの?
やっぱりどっか行こうよ! ね?ね?


ううん。
ごめんね、泣いたりしたらあなたが帰れなくなっちゃうよね。

(涙を拭いながら)もう大丈夫だから。


さよならした後も引き返すことばかり考えてた。
ふらふらと階段を降りて、戻ろうかと階段の上の方を振り仰いだら
まだこちらを見送る彼の姿がありドキリとした。


バイバイと手を振り、間もなくやってきた電車にのろのろと乗り込んだ。



2004年01月04日(日)
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