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沙夜



 消えたもの。残ったもの。

裸で抱き合うといつもその瞬間、目の奥が熱くなり
何かが溢れ、私の全身をかけめぐる。


彼の肌のぬくもりを感じながら、ずっとこうしていれたらと思った。


2時間が瞬く間に過ぎてゆく。
部屋を出る直前に、再び彼にぎゅうっと抱きついた。


まだ充電が足りない?


そう言いながら私を強く抱き締める。


抱擁という行為は、どうしてこんなにも
私を安らいだ気分にしてくれるんだろうと思う。




20時。
空腹感はほとんど無かったけれど、別れ難いが為に
更に1時間、いつも行くダイニングバーに彼を拘束した。


ホテルにいる時は比較的元気そうにしていた彼も、
ここに来て次第に表情が暗くなってきた。


「どうしたの?」と訊いても返事をしてくれない。
お腹が痛いのかと思いさすろうとすると「いい」と言う。
もしかして怒ってるのかと顔色をうかがってしまう。


彼は不満をあまり口にしない。
だから彼の表情のわけが分からなくて、不安になる。


出ましょ。

うん。


料理を残したまま、店を後にした。


店内が暑くて気分が悪かったんだ。

そうだったの。
言ってくれたら良かったのに。



言ってくれたら、何が、どう良かったというんだろう。
私の為に我慢してくれていたのに。
最初から最後まで。


ここでいいわ、ありがとう。


交差点でさよならした。
私の中から寂しさは消えたけど、罪悪感と後味の悪さが残った。



2004年01月06日(火)
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