ひとりの嫌われ者がいた。 嫌われ者はワガママだった。 だから誰もが関わるのを嫌がった。 嫌われ者は一人だった。 だから寂しくてワガママは加速した。
悪循環だった。
そこに現れたのはひとりの修道士。 彼は嫌われ者の孤独を見抜いた。 彼は嫌われ者に付き合った。 もちろん全てのワガママを聞いたわけではない。 できないことははっきり「できない」と理由と一緒に告げた。 それを嫌われ者が理解するかしないかは重要ではなかった。 嫌われ者が激怒することもあった。 「もう二度と顔を見せるな」とも叫んだ。 それでも修道士は毎日会いにいった。
嫌われ者は修道士を無意識のうちに試していたのだ。 石橋を叩きすぎて渡る前に破壊していた。 そして壊れた橋を指差して言っていた。 「ほら、危ないじゃないか」
嫌われ者は誰よりも怖がりだったのだ。
修道士は嫌われ者のことを自分の子供のように愛していた。 その愛によって嫌われ者も徐々にかわっていった。 最初は微かな変化だった。 笑顔が増えた。 言葉遣いが優しくなった。
そしてワガママも減っていった。
愛されることは安心になり、愛されることは自信になる。
いつしか嫌われ者は誰からも愛される者になっていた。 そして誰よりも愛する者に。
愛する者は旅に出る。 自分と同じ孤独を抱えた者のもとへ。 こうして愛する者が世界に増えていった。
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