職業婦人通信
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植草教授、逮捕さる。
私は、仕事でこの人の講演会の裏方をやったことがあり、 非常にこのニュースには興趣を覚えるというか味わい深いものがある。
物静かな人で、とてもそんなチャチなことをする人には見えなかったのだが。
うちの会社のオヤジどもは口々に 「あの人、金持ってんのに、なんで15の小娘のパンツのために全てを賭けるかねぇ・・・」 「もうちょっと金払えばもっといいパンツも見れただろうに・・・」 と語り合っていた。
植草教授はたぶん、「金を払わなくてよいパンツ」こそを見たかったのではないか。
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大学生のころ、私は海老名という誰も知らぬローカル都市駅の駅ビル書店で バイトをしていたことがある。
書店のバイトは、 本を社割で購入することができたり(2割引だったような記憶が)、 新刊本を常にチェックすることができたり、 ビニール袋に入れて売る写真集やマンガを袋入れ作業前に読めたり、 そういう意味では非常にステキな仕事であった。
が。
なにより書店は腰が。腰が。
重い雑誌を台車に載せた瞬間にギックリ腰を起こし、 そんな私を見かねた店長は 早々に文具売場への異動を命じてくれた。
以来私は、鉛筆や消しゴムや下敷きやノートといった、腰には影響のない 軽い商材に囲まれてシアワセな日々を送っていた。
そんなある日のこと。
地べたにひざまづく格好で、ボールペンの棚の補充作業を行っていた (棚の下に在庫の引き出しがあって、そこから陳列棚の補充作業をする) 千代子の視界の隅に妙なものが。
ひざまづいた姿勢の千代子には客の足ばかりが見えていたのだが
客の足の中にひとつだけ、
靴の先に鏡の取りつけられた足が。
最初千代子はなんのことやらわからず、その鏡付きの靴を凝視していたのだが その足はどうやら、女子高生やOLの後をピタリと追跡しては 後ろからスカートの中を鏡で映していたのであった。
(の・・・のぞき・・・!?)
万引き現場は何回も取り押さえた千代子だが、 のぞきの現場なんか見たのははじめてである。
動転しまくって店長のもとへ走りよった千代子は
「てて店長、出ましたノゾキ、110番」 と、意味不明の報告をしてしまった(意味なく七五調)。
「なんだ千代ちゃん、落ちつけよ」と驚く店長に やっと事の仔細を理解させ、警備の人を呼んだまではよかったが、
警備の人が近づいたことを察知するや、 ノゾキ野郎(仮称:植草君)はものすごい勢いで 近くにいたお客様をつきとばし、 ちょうど千代子が補充陳列し終わったばかりのクリップの販売棚にブチ当たりながら 逃げ去ろうとした。
書店の男性バイトや警備の人が追い掛け回しての 捕物絵図が展開された挙句、 結局、植草君(仮称)は無事つかまったのだが、
発見者の千代子は大して誉められもせず、 植草君(仮称)が散らかしていった陳列棚の後片付けに追われるハメに。
おまけに植草君(仮称)が蹴倒した棚に置いてあったゼムクリップの箱が 床にぶちまけられており、 これを拾って元に戻す作業に 千代子はたっぷり一時間、血の汗を流すことになったのであった・・・。
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見られたほうの女子高生は お世辞にもカワイイ子ではなく、 当時流行っていたガングロメイクで ギャルを気取ったミニスカ娘であった(といっても所詮は田舎ギャル)。
わざわざ鏡でのぞかなくたって、 電車や階段など色々なところで パンツをチラ見せしちゃってる(不作為だろうけど) タイプである。
鏡を仕込まなくたってパンツは見られただろう。肉眼で。
捕まえられた植草君(仮称)は30代のサラリーマンだったけど えらく暗い目をしていたことは今でもよく覚えている。
植草教授逮捕の報に、 あの時のサラリーマンの目に宿った漆黒の闇を思い出す千代子である。 植草教授も同じような暗黒を宿していたのであろうか。
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