Sports Enthusiast_1

2006年06月23日(金) 日本、ブラジルに大敗

ブラジルが実力どおり、日本に完勝した。試合展開等の記述は省略する。日本が勝てる相手ではなかった。
日本代表は負けるべくして負けた。予選リーグ突破はない、と筆者は当コラムで書いてきたので、結果については当然のことと受け止めている。筆者のコラムは予選で敗退したからそれを批判する、というスタンスではない。ドイツでの予選敗退は、いまからおよそ4年前、日本サッカー協会がジーコを代表監督に就任させたことに端を発する。筆者は当コラムにおいて、ジーコジャパンの批判を繰り返ししてきた。今回はその総括となるのだが、内容はこれまでの繰り返しになってしまう。新鮮味に欠けるが仕方ない。

●ドイツにおける失敗
(1)危機管理の欠如
日本代表メンバーを改めてみてみよう。
GK(3):土肥洋一(F東京)・川口能活(磐田)・楢崎正剛(名古屋)
DF(8):田中誠(磐田)⇒茂庭(F東京)・宮本恒靖(G大阪)・加地亮(G大阪)・三都  
主(浦和)・坪井慶介(浦和)・中澤佑二(横浜)・駒野友一(広島)・中田浩二(バーゼル)
MF(7):福西崇史(磐田)・小笠原満男(鹿島)・小野伸二(浦和)・中田英寿(ボルト
ン)・中村俊輔(セルティック)・稲本潤一(ウェスト・ブロムウィッチ)・遠藤保仁(G大阪)
FW(5):玉田圭司(名古屋)・柳沢敦(鹿島)・高原直泰(ハンブルガーSV)・大黒将志(グルノーブル)・巻誠一郎(千葉)
日本が3バックを採用する可能性があるのなら、DFは6名選ぶべきだった。予選では2枚イエローをもらえば試合に出られない。ケガや故障もあるだろう。だが、ジーコは専門のDFとして、田中(ケガで茂庭に交代)、宮本、坪井、中澤の4人を選らんだ。中田浩がボランチと兼任だから、彼を入れて5人。田中がケガで帰国し、茂庭が補充で呼ばれたが、茂庭は休暇でハワイ旅行中だったというから、使えるDFは3人だ。豪州戦、坪井が試合途中で退場し交代で出てきた茂庭には、ゲームに集中する力はなかった。DFの交代要員がいない。ジーコ監督の危機管理を問題にしていい。しかも、豪州戦、坪井がケガをしてセンターバックが宮本、中澤、茂庭となり、その後、交代の茂庭を引っ込めて大黒が出た。3人しか交代できないのがサッカー。交代選手をさらに交代させてしまっては、カードの無駄使いだ。
(2)選手の能力把握ができない
ジーコは、宮本の能力、適性を考えていない。彼はリベロだが、身体的に4バックのCBには向いていない。彼は3バックの中央に位置して、ラインコントロールをする能力があるという。彼は前にスペースがあれば、ドリブルで進むことができる。精度の高いロングボールを蹴ることもできる。しかし、4バックで両サイドが上がったとき、相手のカウンターを食い止める力は劣る。ボックス内の混戦で攻撃に来る相手を力で跳ね返す力はないし、高いクロスに競り合う力もない。クロアチア戦、宮本はボックス内で相手を倒しPKをとられたシーンがそのことを象徴する。PKは川口が止めたけれど、相手にPKを与えて負けなかったのは幸運だった。
4バックと3バックの併用は、口で言うほどやさしくない。ジーコジャパンの場合、その選択は極めて大雑把で、基本形が3バックで、リードされた場合や、危機的状況では、開き直って4バックでいくということか。
攻撃面では、ジーコのFW柳沢へのこだわりを問題にしたい。筆者は柳沢の選考は「鹿島枠」だといってきた。筆者の見解では、柳沢はFWに向いていない。イタリアでは、中盤の右サイドに起用されたことがあった。イタリアのクラブは、彼のFWとしての能力に疑問を抱いていたようだ。その柳沢を豪州戦ではほぼ80分近く、クロアチア戦でも60分以上使い続けた。クロアチア戦では、決定的チャンスにシュートをインサイドで打たなかったことが批判されている。柳沢がFWとしての資質に欠けることは当コラムで書いた。しかも、彼は故障上がりだった。短期間のリハビリで完治したと言われたが、もちろん、筆者は信じていなかった。柳沢に代わって、もっと走れるFWを起用していれば、豪州戦、クロアチア戦の結果は違っていた。
筆者は強化試合のドイツ戦後、高原は調子の波が激しい選手だ、と書いた。だから、ドイツ戦を忘れて本戦に入れ、と書いた。ジーコは選手の資質、個々の選手の調子の波、コンディションの波を理解していない。その理由は、ジーコに監督経験がないからだ。泥臭いリーグ戦の勝ち負けの世界を経験していないからだ。ドイツ大会における日本代表は、選手の経験が監督の経験を上回っていた。だから、豪州戦の不可解なジーコ采配により、チームは崩壊し9分間で3点も取られて惨敗した。

●強力な「トルシエの呪縛」
(1)選手交代のためらい
私たちは豪州戦において、ジーコにかけられた「トルシエの呪縛」を思い出した。「トルシエの呪縛」については何度も、当コラムで書いた。まさか、呪いがドイツまでとどくとは・・・
「トルシエの呪縛」とは、裏を返せば、ジーコのトルシエ批判に始まる。4年前の日韓大会、トルシエが決勝トーナメントのトルコ戦、予選リーグ突破を果たしたメンバーの一部を入れ替えて臨んで負けたとき、ジーコは、このトルシエ采配を厳しく批判した。「いい流れのときは、選手を代えてはいけない」と。
これをもって、ジーコは試合の流れを読まなくなった。いや、もともと、ジーコに試合の流れを読む経験がないのかもしれない。ジーコには4年前、トルシエ批判に基づいた「選手は代えない」という信念だけが残った。
(2)危険な4バック
さて、豪州に負けた次のクロアチア戦、4バックにシステム変更をした。初戦は「フラット3」というトルシエのシステムで負けたのだから、ジーコ流の4バックで勝ちにいくというのだ。しかし、日本には有力なSBが育っていない。加地はいいサイドの選手だけれど、世界レベルではない。三都主のSBとしての能力は、日本の高校生程度だろう。クロアチア戦は、今年はじめの米国との親善試合の二の舞になった。クロアチアの攻撃は日本の左サイドに集中していた。これだけ攻められながら無得点で抑えられたのは幸運だとしか言いようがないのだが・・・日本は3バック、4バック両方できる、という評価があるようだが、筆者は、日本の4バック採用は極めて危険だと思っている。現にブラジルには4点取られた。
(3)俊輔への過剰な期待
クロアチア戦から、ジーコは4バックの採用とともに、中盤に小笠原を入れた。小笠原の起用は、俊輔の偏重に対応している。あくまでも俊輔を攻撃の核と考えるジーコは、中盤をボックス型で組んだ。中盤のフォーメーションを後から追うと、ヒデ・福西(稲本と交代)の2ボランチ、2列目は、右に俊輔、左に小笠原だ。攻撃の核であり、ジーコジャパンを象徴する俊輔は4年前、トルシエが代表から落とした選手だ。俊輔がドイツで活躍すれば、ジーコはトルシエを凌駕できる。これも、「トルシエの呪縛」の1つにほかならない。
豪州戦、クロアチア戦、俊輔は役割を果たしたと見るのか、それともダメだったと見るのか。筆者はもちろん後者だ。クロアチア戦の試合後、ヒデは「攻撃に緩急がなかった」と発言した。この発言から、ヒデが俊輔に対して、リケルメ(アルゼンチン)のようなキープと速攻の選択を期待していたことがうかがえる。
(4)トルシエの遺産を食い潰す
4年前、トルシエを批判して、日本代表監督におさまったジーコは、戦術面で、�〜�手交代のこだわり、�■乾丱奪�導入、��俊輔の偏重――という3つの柱を打ち出した。これらの戦術は、あくまでも、トルシエとの違いを鮮明にしたいという、ジーコの願望の現れだった。自分はトルシエとは違う、トルシエより優れた監督なのだと。だが、それは日本代表の目指すべき方向ではなかった。
ジーコは、トルシエの遺産でW杯アジア予選を突破した。そして、本番の豪州戦、ブラジル戦では大量失点で惨敗し、クロアチア戦では相手のミスに助けられて引き分けた。トルシエが指揮をとっていたとしたら、日本は豪州に負けなかった可能性が高い。トルシエならば、もっとましな選手起用、選手交代をしただろう。
ジーコが試合中の選手交代について素人であることを実証したのが、豪州戦後半34分、リードしている局面でFW柳沢を引っ込めてMF小野を入れた場面だった。ジーコの頭によぎったのは、「黄金の中盤」か。ヒデ、俊輔、小野、稲本の海外組を一度に使って、中盤が肥大化してサッカーができなくなった親善試合を記憶している人も多いと思う。大事な本番で、それをやってしまったのだ。

●「自由」という幻想―矛盾だらけのジーコの「自由」
ジーコは、戦略面では、�ー�主性、�∩和だ�、�A�手の個性尊重―を打ち出した。トルシエの<規律(組織)>に対して、<自由>を標榜した。ジーコのこのスローガンに、日本のマスコミが飛びついた。
ジーコのいう「自由」は、日本国が規制緩和、新自由主義経済を打ち出した状況に同調していた。ジーコが掲げた「自由」は、経済活動を自由にして市場に委ねれば何もかもうまくいくという、日本の政治家・経済人・マスコミの経済論調とシンクロしていた。しかし、小泉改革が進めた日本の新市場主義経済は暴虐を極め、格差社会を生み出した。技術革新よりも、一握りの巨大ファンドに暴利をもたらす結果を招いた。市場のルールは軽視され、カネがカネを生むマネーゲームを増長させた。カジノ資本主義だ。
そして今日、ジーコ流及び新自由主義経済という、2つの「自由」が崩壊した。規律のないサッカーなど存在しない。規制や倫理規程のない経済行為が存在しないように。

●ジーコ批判=川淵批判
(1)専門職としての監督の起用を
当コラムは、ジーコが日本代表監督に就任して以来ずっと、ジーコ批判を繰り返してきた。そして、その批判は本日の日本代表の予選リーグ敗退をもって終了する。もちろん、筆者にはジーコに恨みがあるわけがない。
筆者のジーコ批判の根底には、監督経験のない人物を代表監督にしてしまう日本サッカー協会に対する疑問があった。監督としてのジーコは未知数だった。さらに、ジーコがトルシエ批判の急先鋒であり、トルシエが築いた流れを寸断してしまうことを知って、不安が広がった。トルシエが日本代表を強化した手法が適正だっただけに、その手法がジーコによって断絶してしまうことはマイナスなのだ。
ところが、筆者の惧れと不安とは裏腹に、ジーコジャパンは幸か不幸か、アジア予選を勝ち抜き、ドイツ行きを決めてしまった。その結果、一時盛んだったジーコ批判は封じ込まれ、ジーコ礼賛の流れが形成された。日本のスポーツマスコミは、日本がドイツでベスト8が可能だと過熱報道し、日本代表を批判する声はかき消された。以降、大本営発表、翼賛記事、無批判状態、代表崇拝報道が氾濫し、今日に至っている。
(2)日本に「世界クラス」はいない
そればかりではない。日本のスポーツマスコミは、実力の低いスコットランドリーグで「活躍」する俊輔、英国プレミアで四苦八苦するヒデ・稲本、ドイツ・イタリアでベンチにも入れない高原、柳沢を「世界クラス」と持ち上げてしまった。その一方でJリーグが活況を呈し、スピードがあり運動量のある若手が台頭してきたのに、マスコミは彼らを無視し、ジーコは若手を代表に固定することはなかった。
いま行われているドイツ大会を見れば、各国の世界クラスの選手と日本の代表選手との能力差は歴然していることがわかる。日本が世界と戦うには、ジーコが掲げる個人レベルを高める方法を採用すれば50年程度を要する。日本が活路を求めるは、組織力、運動量、スピードだ。これらを武器にして世界と渉りあうしかない。トルシエはそれがわかっていたから、組織、規律を重んじた。若くて上昇志向に溢れた選手を抜擢した。その結果、ヒデ・稲本に続いて、鈴木がベルギーへ、柳沢がイタリアへ、中田浩がフランス(現在はスイス)へ行った。代表以外でも、俊輔、高原、大久保、松井、大黒、平山が欧州へ渡った。
では、ドイツ大会終了後、海外クラブは、日本代表選手のだれにオファーを出すというのだ。豪州戦、クロアチア戦、そして次のブラジル戦も含めて、日本代表に光り輝く若手はいない。もし、巻(千葉)、阿部(千葉)、佐藤(広島)らがドイツのピッチに立ち活躍したならば、彼らは世界に飛翔するだろう。それがW杯のもっている最大の役割であり、日本のレベルアップの近道だ。
(3)手本はスイス、トリニダードトバゴ
W杯出場国はどこも強豪だ。開幕以来、世界のスーパースターのプレーを見ることができた。しかし、筆者にとって最も印象的なチームはスイスだ。スイスこそが、日本の手本と映った。スイスは協会(国)をあげて若手の育成に力を注ぎ、U17で世界王者についた。スイスにはスーパースターはいないが、組織力、規律、運動量、スピードが際立っている。そればかりではない。スイス代表では、若い選手が活躍している。21歳で先発している選手が2人いて、そのうち1人はキャプテン(センデロス)だ。オシムが率いる千葉で阿部がキャプテンであることと似ている。チーム全員が結束して守備に当たり、強いプレッシャーで相手の動きを拘束する。後半になっても、足がとまらない。スイスのような戦い方ができれば、日本がW杯でベスト16に常時名を連ねることが可能だと思う。若い選手とベテランを組み合わせて起用するのが、スイス代表監督のコビ・クーンだ。
強豪スウェーデンと引分けた小国・トリニダードトバゴも目を引いた。とりわけ、一人退場した後にとったトリニダードトバゴ監督ベーンハッカーの選手起用は、ジーコと対極にあった。
予選リーグを通じ、筆者には、コビ・クーン(スイス)、ベーンハッカー(トリニダードトバゴ)の2人の代表監督の手腕が記憶に残っている。
(4)ジーコとともに川淵キャプテンも退陣を
最後に、どうしても、言っておきたいことがある。本日をもって筆者のジーコ批判は終わるけれど、忘れてならないのは、ジーコの失敗は川淵キャプテンの失敗だということだ。ジーコの責任は川淵キャプテンの責任にほかならない。日本のサッカーを4年間停滞させた2人の責任は極めて重い。ジーコの退任=川淵キャプテンの退任でなければならない。
川淵キャプテンはJリーグチェアマン時代を含め、功罪相半ばする存在だと思う。筆者は、日本サッカーにおける川淵氏の役割は終わったと考える。日本代表の実力、それを率いる代表監督の能力、そして、日本サッカーの将来を見通せない人物をトップに戴くことは、日本サッカーに取り返しのつかないマイナスを及ぼす。
日本サッカーにとって、ドイツ大会は今日終わった。新たな出発には人事異動がつきものだ。スポーツマスコミが川淵体制を批判しないのなら、スポーツマスコミは、協会と共に、日本サッカーの未来を閉ざす存在だといわねばならない。

◎グループ分け(勝敗は6月23日:07時現在)
A組=ドイツ○○○、エクアドル○○●、ポーランド●●○、コスタリカ●●●
B組=英国○○△、スウェーデン△○△、パラグアイ●●○、トリニダード・トバゴ△●●
C組=アルゼンチン○○△、オランダ○○△、コートジボワール●●○、セルビア・モンテネグロ●●●、
D組=ポルトガル○○○、メキシコ○△●、アンゴラ●△△、イラン●●△、
E組=イタリア○△○、ガーナ●○○、チェコ○●●、米国●△●、
F組=ブラジル○○○、オーストラリア○●△、クロアチア●△△、日本●△●
G組=フランス△△、スイス△○、韓国○△、トーゴ●●
H組=スペイン○○、ウクライナ●○、チュニジア△●、サウジ△●


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