| 2007年05月06日(日) |
巨大ルーキーリーグの存在が明らかに |
連休中海外旅行に行っていたため、日本のスポーツ中継は全然見ていない。そこで帰国後最初に目にとまった以下の記事をベースに、再度、高野連=日本のアマ野球批判を展開することとした。
●参事の涙ではなく、会長辞任が筋
報道によると、日本高等学校野球連盟は3日、大阪市西区の中沢佐伯記念野球会館で、学生野球憲章に違反するスポーツ特待制度使用校の調査結果として、376校(硬式、軟式の重複を含む)、当該部員は7971人の特待生制度の実態を発表した。会見に応じた田名部和裕参事は「コミュニケーションが不十分だったということは、あらためて強く思いました」と涙ながらに語った。ポケットからハンカチを取り出し、涙をぬぐった。「甲子園を沸かしてくれたチーム、選手の顔が浮かびました。寝られませんでした」。震える声を抑え、必死で平静を装った。厳格な姿勢で改革を断行してきた田名部参事。乱れきった現状に、涙をこらえることができなかった――という。
ちょっと待てよ、この涙はいったい何を意味するのだろうか。高野連が特待生制度をこれまで知らなかったとでもいうのだろうか。会見を見ていないが、この涙は嘘に決まっている。筆者の想像では、この涙は、これまで朝日新聞社と高野連が築いてきたアマチュア幻想が崩壊する悔し涙ではないか。
甲子園大会を沸かしてくれた選手というのは、全国の中学校等からスカウトされてきた野球特待生であり、プロ選手ということだろう。ここまできて、まだ、高校野球=アマチュア野球という幻想にしがみつく気なのだろうか。厳格なアマ制度を保持してきたというのならば、特待制度を放置しておいた責任はどう取るのか。これまで国民(甲子園大会を支持してきた)を騙し続けてきた責任をどう取るのか。演技的に涙を流してみせるよりも、「責任者=高野連会長は辞任するそうです」と発表するか、参事ではなく、会長が自ら会見に臨み、辞任を発表するのが筋だろう。
●特待生不在で名門校はボロ負け
4日、関東各地で高校野球春季地区大会が行われたが、日本学生野球憲章に違反申告し、特待生をメンバーから外して春季大会に臨んだ強豪校の敗戦が相次いだという。
茨城では2度の全国制覇の経験を持つ常総学院が、竜ケ崎一に予想外の5回コールド負け。これまでのスタメン9人のうち特待選手8人を入れ替えた影響で“格下”相手にまさかの大敗を喫した。持丸修一監督(59)は「仕方のないことだが、1回でも良い戦いをしたかった」と言葉少なだった。同じくレギュラー5人を入れ替えた土浦日大も藤代に完封負けした。 埼玉でも違反申告をした春日部共栄が特待選手7人を登録から外し、メンバーを入れ替えて戦ったが、公立校の滑川総合に競り負けた。本多利治監督(49)は「(代わって入ったメンバーの中には)意識していた選手もいるのかな」とため息。“私立王国”の埼玉で公立校が県大会の決勝を争うのは極めて異例だ。 春季関東大会を主催する神奈川県高野連も頭を抱えている。出場決定校の辞退が相次いだことで、急きょこの日、組み合わせの再抽選を行った。4校に出場枠があった神奈川からは、横浜が辞退。準々決勝で横浜に敗れた東海大相模に出場権利が発生したが、特待制度を理由に自粛を表明。調整は難航し、結局代替校は選ばず3校の出場となった。またセンバツ4強での推薦出場が決定していた帝京(東京)も辞退したが、こちらも代替校はなし。当初19校の出場予定だったが、2校減の17校で争われることになった。 “余波”を受けていない公立校の躍進が目立つ。関東大会では栃木代表を除いた15校の出場が決定しているが、うち9校が公立校。私立校の「特待生効果」が浮き彫りとなった――という。
特待生を外した甲子園名門校は公立の部活野球部より弱いことがわかってしまった。このことが明確に示す事実は、夏の甲子園大会をわかす「球児」と呼ばれる野球部員は、「プロ」であるということだ。
●高校野球で利益を上げる朝日、高野連、学校
筆者はまったく興味がないのだが、日本人の多くが「甲子園(高校)野球」を好む。その理由はいろいろあり、メディア論からのアプローチがあることは既に当コラムに書いた。ほかにも研究の余地はある。筆者は研究者ではないのでその解明はできないのだが、「甲子園(高校)野球」にはトリックがあるということくらいはわかる。何度も当コラムで書いてように、このトリックの仕掛人は巨大メディア企業=朝日新聞社だ。同社が夏の甲子園大会をメディアがもつ常識的役割を超えて異常に報道している。このことが、甲子園大会の人気の源泉だ。
日本では巨大新聞社はジャーナリズムだと思われていて、公平中立、“ペンは剣よりも強し”と呼ばれ、社会正義の体現者だという幻想がある。もちろんそれは嘘だ。巨大新聞社は、紙に付加価値をつけて売る、ある種の印刷業者だと定義できる。しかも、巨大新聞社には事業部と呼ばれるイベント業者としての側面もある。甲子園大会というイベントは、高野連主催、朝日新聞社は後援にとどまるが、甲子園大会を『朝日新聞』が報道することにより、『朝日新聞』という商品の契約部数が伸び(売上が上がり)、さらに、同社が出版する甲子園関連印刷商品(甲子園写真集等)の売上が伸びる。
同社の甲子園大会の商品コンセプトは、「アマチュア」だ。これは、読売新聞社=巨人のプロ野球との対立軸に当たる。「アマチュア」は清貧、報酬に関わることなく汚れなく、青春を非行に走らず野球一筋、負けて涙、勝って奢ることなく・・・という筋書きだ。
新聞社がこれだけ報道してくれるのならば、と、高校側も野球に目をつける。甲子園名門校と呼ばれる高校は、甲子園大会出場は受験生集めに有効な手段だと考える。現在では、多くの高校が学校経営手法の1つして甲子園出場を戦略化し、甲子園大会出場が学校経営の「悲願」となっている。その結果生まれたのが特待生制度にほかならない。
●プロ球団は高校で養成された選手を廉価で契約
高野連の調査結果によると、野球特待生(すなわちプロ選手数)が8千名(7,971名)というから、巨大な化物のようなプロのルーキーリーグが日本に存在することになる。この選手数はおそらく、大リーグ(MLB)も及ばないのではないか。
日本プロ野球(NPB)の1球団登録選手数が70名、70名×12球団で840名にとどまる。ところが、甲子園大会のおかげで、NPBは自前の選手養成機関を所有せずそれを高校にアウトソーシングすることができ、1球団平均700名弱のルーキー選手を保有できる計算になる。これが驚異的な数字でなくてなんであろう。日本がWBCで優勝できるのも、甲子園という野球強化システムがあればこそ――というものだ。しかも、NPBが選手養成のためにアウトソーシングするコストがゼロというのがさらにすごい。かりにNPB・1球団が700名のルーキーを丸抱えにしたら、最低年俸450万円と仮定して、年間31億5千万円かかる。選手費用だけで35億以上だから、指導者・施設等を加えたならば、年間40億円ではすまない。NPBの各球団は、年間40億円超のルーキー養成経費を高校に負担してもらっていることになる。
うーむ、これではプロ野球とアマ野球(高校野球)が共存共栄するという理屈は、経済的にあり得ない。これだけ、片務的な関係も珍しい。しかも、プロ野球側は、高校が養成してくれたエリート野球高校生獲得に当たって、契約金上限制限という、これまたおいしい制度で入団交渉できる。
数字的にはあり得ない関係が、現実に進行しているからには、そこに隠された経済合理性があるに違いない。
まず、高野連と朝日新聞は、甲子園大会という幻想を使って高校側に野球部強化を自発的にさせておいて、甲子園大会のレベルを上げ、魅力的なスポーツコンテンツを創造した。その結果、�…�日新聞社は商品販売がうまくいき、��高野連という組織を維持できる(=新聞社と高野連の経営合理性)。��プロ野球側は自前の養成機関をもたずに各高校が養成してくれた野球高校生を、ドラフト・契約金制限制度をつかって廉価で獲得できる(プロ球団経営の合理性)。�す盥斬Δ蝋短勹狢膕饅仂譴巴量湘戮鮠紊押�学校経営がうまくいく(学校経営の合理性)。�ゥ┘蝓璽般邉綛盥酸犬蝋盥算�代、野球漬けで練習ができて、制限があるとはいえ、プロとの多額の契約金で高校3年間の無償労働を精算できる(野球高校生の合理性)。先ほど片務的と書いたけれど、�/景梗辧↓¬邉綯賃痢↓�プロ野球球団、�こ惺察↓ゥ┘蝓璽般邉綛盥酸犬箸修硫搬欧砲箸辰討蓮�現行の甲子園大会は経済合理性がほぼパーフェクトに貫徹している制度であることがわかる。
●報われない指導者、補欠選手、その家族
では、どこが片務的なのか――��高校野球指導者に限っては、指導の実働と比較して報酬が見合っていない可能性がある。��高校野球指導者がまったく無償だとはいえないが、プロの指導者(コーチ)と比較すると、その報酬は低すぎるかもしれない。そこに裏金(の要求)問題が発生する可能性があるかもしれない。ただ、裏金問題の解明が全然進んでいないので、真相は闇の中だ。裏金問題は、脱税の観点から、当局がその実態解明に取り組まなければいけないのだが。
次に恩恵を受けないのは、�Ч短勹狢膕颪暴仂譴任�ない野球部員たちではないか。野球名門校の補欠選手たちは、予選敗退をもって、「青春」が終わる。甲子園大会に出場できても、出場選手登録枠に入れなければ、大会中ユニフォームを着てスタンドで応援するだけだ。彼らも球児なのだろうか・・・入学金、授業料を正規に支払い、野球部員として3年間練習に励むものの、結局はせいぜい球拾いで終わった選手たちだ。野球部員であって高校生でない彼らは、卒業しても標準の学力が身についていない可能性が高い。3年間、親は子供の甲子園出場を悲願としながら、ときどきテレビに映るメガホンをもったわが子を確認するにとどまる。甲子園大会に出場できない彼らとその家族に経済的恩恵は一切ない。NPBの各球団がドラフト指名できる選手が10人までだから、12球団でわずか120名に限られる。特待生8千名のうちの1.5%にすぎないのだから、高校野球部全体からみれば限りなくゼロに近い野球部員が、なんの恩恵も受けることなく、巨大なルーキーリーグを下支えしていることになる。経済的恩恵を受ける� 銑イ隆覿氾�に比べて、まったく経済的恩恵から疎外された�ΝА△弔泙蝓�大多数者の存在の悲惨さにおいて、高校野球はアマチュア(無報酬)そのものだ、と、いえるのかもしれない。
2007年は、高校野球幻想が崩壊する記念すべき年となりそうだ。ここ数年で、「巨人」幻想も崩壊した。日本の歪んだ野球界の実態が晒されることは自然なことであり、嘘がばれるということは、本体が正常な方向に進むことを示唆している。
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