アジア杯の2試合で、サッカーの面白さにしびれっぱなしの筆者だが、その過酷さにも驚いている。
●こんな豪州になぜ負けた アジア杯Aグループでは本大会優勝候補の1つ豪州がオマーンに苦戦し、どうにか引き分けにもちこんだ。豪州といえば、日本が昨年のW杯ドイツ大会グループリーグの初戦で負けた相手。オセアニア地区からアジアの仲間入りをして、本大会は初参加となる。W杯ドイツ大会では、日本に勝った後、ベスト16入りを果たしたことは記憶に新しい。
豪州はドイツ大会と概ね同じメンバーでアジア杯に臨んでいる。就任以来常に更迭が囁かれるアーノルド監督が冒険よりも結果を求めようとしたためなのか、W杯メンバーを越える新しい才能が育っていないためなのか・・・外部者には定かではないのだが、初戦を見た限りでは、豪州チームは機能していなかった。最後はパワープレーからゴール前の混戦にもちこみ、決定的シュートの機会を得て得点をしたものの、戦術的成果(=得点)ではない。日本代表がドイツで豪州に同点ゴールを許したシーンと似ていないこともない。オマーンが守りきれなかったという見方と、豪州が底力を発揮したという見方の両方があるけれど、先制したオマーンが再三の決定機を外して2点目を取れず、豪州の息の根を止められなかったことが引分となった主因だ。
豪州が初戦で調子が上がらなかった理由はいくつか考えられる。�_そ3胴颪忙兇辰森觸B緝愁瓮鵐弌爾蓮⊇蠡阿垢襯蝓璽阿僚�了時点で、心身ともにアジア杯のモチベーションを失ってしまったこと、�▲丱鵐灰�の気候に適応し切れていないこと、��新監督のアーノルドに求心力がないこと――などが考えられる。いずれも推測に過ぎないのだが、初戦の戦い振りから判断すると、これらが重なり合った複合的要因からだと思う。
筆者は豪州を本大会優勝候補の一角だと考えていた。ところが、オマーン戦に限れば期待を裏切る内容だった。この試合では、ドイツ大会以降の進歩が見られない。代表選手に新戦力がいないうえ、主力選手の体力・気力が、ともに後退しているように思える。豪州の主力は故障上がりばかりだし、キューウェルのように大手術直後の者もいる。このままならば、A組のライバル2チームに相当苦戦する。その2チームとは、ホームのタイ、オマーンより体力で上回るイラクだ。両方とも、オマーンより手強い。
豪州にとっての幸いは、前日イラクとタイが引き分けて、第1戦、4チームが勝点1で横一線に並んだことだ。これで全チームが2戦目以降に等しく戦いの場を移した。オマーンがタイに勝ち、豪州がホームのタイに引き分けると、豪州の予選敗退という結果にもなりかねない。アジア杯初参戦の豪州は、アジアの(気候風土を含めた)厚い壁に行く手を阻まれることになる。そうなれば、アーノルド代表監督の更迭は間違いない。
それにしても、重ね重ね残念なのは、ドイツ大会で豪州代表のようなチームに日本代表が負けたことだ。技術力、組織力、戦略戦術において、豪州代表には見るべきものが何もない。とりわけ、オマーン戦の豪州の戦い方は稚拙だった。こんな豪州になぜ、負けた♪
●オシムは辞任する 筆者の直感では、日本がグループリーグを突破できなかった場合、オシム監督は辞任する。ここのところ、オシム監督の態度はエキセントリックすぎる。焦りすぎているとも言える。たとえば、自分が育てた千葉以外の選手を信頼していない、日本のマスコミに対して過剰に反応しすぎる、カタール戦では、交代選手の人選を誤った・・・等々尋常でない振る舞いが見受けられる。
オシムがユーゴスラビア(当時)の代表監督だったころ、彼が引き受けた困難さはこの国(=日本)のそれとは異質だった。オシムが抱え込んだのは、かの国(=ユーゴスラビア)のおかれた政治的、民族的困難さの延長であって、ことサッカーに関しては、当時のユーゴスラビアには才能あふれる選手が有り余っていた。オシムはその豪腕をもって、政治的、民族的圧迫を跳ね返し、ユーゴスラビアチームをまとめあげた。
翻って、この国のW杯ドイツ大会終了後のサッカー界を見てみよう。サッカー評論家のU氏の表現を借りれば、それはまさしく「焦土」だった。ジーコ前監督が荒らしまわった後の――偉大なる空虚だった。
この国には、政治・民族の対立を代表サッカーに持ち込むような困難さはない。だが、その代わりに、才能のあるサッカー選手の不在という困難さが充満している。さらに、扇情的スポーツマスコミの雑音という困難さがある。この国のスポーツ報道は一過性で未成熟で感情的だ。その国に限らず、代表サッカーに対する風当たりは強い。が、大陸レベルの大会で一国が三連覇を果たすことは簡単ではないことくらいは理解している。さらに言えば、この国のマスコミは、アジア制覇を至上命令としたならば、W杯に向けた最良の準備が不可能となることを理解しない。
アジア杯絶対優勝説という観念よりも、世界の現実を知ろう。まず、欧州選手権の覇者を見てみると、ソ連(60)、スペイン(64)、イタリア(68)、西ドイツ(72)、チェコスロバキア(76)、西ドイツ(80)、フランス(84)、オランダ(88)、デンマーク(92)、ドイツ(96)、フランス(00)、ギリシャ(02)。※( )内は開催年。
南米選手権は、ボリビア(63)、ウルグアイ(67)、ペルー(75)、パラグアイ(79)、ウルグアイ(83)、ウルグアイ(87)、ブラジル(87)、アルゼンチン(91)、アルゼンチン(93)、ウルグアイ(95)、ブラジル(97)、ブラジル(99)、コロンビア(01)、ブラジル(04)。
欧州大会で連続優勝した国すらない。南米大会でも、ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジルの3カ国が2連覇で終わっており、3回連続優勝の例がない。2連覇がかかる今年のブラジルが、グループリーグの初戦を落としている。初戦を落としたドゥンガ代表監督に対する批判は日本の比ではないらしいが、それでも、ブラジル国民は、敗戦を受け入れる成熟さを持ち合わせている。ドゥンガ目指すものが理解できれば、騒ぐけれど、見守る。ブラジル国民に代表の行く末が見えなくなったとき、代表監督は代わっているはずだ。
さて、オシム監督の今後はどうなるのだろうか。筆者の直感では、アジア杯で予選敗退ならば、オシムは代表監督を辞す。それが日本のサッカー界にとって良いか悪いかはわからない。わからないけれども、オシムが目指すサッカーを日本の選手、国民が共有できなかったという事実が残る。もちろん、筆者の直感が外れることのほうが望ましい。
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