| 2010年06月30日(水) |
順当な結果 ― ベスト8決定 |
ベスト8が出揃った。決勝トーナメント(決勝T)ラウンド16の結果を振り返っておこう。※( )内はFIFAランキング。
▽ウルグアイ(18)2 –1韓国(47)、▽アメリカ(14)1 – 2ガーナ(32)、▽ドイツ(6)4 –1イングランド(8)、▽アルゼンチン(7)3−1メキシコ(17)、▽オランダ(4)2–1スロバキア(38) 、▽ブラジル(1)3―0 チリ(15)、▽パラグアイ(30)0−0(PK戦)日本(45)、▽スペイン(2)1−0ポルトガル(3)
(1)結果は概ねFIFAランキングどおり
極めて順当な結果だ。FIFAランキングの下位国が上位国に勝ったケースは、ガーナがアメリカをくだした1試合のみとなった。ラウンド16では、小さな番狂わせが、たった1件(ガーナ対アメリカ戦)起ったにすぎない。
グループリーグでは波乱続きだったW杯南ア大会だが、決勝Tに突入するや、サプライズに乏しくなった。その理由は、決勝Tに勝ち上がってきた国々は、周到な準備をし、コンディションを整えてきたところばかりだからだろう。このことを逆に考えれば、グループリーグで敗退した強豪国は、大きな問題を抱えていたということになる。問題の深刻さが、ベスト16入りを阻んだのだ。たとえば、前回優勝国イタリアは、前回優勝メンバーに固執し、新戦力を包含しなかった。選手選考に大きな誤りを犯した。準優勝国フランスは、代表監督がチームをマネジメントできなかった。ホームともいわれたブラックアフリア勢は、チームづくり、組織づくりに失敗した。とりわけ、スーパースターをチーム内で機能させる仕組みをつくれなかった。
(2)決勝は南米の2カ国か
同大陸同士のチリがブラジルに負けたものの、ウルグアイ、パラグアイがアジアの韓国・日本に勝ったので、南米がベスト4を独占する可能性まで生じた。ここまでくれば、決定戦はブラジル対アルゼンチンの南米対決になる可能性が高いし、そうなってもらいたい。
奔放なマラドーナか、規律のドゥンガか。もちろん、準々決勝でオランダがブラジルの、そして、ドイツがアルゼンチンの足もとをすくえば、欧州勢の土壇場での巻き返しも可能となる。
(3)得点に絡む誤審防止に新テクノロジーの導入を
ラウンド16では、▽ドイツ対イングランド、▽アルゼンチン対メキシコの2つの試合で、重大な局面における、誤審があったことはご存知のとおりだ。前者では、1−2でリードされたイングランドが2−2に追いつくはずの得点だっただけに、イングランドには不満が残る。サッカーでは2−0は危険な得点差であることはよく知られている。ドイツが早い時間に2−0でリードし、イングランドが1点を返した。この場合、次の1点をどちらが奪うかで試合は決まる。2−0から2−1になった途端、リードしている側に大きなプレッシャーがかかり、2−2になると形勢は逆転すると。この論法に従えば、誤審がなければ、イングランドに勢いが生じ、形勢を逆転させた可能性を否定できない。
後者の場合は、もっとも重要な先取点に係る誤審だっただけに、メキシコにとって大きな痛手となった。グループリーグでは勢いのあったアルゼンチンだが、試合巧者のメキシコが序盤を制していた。メキシコはメッシを徹底マーク、強烈なタックルで何度か倒した(削った?)。メキシコの作戦は理に適っている。アルゼンチンにやりたい放題やらせるのではなく、序盤にイエロー覚悟でメッシの自由を奪う作戦は、これからアルゼンチンと対戦するチームの参考となる。
誤審がなくとも結果は変わらないという見方もあるだろうが、得点に絡むシーンだっただけに、残念だ。得点シーンについては、カメラ判定の導入が必要だと思う。FIFAの決断が待たれる。誤審をした2人の審判がW杯で今後笛をふくことはないだろうし、あってはならない。2人が誤審の不名誉をこの先ずっと、負い続けるのも悲劇ではないか。
(4)日本は健闘したが南米との差は大きい
パラグアイ対日本の試合については、総括が難しい内容だった。お互いがお互いの良いところを消しあった、という見方は誉めすぎだと思われる。攻撃力、得点能力を欠いた2つのチームが、ともに守備的に、120分間頑張ったといったところだろう。ボクシングに喩えれば、脚を使ったボクサータイプ同士が接近戦を嫌ってガードを固め、ジャブを出し合うものの、踏み込んだパンチを放てないまま最終ラウンドのゴングが鳴ってしまった、といったところか。
本大会を通じて、日本の健闘を讃えるとしたら、120分間走り続ける体力・気力を証明したことだ。ドイツ大会では、後半足が止まり、ジャンプ力が落ちたけれど、本大会ではそんなことはなかった。明らかに持久力が向上していた。岡田ジャパンがジーコジャパンよりも優れていたのは、�.灰鵐妊�ションづくりの成功、�▲侫�ジカルの強化に成功、��チームの結束力・組織力の醸成に成功、の3点だろう。それが守備力の向上につながった。
(5)日本はもっと上質のサッカーを目指せ
岡田監督からすれば、南ア大会のベスト16入りは、「コロンブスの卵」なのだろう。「ああいう戦い方なら、負けない」という批判は無意味だし、卵を立てた結果については、コメントしない。
しかし、筆者は岡田ジャパンの南ア大会の成功を評価しない。民放TVのW杯中継で言われるように、「強い者が勝つ」のではなく、「勝ったほうが強い」というのが勝負の世界の鉄則だとは思うものの、[勝つため=強くなるため]のロジックを放棄してもらっては困る。
世界のサッカーの方向性は、ビエルサ監督が示したチリのような攻撃的スタイルにあるのではないか。岡田ジャパンの戦術であれば、日本は「よくて」ベスト16止まりだろう。それはそれで立派な成績なのだろうけれど、日本代表に投下される資本、ヒト、そして、国民的バックアップを併せ考えるならば、日本はもっと“上質”のサッカーを志さなければいけない。
「ベスト16」「ベスト8」という結果ではない。「強い攻撃」を迎え撃つための「強い守備」であり、点を取れる選手の育成であり、より複雑で多様なチーム戦術の構築である。日本の課題が見えている。
|