妄想の嵐
結子



 こんなSSを書いてます。(ヒューロイぷれびゅ?)

割と自分を痛めつけてるなと思う。
ひゅろい。早めにアップします。たぶん。

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 もっと、ヒドイ有様だと、思っていた。


「ロイ。会ってあげて、欲しいの」
 気丈に涙を堪えた夫人に伴われ漸く会えたヒューズは、寝具へ横たわって。まるで、眠るように居た。

 触れれば直ぐにでも目を開いて。
 いつものように片手を上げて「ようっ」等と。
 緊張感の欠片もない挨拶を寄越し、笑うのではないかと思うような。
 ただ、穏やかなカオ。

 後ろでぱたり、と扉が閉まる。
 ふたりきり。残された空間。
 明るい光の差し込む部屋の白が目に痛くて、視界が一瞬くらんだ。


 目覚めない、男の傍らに立って。
 ロイは躊躇った末に震える手をヒューズへ伸ばした。

 氷のように冷たいカラダ。
 失った実感はそれでも沸き上がってこないのが不思議だ。
 以外と強情な男の気質をそのまま持ち合わせたような、固い黒髪に掌を泳がせながら。
 ロイは、床に膝をついてヒューズの胸に頬を宛った。
「聞こえない……」
 ぽつり、と呟いた声がひどく大きく響いて、身体が震える。
 ああ、此処にあるのは虚なのだ、と何処か冷静に思う自分に唇が僅か、歪んだ。
「ヒューズ?」
 こんな風に頭を凭せかければ。常ならば揶揄するように髪先を弄る指が白く身を包むシーツの中、ぴくりとも動かない。
 袈裟懸けに巻き付いた包帯の白を厭って瞳を閉ざして。
 頬の熱を奪っていく身体に、僅かでも己の体温が移ってくれたら良いと、あり得ない事を、願っていた。


2004年03月28日(日)
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