日記帳




2008年06月01日(日) 升目を埋める

平行書き(名付けて「菊正宗方式」)の良いところは、あっちに行き詰ったらこっちに逃げられる、という点。悪いところは、こっちに逃げた挙句に結局は共倒れになる、という点。
でも、書ける内に書き始めておいた方が、きっと良いのです。現在の成果は、このような感じ。


ファイル1「猫と善哉」

・声を掛けたのは、ほんの出来心だった。
「少々冷えてきたから善哉でも食ってくる。お前にも相伴に預からせてやりたいところだが、猫は猫舌だろう」

・「おや、夜じゃないか」
 言われて思わず掛け時計を見上げたが、時刻はまだ午後四時にもならない。いくら、秋の日は釣瓶落としといえども、そう暗幕が下りるように暮れたりはしないだろう。何を惚けたことを、と店口を見やれば、そこには猫が一匹ちんまりと座っていた。

・「初めてこの店に立ち寄った時には、全身闇のような黒い毛並みだった。だから、ヨルという名を付けた」

・「お客さんだって服を着替えたり靴を履き替えたりするだろう。猫だって同じだ。年がら年中変わらぬ風体じゃあ、飽きるだろうに」
 なかなかいい柄じゃあないか。店主の呟きが聞こえたか、猫はにゃあ、と満足げに鳴いた。


ファイル2「科学者とロボット」

・ウィンゴット博士がDプロジェクト主任研究員への推薦を断ってきたとのこと、しかもその上あろうことか―あろうことか!―プレイルームへの転属を願い出ているとのこと。今の私の心境を表すには一言で事足りる。
ナンセンスだ!

・それに、あなたの新しい制服姿ときたら! ミニスカートにハイヒールだなんて、あなたハイスクールの時以来じゃない? 
あなたにだけ特注の制服を用意するだなんて、失礼な話だわね。断って正解だったわ。
そりゃあ、若さでは同僚の女の子たちに適わないけれど、その代わりあなたには大人の魅力があるわ。あなたの脚のラインといったら、あの頃と全く変わらない。私たちクラスメートの憧れだったあの頃とね。
ねえ、エリカ。私にはふたつ嬉しいことがあるの。
まず一つ目は―こんな言い方をするのがあなたにとって失礼なことなのだとしたら、どうか許してね―あなたが私にも理解できる仕事に就いてくれたこと。二つ目は、あなたがとても幸せそうだったこと。本当にあなたは、とてもとても、幸せそうだったわ。


実は物語の要を暴露してしまっているようでありながら、なんのことだかさっぱり、という内容でもあり。






BACK NEXT 初日から日付順 最新 目次 入り口へ


ほたる