春の風が吹く。葉っぱの間にまだ残っていた桜の花びらが降ってくる。地上に落ちても、なお、転がるように飛ばされていく。そんな中でも、日溜りの芝生のうえでは、恋人たちが寄り添って座っている。あれがあなたとわたしの姿だったらよかったのに。彼らのかたわらを通りすぎながら、ふと髪に手をやると、風に吹かれて舞い落ちてきた花の芯が引っかかっていた。