紀姫日常。

2009年01月27日(火) 記し

夜、1時8分。途方に暮れる。

久しぶりに飲み会で一緒になったら、ぜひ隣に来て欲しいと思う人がいた。
滅多に飲み会で一緒になることはないから、今日はチャンスだと午後からそわそわしていた。
しかしやっぱり来なかった。
来るはずだったのに来なかった。
でも飲み会はとても楽しく、雰囲気よく終わった。あ、ドライバーなので飲んでおりません。

車を取りに会社に戻ると、0時を過ぎているというのに明かりがついていた。
送ってもらった先輩が、その人の車を見つけた。
まさか、と思った。
それからみんなは帰っていった。私はひとり車の中で、もし、万が一、そこにいるのがその人だったら、こんなチャンス二度とないと思った。
しかし、どう考えても社内に戻る理由がない。
何か差し入れを…わざとらしすぎる。
忘れ物のふり…更衣室だけで事が足りてしまう。
そもそも自動で鍵がかかってしまうこの建物、どうやって入る?インターホンでその人に開けてもらう?なんか面倒だし迷惑だ。会社のキーどこにやったっけ?まったく使わないのでわからない。どうしよう。帰ろうかな。帰って、ちょっと後悔するぐらいがちょうどいいかな。でも、きっと金輪際2人になるチャンスなんてない。
とりあえず鍵を探そうと財布を捜していると、足音がした。

その人は真っ黒のコートを着て、私の車の前を通ると、助手席側の私の車の隣に入っていった。
どうしよう。声が出ない。しかもエンジン着いてないから窓開けられない。外に出ようか、しかしシートベルト締めている!外さなきゃ!

するとゴンと助手席で音がした。ような気がした。
真っ白で、もう助手席側の窓の向こうを見ていることしかできない。
真っ暗だ。黒い車に黒いコートで、本当に真っ暗だ。

窓をコンコンと叩かれる。エンジン着いてないから、開かないんです!と心で叫ぶ。
真っ白だ。
すると気付いたのか、何なのか、その人は助手席のドアを開けた。

「ごめん、ドアぶつけた。何してんの?」

「飲み会今終わったんです。それで今から帰ろうとしているところです」

「飲酒?」

「ちがいます」

「あ、そう。じゃあ、気をつけて。お疲れ様」

ばたん。

なんて乾いた音だ。
乾いた音が頭に響いた。呆然としている内に、その人の車は発進した。
私も慌てて、発進する。
鍵を回して、エンジンを着けて、ライトを着けて、ブレーキを踏み、サイドブレーキを降ろし、ドライブモードにする。
その真っ白な間に、ひとつ強く突きつけられた。

まったく相手にされていない。

本当に恐ろしいぐらい、相手にされていないのだった。
その人は恐らく、「この子はこんな時間に何をしているのだろう」とぐらいにしか思わなかったにちがいない。
ぐるぐる考えて、迷って、待っていた時間は本当に長かった。永遠みたいだった。
しかし、会話したの本当に一瞬だった。一分にも満たない、30秒にも満たない、一瞬だった。
その一瞬で、まったく相手にされていないことがわかってしまった。

まったく相手にされていない相手に相手をしてもらうようになるにはどうしたら良いのでしょう。
そんなに必死になったの、随分前の出来事なので忘れてしまった。

せめて、お疲れ様です、ぐらい言いたかった。
名前ぐらい、呼ばせて欲しかった。
私なんか疲れてないですよ。
お疲れ様はあなたじゃないですか。
今日一番働いたのはあなたじゃないですか。
言ってあげられれば良かった。


どうしたらいいのか、全然わからない。
とりあえず、明日はお休みだ。
なんだ、休みなのか。
こんなに忌々しい休日は初めてではないだろうか。

とりあえず、明日、助手席側のドアを見てみよう。
白い車に黒い跡が残っていたら、何かの口実になるかもしれないので。


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紀姫 [MAIL]

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