百田直樹『永遠の0』を読みました。 以下感想です。
太平洋戦争の話、ということで、かなり重いテーマなんですけど、とても読み易く、入り込みやすい小説でした。 ああだこうだと硬く語っても私には何の説得力もないので、思ったままのことを正直に書きます。
物語はやや年表的だと思った。それでも社会の教科書を読んでる風にはならないのは、それを語るのが様々な立場の戦争体験者の生々しい証言であること。また零戦での空中戦。スカイ・クロラで目覚めたけれど、空中戦って面白いんだよなぁ…。 それと宮部久蔵という謎の人物の存在。とてもぐいぐい引っ張られる。宮部久蔵のことは、証言を聴くほど、興味が出て、その最期を知りたくなる。解説で児玉清が書いているように、心からこんな人がいたら!と思ってしまう。本当にかっこよい人なのだ。 証言者はきちんと戦争初期から末期まで追っている。私も主人公同様、戦争に関してほぼ無知な状態。きっとこの小説はそういう若い人に向けて書かれているんでしょうね。
戦死した主人の為に仕立て直した外套を着た男が玄関に自分を訪ねてくる。 私は松江に感情移入してそのシーンを頭の中で空想してしまう。 物語の中にはいくつかの奇跡があった。でもそれらはすべて人々が生み出した必然でもあった。 太平洋戦争も同じだった。人々が生み出した必然だった。
現代の「愛国心」という言葉が一人歩きして狂信的だと批判されることを物語の戦争体験者は嘆いていた。 家族や恋人を愛するように国を愛すれば、確かに悪いことにはならなそうだ。 愛国心と国粋主義とは違うものだもんね。 「街を大好きな人が街に住み、人を好きな街が人を愛する、それはどこにでもある当たり前のことのはずです。私たちは街を愛して、街に育まれているんです」…っていう某ギャルゲーのヒロインの台詞があるんですけど、愛国心もそれに似たもっと身近で親近感のあるものだと捉えてもいいんじゃないかな。 確かに新聞とかテレビはいちいち大袈裟だもんなー。だいたい伝聞っていうものは話半分でちょうどいいな、というのが20数年生きてきた私の感想です。
物語は日本海軍についての批判もしている。 その批判や海軍の行動はとてーも嫌なものを思い出させる。 作中では現在の官僚と言っているけど私が思ったのは自分が働いてる会社です。 いくら日本が変わったといっても変わらないものってあるんだなー…とこれは暗澹たる気持ちに。 事務所内で社員に向かって怒鳴る人が、その上の本部に行くと怒鳴られ、その怒鳴った人はさらに上の人に怒鳴られ…怒鳴られ無限ループ。ばっかじゃねーの、とつくづく思う。こんなので人が育つか。 しかし心の中で「ばっかじゃねーの」と思っても、実際に歯向かったりはしないんだなぁ…自分含め。もういいです、辞めます、ってなる。それって正義じゃないよね。宮部の姿を見て痛感しました。
話を戻します。 作品のテーマである「特攻」について。 志願するかどうか、紙に○を付けるだけで決まる。私は特攻は終戦間際のようにただ一方的に命令されてなるものだと思っていたので、衝撃でした。こんなことを選ばせるなんて非道にもほどがある。しかも結局志願するしかないようにできているのに、わざわざ自分で○を付けさせるなんて。
桜花については、語れる言葉がない。狂っているとしか言いようがない。 絶望の淵に立って、気丈に振舞う青年達に涙が止まらなかった。
もう二度と世の中にこんな悲しいものができませんように。 こんな出来事が起こりませんように。 そう願う為に知らなければいけないことなのだと思います。
そして物語を読んで気付いたこと。 戦争体験者たちはまさに自分の祖父母の代と重なっていると改めて気付きました。 それはどういうことなのかというと私の子ども世代の人間はほとんど今の戦争体験者に触れることはないのだということ。 顔を知らない自分の祖父のことを思う。祖父は徴兵され、戦後はシベリアに抑留されてそこで体を壊し生還したものの父がまだ十代のときに亡くなってしまったという。それからの祖母と父の苦労を考えると自分と関係ないことではないのだと痛感する。
物語の中で起こる奇跡。 こんなたくさんの悲しくて信じられないことが起きたんだから、大袈裟な奇跡が起こったっていいじゃないか!という作者の希望なのでしょうか。
最後に『永遠の0』とは何なのだろう。 零戦の0、なのでしょうけど、わたしは十死零生の「0」が衝撃的で印象に残っています。
自分の同世代に読んでもらいたい本です。 特に男子!読め!26歳のプレゼントはこの本で決定でしょう…。 感想は何でもいいから、薦めてみたいです。でもこういう題材って薦めづらいんだなぁ。そーいう世代みたいです…。
しかし、唯一、どーにも納得できんのが。主人公の姉の結婚だ。 今どきの30歳で手に職のある人はまだまだ結婚に対してのんびりなんじゃないかなーと思った。付き合ってもないのにそんなすぐ決めなくても…という気はした。その辺は男女の考えの違いなんでしょうかね。
私にしては超ハイペースの三日間で読み終えたのですが、猛暑の為、アイスコーヒーが出る店を転々としながら読んでました。 しかし危険!ふいっと涙腺をつっつかれるのです。公共の場で泣くわけにはいかないのでこらえると水分が鼻水となって出てきてそれはそれで…。 最後は家でタオルを肩にかけて読みました。すぐに涙と鼻が拭えるように…。 あと、私が買った文庫本には金色の帯が付いているのですが、気付いたらかなり金が取れていました。どんだけ手汗かいたんだ…。 そんなわけですので、今日は心ここにあらず…な一日でした。ちゃんと働いたけどね!平日に読むとえらいことになる…。
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