ぷつんと
何かが音を立てた気がした
夢が浮き上がってしまった
僕の手の届かない所まで
全てを諦めるには強さが足りなかった
全てを軽蔑するには汚さが足りなかった
全てを拒絶するのに足りないものはなかった
僕はまず手始めに食事を拒絶した
こんな簡単なことはない
「もう食べてきたから」のひとこと
それに笑顔を添えられればもう言う事は無い
次にすることはなんだろうと冷蔵庫をのぞきこみながら考えた
食べもしない卵を手に取った
結局食べはしないから元の位置に戻した
次に手首を切った
切れるだけ切ろうと思った
生への拒絶に
カッターは僕の意思に反した
手首からはあまり血は出なかった
やっぱりバイトに使っているようなサビたカッターは駄目だと思った
わずかな傷口からサビが入って
死んでしまった例なんてのはないかな、そう下らないことを考えた
どうしても腹が立ってしまって
僕はカッターを捨てた
いい気味だ君がちゃんと僕の動脈を切らないから!!!!
そうしてネズミ君(♂)と遊びながら考えた
先代のカッター君(♂)はよく切れた
やっぱりあんな色のついたちゃちなのは駄目だ
黄色と黒の引越屋が持っているようなのじゃなきゃ
先代のカッター君のように神経まで届きそうな切れ味じゃなきゃ
悲しかったのか
悔しかったのか
恐ろしかったのか
どうして涙など。
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