ハニワ在ル...はにわーる

 

 

残れる像を眺めて - 2002年09月28日(土)

本日、上田現『百物語 第十五夜〜残像〜』。

鶯谷。
会場『東京キネマクラブ』のレトロなたたずまいに喜んだあと
友人と落ち着き先を求めてしばしさ迷う。
キネマクラブに劣らずひなびた街並み、キンモクセイの香り。
爺婆の集う(苦笑)低いソファの喫茶店で和むのもとてもウレシイ。

後発の友人と合流した後、いよいよキネマクラブの中へ。
ダンスホールであるここは、3階層が吹き抜けになっていて、
オペラハウスのような2階席、3階席もかなり居心地がよさそうだ。
ステージ奥に高い天井から吊るされた幕も雰囲気たっぷり。


今日のオープニングは、こないだの頭の大きな彼(笑)が
2階下手に古めかしい時計を持って登場。
この時計の鐘のひとつごとに、我々は現爺の作り出す
時間と虚実の定まらない空間へと少しづつ連れて行かれるのだ。

バンドサウンドも、ピアノも高い天井に音が広がってとても心地よい。
音響のことはよくわからないが、上から音が降ってくるような感じ。
耳を澄まさずともまわりの空気に伝わってくる。

中盤、現爺は下手の小さなグランドピアノの前に現れた。
まるで幻みたいに、いなくなったと思った一瞬で。
そして、その豊かな表情がみんなによく見えるそこで、
ひとりピアノを弾きはじめる。

はぁ、またこの音とこの表情が見られて
シアワセだなぁ…と呆けていると。

いつのまにか現ちゃんの隣に、歌姫が降りてきていた。

それは、確かに元ちとせ嬢の姿かたちと声をしていたけれど、
実は、ダンスホールでワルツを踊る残像だったのかもしれない。

それにしても、声。空気を震わせるような。
マイクは、彼女から数十センチも遠く離れていたけれど
生声に近いその声は、聴く者のあっちこっちに響いた。


雲のようだったり、森の姿を成したり、ワルツを踊る人の群れを見せたり…
照明の光と影だけが作り出す映像は、
色がないからこそ記憶のなかの残像を呼び覚ますよう。
そして音のダイナミズムと共にいよいよ“連れて行かれる”我々…ま、
その連れて行かれる先は『ロボット女子高生』だったりしたんだけど(苦笑

速めの曲でわっと踊り倒したあと、
最後にはやっぱり壮大な音風景が我々のなかに映し出された。
シーケンスを背に去っていくメンバーたちもまた残像のようで。

そして、性急にアンコールを求めるでもなく…
本編を讃える拍手が鳴り止まなかった。

素晴らしいライヴだったもんな。


最後はまた『彼』に見送られて。
「上田は明日から遠くへ行くと言っています」
とのコメントに、場内一斉に笑う。

どうぞ遠くへ行って、また物語を蓄えてきてください。
お会いできる日を、楽しみにしておりますよ。
この日の残像で心遊びながら。



-



 

 

 

 

もくじ
 

文投げる