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横トリで昼歩く。そして夜もまた歩く。 - 2008年10月12日(日) 横浜トリエンナーレ http://yokohamatriennale.jp/ の鑑賞に参る。 いやしかし行楽日和のいい天気。 駅から会場まで歩くのも気持ちがいい。 さて。 メイン会場の1つ新港ピアに入ったとたん、いきなり 子どもキュレーターの群れに巻き込まれて、 なんだか美術鑑賞な空気がすっ飛んでしまった(笑。 まぁ、もとより美術なんて解ってない人なのだ。 ただ、観て、聴いて、触って、なにか感じることがあればいい。 突き詰めたところ、好き、とか嫌い、とか。 しかも最初のエリアときたら まだ作りかけっぽい作品もあった。 いや、ワシあのアートとかよく分からんけど、 あれって作りかけだよね??? 作品のことはよく分からなかったのに、 邦題がすごく印象に残ったのは 「なにをやってもうまくいかない!それなら愛しかないじゃない」 というシャロン・ヘイズの作品。 うーん。 愛のある人は「なにをやっても〜」なんて 思わないんじゃないかなー。などと。 次のエリアは暗い、映像作品系。 作品名は失念してしまったが、 風景をずっと映し出す作品を観ていて、 海の色がとても懐かしい気がした。 ワシの生まれ育った町の海は、冷たくて暗い色なのだ。 絢爛たる中世風の部屋でネズミとクマの縫いぐるみが 戯れる様を画面3面に映し出す、という「ネズミとクマ」。 斜めの画面もあったりして、 お連れさんはちょっと目が回ってしまった様子。 しかもそこを出ると、ネズミとクマが 折り重なるようにして眠っている姿に出遭ったり。 寝息のように胸が上下するさまって、 耳や鼻が動くよりも生き物っぽいのはなぜだろ。 さらに次のエリアでは、レーニンやチェ・ゲバラを 人形劇の人形(!)にしてしまった ペドロ・レイエスの「ベイビー・マルクス」に目を奪われる。 とてもそんな登場人物じゃないのに、なんだかとってもキャッチー。 なんたって子どもも興味津々なのだ(笑。 ワシがときめいてしまったのは、 ケリス・ウィン・エヴァンスの「あ=ら=わ=れ」。 エリアいっぱいに広がる大きくて円い金属のモビールたちから、 虫の声のような微かな電子音が聴こえる。 電子の幽玄を感じるじゃないか。 さらに進んで、スティーヴン・ブリナの 「何を読んでも二番目に出てくるのはいつもあなた」もまた 音が重要な要素を占める作品。 いつも2ミックスの音源を聴き慣れた耳にとって、 ギターと歌がまったく違うところから出てくるってのは それだけで結構びっくりなのであった。 おもわず、作品内を歩き回って ギターと歌がちょうどいい感じに聴こえるスポットを 探してしまったよー(笑。 古い映画のような映像も印象的だった ケレン・シター「殺人のためのG」。 現実と非現実の境目が分からなくなるようなストーリー。 昔、真顔で私の鼻と口を塞いだ人がいたことを思い出した。 クスヴィダナントa.k.a.ジョンペットの 「ジャワ・マシーン・ファンタスマゴリア」では、 透明人間のように衣装と楽器だけで隊列を組む鼓笛隊が、 壁に映し出された映像とシンクロしながら、 時々思い出したかのように太鼓を鳴らす。 ファンタスマゴリアって、走馬灯とか幻想って意味だっけ。 死せる者のマーチということか。 マーク・レッキーの作品も面白かった。 リズミカルなBGMに合わせて、 街角の銅像やオブジェが次々と映し出されていく。 どうやら、映像とリズムがシンクロするのは 無条件に好きらしい(笑。 さて、前情報でよく見かけた ミケランジェロ・ピストレットの作品。 壁際に並んだ何枚もの鏡が、1枚を遺して無残に割られている。 合わせ鏡ってのはよく見かけるけどさ。 割れた鏡を合わせると、 鏡のない“無”の部分も無限に映し出される。 あっちこっちに異次元への入り口があるようだ。 ところで「ワタシ、結構いい歳になるまで 鏡の作り方を知らなかったんだよねー」とお連れさんに振ると、 「え、鏡ってどうやって作るんですか?」と逆に聞かれる。 案外みんな知らないものなんだろうか? 数十人の子どもたちが互いに目や耳や口をふさぎ合う シルバ・グプタの「見ざる、言わざる、聞かざる」。 なんにも知らずに「集団見ざる言わざる聞かざるだねー」 などと思っていたら、ホントにこのタイトルでビビる。 色鮮やかな写真と表現されているもののギャップ。 さて、そんな感じで新港ピアをでて、 次は赤レンガ倉庫の会場へ。 人が多すぎてこちらも全然アートな雰囲気ではなく。 たまさか、同じ会場で オクトーバーフェスト http://www.nihon-oktoberfest.com/ も開催中。 早くも「帰りに……」と浮き足立つワシとお連れさん。 ふー。ダメな人たちだ(笑。 なんとか邪念を払い(苦笑、2Fでまず映像資料の展示に見入る。 ハイレッドセンター「シェルター・プラン」を観ながら、 全身を上下左右から撮影し測量するというその試みが、 現代だったら3DCGに取って代わられるのかなーなどと思う。 どっちがリアルか。リアルってのは情報量じゃないな。 そのまま「タージマハル旅行団」の映像を観て、 一行のカッコよさにしびれるも一瞬船を漕ぎかける。 笙の笛ってのは眠くなるよね……。 灰野敬二の作品はヘッドフォン鑑賞となっていて、 待ちきれなかったので泣く泣くあきらめる。 そしてミランダ・ジェライの作品に並ぶ長蛇の列を尻目に、 シルバ・グプタのスピーチを鳴らしながら シーソー状に動くガイコツマイク2基を眺める。 出力と入力が逆転するだけで、なんだこの違和感。 とはいえヘッドフォンは簡単な改造でマイクになるっていうし、 案外マイクとスピーカーも簡単に入れ替わるものなのかも。 来た道を戻る途中、チェルフィッチュの演劇作品 「フリータイム」のビデオ上映に長いこと引っかかる。 なにげない会話と、会話の内容に関係ない身振りや振る舞い。 そのなにげない違和感が気になって、じっと観てしまった。 結局、オクトーバーフェストは盛況すぎて入れず。 最後にまた寄ってみよう、と約束するダメな人たち(苦笑。 「そんなにドイツビールが呑みたいか!」←お連れさん曰く。 で、おとなしく次の会場へ、の、はずが。 日本郵船海岸通倉庫を目指したつもりなのに、 なぜか目の前にはパシフィコ横浜。 そこから桜木町の駅ちかくまで歩き、 さらにまたぐるぐるさまよう。 ちなみにお連れさんは横浜初めて。 ワシは……神奈川県民7年目(横浜じゃないけど)。 つまるところ、 どんだけ方向音痴なんだワシ。 おそらく1時間以上歩き続け、 やっとのことで目的地へと到着する。 倉庫外にあったあばら屋は 田中泯の展示の一部であった模様。 お連れさんが吸い寄せられていった(笑。 1Fの展示にはこれまた長蛇の列ができていたので、 2Fにまず上がる。 ニキル・チョプラの作品は、 エリア内に綿のテープが張り巡らされている。 ビニールだとものものしいのに、 なぜだか綿テープだとホッとするのは ワシがソーイングスキーだからじゃないよね? さらに、あれはクリスチャン・ホルスタッドの 作品の一部だと思うのだけれども、 観客が並ぶ場所へくたくたな縫いぐるみの規制線が(笑。 ワシはなぜかコレにいたく感じ入り、 「コンサートとかの規制線をくたくたの縫いぐるみにすれば、 みんなモフモフしながら待っていられるから幸せに違いない!」 と熱く語る(爆。お連れさんも呆れ顔。 いや、モフモフしてたらイライラしないじゃん? いいと思うんだけどなー。 さて、ここでワシがときめいたのは タージマハル旅行団のメンバーでもあった 小杉武久による作品。 点滅するライト、そして無造作に積まれた BOSSのコンパクト・エフェクターたちから生み出される エレクトリックな虫の声。 電気とノスタルジーの接点に弱いのだ。 配線剥き出しとか、チカチカとか、アナログとか。 決して「光るものが好き」(お連れさん談)だけじゃないぞー。 いや、あー…… そのまま進んで3Fへ。 オノ・ヨーコ「カット・ピース」のビデオに見入る。 1964年のパフォーマンスと、2005年のパフォーマンス。 観客が1人1人、彼女の衣に鋏を入れていく。 自らの意思とはいえ、コントロール不可能な状況下で 自分をさらされていくというのは、どんな気持ちだろうか。 お連れさんに「キミならどこに鋏を入れる?」と聞いた。 なんとなく、彼女の衣に鋏を入れることは ワシのシゴトにも似ている気がしたから。 どんな風にそれをさらすかは、鋏を持つワシに委ねられるのだ。 その向かいには、 紫とアイボリーのコントラストが美しい 中西夏之の作品。 盛られた砂にもまた、 日本庭園のようなしんとした美を感じる。 少しリセットされた気分。 ロドニー・グラハムが 芋を投げて銅鑼を鳴らす映像をぼんやり眺める。 結構外れるんだけど、当たるとすごいいい音がする。 芋なのに。 ホントに普通の芋なのにさ。 ……あっという間に閉場時間。 駆け足でいくつか展示を回り悪あがきを試みるが、身に入らず。 朝からでも、やっぱり1回では全然回りきれないわ。 で、約束どおりまたドイツビールを求めるダメな人たち。 しかし、夜になって会場はさらに混んでおり、断念。 「そんなにドイツビールが呑みたいか!」←ワシらがな。 結局みなとみらいのビアホールで、 1杯だけのつもりがしっかり2杯空けて(愚 で、そのまま帰途へ、の、はずが。 調子に乗って1駅歩こうとしたらまた道に迷う(白目 たぶん2駅分以上歩いたよね、アレね。 酔っ払って時々お連れさんの肩を張り飛ばしつつ。 そーいや、前に夜歩いたときもその前に夜歩いたときも 巻き込まれたのはキミでしたな(苦笑 そんなわけで、歩き疲れながらも初回は上々。 いい感じにまだまだ観足りない。 ……次はいつ行こうかな? -
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