すずの日記        

すず                       




 出来すぎた犬

「可愛い犬ですね」
カプセルみたいな入れ物の中で、ちょこんと座るマルチーズ。
綺麗にカットされて、水色の服を着ていた。

『ホント、ホント 私、犬飼ったことないし怖いんだけど、この犬だけは触れるのよね』
犬嫌いの友達は、マルチーズの垂れた両耳をびろーんと持ち上げてみる。

『ホント、おまえ、何しても怒らないんだな。そうとう厳しくしつけられてんだなぁ。可愛そうになー。気の毒になー。うるさいオバさんだよなぁ』
もうそれはわけのわからない質問をされ愚痴られ、午前中 仕事に戻れなかった玉木さんは、犬をつつく。

『飼い主には、全然似てないなぁ』 玉木さんは、ぼやく。

「あんまり、そういうこと言うと このしつけされたワンちゃんに、チクられますよ」
あたしは、オバサンが帰ってくる前に退散した。

『早くいかないと混んできちゃーう』と言って 自分は昼食を食べに行き、黙って犬を置き去りにしていく オバさん。
 
見知らぬ人に囲まれながら、飼い主を待つ犬に 
あたしは、同情する。





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2003年10月16日(木)
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