オモウコト。
幸希



 幸せな眠り。


 さくさくと鳴る足音を纏って。
 私は家路につく。
 こちらはもう冬景色一色で。
 吐く息の白さが身にしみる。

 明かりのついていない部屋に。
 入るのに慣れていた。
 「ただいま」
 が、意味のない響きだった。


 少しずつ慣れた玄関の鍵を開ける。
 
 カレーの匂いがする。

 私はようやく。
 「ただいま」が意味を成す場所を。
 また手に入れた。


 「寒かったろー」と。
 「仕事大変だね。」と。

 言葉が温かいと改めて感じる。


 人は結局。
 一人じゃ立っていられないんだ。


 今日は茄子と挽き肉のカレー。

 お腹いっぱいにして眠りにつこう。


2003年12月12日(金)
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