『紺極まる』(長野まゆみ)

長野さんの作品に対しては、好き嫌い…というよりも、合う人と合わない人…に分かれるのではないかという気がします。
理屈ではなく感覚的に、ハマる人は最初の数行を読んだだけでハマってしまうでしょうし、そうでない人はおそらく同じ行数を読むことすらできないで本を閉じてしまうのではないか、と。

実はデビューされたときから、ほぼ全ての作品を読ませていただいているのですが、最近はずいぶんわかりやすくなったなぁ…という印象を受けます。
長野さんご自身のコメント(雑誌のインタビューなど)は読んでいないので、長野さんが意図的にそうされているのかどうかわかりませんが。
登場人物の名前にしても、使われる言葉にしても、私たちの日常にすんなり馴染むものが選ばれているので、以前に比べると随分間口が広がったのではないでしょうか。
また、これまでだと美しくぼかされていた(←ここがポイントv)或ることがらについても、結構はっきり描写されるようになったように思います。

と言っても。
リアルな描写が、必ずしもコトをわかりやすくするわけではなくて。むしろ作品の核となるような部分については、触れたときに染み出てくるものが以前よりも濃厚になったようにすら感じます。

…抽象的なことばかり書いているので、「で、一体どういう話?」と叱られそうですが。キャラクター設定と彼らの関係がわかってゆく過程もとても面白い(←楽しい、ではなく興味深い、の意味)ので、もったいなくてここには書けません(笑)。
ひとつ言えることは。
私が小説を読む目的として第一に求める、物語の世界へどっぷり浸らせてくれる…という楽しみを、毎回間違いなく味わわせてくれる作家さんのひとりが長野まゆみさんだということです。
2004年06月05日(土)

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