映画『下妻物語』

※ゆる〜くネタバレ有りです※

イイですよ、これは! …と、いきなりお勧めモードです(笑)。とりわけ「オトメ」な皆さまは、ぜひともご覧になってください。
「オトメ」と言っても、ロリータちゃんであるとかオトメちっくな趣味の持ち主である必要はありません。
私なりに定義するなら、好きなモノを「好き」と堂々と言える、大切なモノを守るためなら無謀に見えようともぶつかってゆける、優しさと強さはワンセットで発揮してこそ意味があることを知っている…みたいなことでしょうか。
大口開けてガハガハ笑い、映画館を出るときには胸の芯をスッコーンと何かが突き抜けていったような感覚を味わえるはず。
 
考えてみると私は、深田恭子ちゃんが出ているドラマを今まで一度も見たことがなかったのですが(汗)、今回いっぺんにファンになりました。
一人称で書かれている原作そのままに、この作品は恭子ちゃん演じる桃子のナレーションで物語がぐんぐん進んでゆきます。つまり恭子ちゃんは出ずっぱりで、観客は恭子ちゃんの声を聴きっぱなし…という状態。それなのにちっとも耳にうるさくないのは、恭子ちゃんの声の魅力でしょうね。

さらに、その桃子が実に潔いキャラクターなものだから、彼女と一緒になって突っ走ったり立ち止まってみたり…と、実にテンポ良くメリハリの利いた展開となっています。メリハリ…の最たるものは、予告でも観られるクライマックスの乱闘シーン。突然、別キャラに変わる恭子ちゃんのカッコ良さには、同性ながらホレボレしてしまいました。

そして相棒役・イチゴを演じる土屋アンナさん(ご結婚おめでとうございます♪)のヤンキーっぷりがまた、「…元ヤン?」と疑いたくなるほどハマっているのですよ(笑)。
高校デビューのイチゴの中学生時代は、赤ブチ眼鏡をかけた女の子。お家ではパパとママに見守られながらお部屋でピアノを弾き、学校ではイジメられても反論できずにいるようなタイプ。
回想シーンでのイチゴは、とても同一人物とは思えないほど地味なルックス。バリバリのヤンキーとおどおど儚げな少女という両極端なキャラを、アンナさんは気持ち良いほど見事に演じ分けています。

予告などを観ると、およそ対照的なタイプのふたりの女の子の友情物語…のように思えるかもしれませんが、そんなカワイらしいお話ではありません。
イチゴは最初っからず〜っとテンションが高いのに対し、桃子は常にクール。ところが、そんな桃子がイチゴを巡る或る事件によって人生でおそらく初めてアツくなる…。
その変化を「成長」なんてありきたりの言葉で呼ぶのは、ちょっと違う気がします。ヤンキー道があるように、ロリータ道があるように、女の子と女の子のつき合いにおいて守るべきオトメ道…とでもいうのでしょうか(笑)。そのことに桃子が生まれて初めて気づき、クライマックスシーンでアレ(←バラしてしまうのはもったいないので、秘密/笑)をやらかしてくれたときの、カイカンといったら!

そんなふたりは、ちゃんとひとりで立っていられるようなタフな女の子です。それでもまだ18歳なので、時には自分の信じるものが揺らいだり裏切られるような目にも遭うのです。
初めての恋に破れて号泣したり(イチゴ)、憧れのデザイナーから仕事を依頼されて緊張のあまり作業に取りかかれない自分に呆然としたり(桃子)…と、ふとオトメらしい弱気な一面を見せてくれる場面があることによって、単に「面白かった〜」で終わらず、いとおしさのようなものをこの作品に対して抱くのかもしれません。

さらに、共演者が揃いも揃って芸達者。
とりわけ印象に残ったのは、桃子のお父さん役の宮迫さん、お母さん役の篠原涼子ちゃん、おばあちゃん役の樹木希林さん。そしてイチゴにとって憧れのヤンキー役の小池栄子ちゃん。
小池栄子ちゃんなんて、画面に現れた瞬間、後光が見えましたもん(笑)。暗闇に浮かぶ白い特攻服、風になびくストレートの長い髪、そしてサラシを巻いても隠し切れないダイナマイトバディ…。2シーンくらいだけの登場なのがもったいないほど。

バラエティでは天然っぷりを発揮している篠原涼子ちゃんも、役に入るとまるで別人格。桃子の母親は尼崎(兵庫県)出身という設定のため、ダンナさん役でネイティブの(笑)宮迫さんともども全編関西弁で会話するのですが、ねちっこい甘ったるい喋りと関西弁が驚くほど彼女のキャラにハマっているのです。
ドラマや映画を見ていて、役者さんの関西弁に違和感を覚えることがよくある中(苦笑)、涼子ちゃんには合格点を上げたいです。

映像についても、どのシーンを切り取って観てもカッコイイ! かといって、インパクトのある場面をコラージュしたようなアートっぽい印象はないので、監督ファンにしかわからないようなマニアックな表現はありません。
主役のふたりのルックスが現実離れしているほど可愛くてカッコイイから、背景がこのくらいブッ飛んでいてちょうどいいバランスなのかも。
何せ、ロココなおフランスイメージから下妻の田んぼ道へと映像がなだれ込むようにして始まるくらいですから。

あと、これはローカルネタ(?)なのですが。
作品の中に何度も出てくる、ジャスコ。映画を観たのがジャスコの入っているショッピングセンターの中だったこともあってか、画面にジャスコが現れるたび館内からくすくす笑いが漏れていました。

もうひとつ、個人的な話を。
ほとんど全編笑いっぱなしだったこの作品ですが、桃子から初めて「会いたい」というメールをもらったときのイチゴの表情と、その後のプラットホームでのふたりのやりとりには、うるっときました。
自分も女でありながら女の子特有の「お友だち」感覚が苦手な私は、ふたりの関係をちょっと羨ましく思いました…ということも、恥かしいですが最後に付け加えておきます(笑)。
2004年06月20日(日)

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