夜7時頃、空き室の筈の隣室が騒々しかった。 ドアの開閉音、階段を忙しく上り下りする足音。 ベランダから通りを見ると、2tトラックが路肩に停まり 広げたシーツの上に、荷台から出した家財道具が並べられていた。 遂に、お隣に入居者がやってきたのだった。
防犯上、隣室に住人は居た方が良いのだが、ここ数ヶ月というもの のびのび貸切気分を味わっていたので、ちょっぴり残念。 (大家さんの住む一戸建ての2階に、貸間はうちを含め2世帯だけ)
一体どんな人が入ったんだろう?変なやつでなきゃいいけど。
しばらくして慌しい足音もやみ、インターフォンが鳴った。 『あのう、隣に越してきました××と申しますが…』 出てみると、若い女性が玄関に立っていた。
『今後とも宜しくお願いします。 これ、お口に合うかどうか分かりませんが(お菓子の包み)』 「わざわざすみません。いいのかしら、こんな…頂いてしまって」
若いのに、越してきた挨拶に訪れるとは今どき感心な。(気分は婆さん) 印象は、清楚で感じの良い女の子。うちの妹に少し似ている。 良かった、こういう人で。ほっとした。 部屋が随分長いこと空いていたのは、泣き寝入りを経験した大家さんが 条件を限定し、住人の募集を慎重にしたためと思われる。
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