ぐったりしながらうちへ帰って まるで、いっぱしの大人がするみたいに 真っ暗ななかでカギをあけたり 昨日ののこりのカレーをあっためたり ひとりで新聞をみたりする
しずかで とてもしずかで 自分がどんなかたちをしているかとか どんな声でどんなしゃべりかたをしていたか、そんなことを わたしはずんずん忘れてしまう
望んで与えられるひとりはやすらかか知れないが 望まないひとりは、ひとを空虚にするようで わたしが薄くなっていく
次にあなたに会うとき どんな顔をしよう どうやって笑おう もう、会わなくてもいいよくらいに淡くなったわたしから どうやって、記憶を呼び起こそう
よく、わからないで せかいから わたしがふわりと浮き上がって 途方に暮れた幽霊になる
……いなければよかったのかな
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