ジョージ北峰の日記
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2006年10月01日(日) オーロラの伝説

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 ところで、この本を書き始めた動機は、世にも不思議な私の経験をお話することでした。しかし、読者の皆様には研究のことよりも、まだまだ話さなければならないことがたくさんあります。
 例えば私がこれまで話してきたことで、この国の文明が(われわれの文明とは少し違った方向ではありますが)、かなり進んでいることを御理解していただいたと思いますが、この国の戦士たちがどうして水中で自由自在に戦うことが出来るのか、又どうして戦闘に槍や剣しか使わないのか、最初から疑問に思われた方が多いと思いますので、そのことについて話を進めていこうと思います。
 この国へ来てから、私は非戦闘員として研究を遂行する立場にあったのですが、この件については、この国の研究者に私の技術を指導してから、既に彼らが私に代わって研究を続けられるだけの能力を獲得していたので、私が自分本来の仕事に熱を入れる必要がなくなっていました。
 それにオメガ国の戦士たちがモンスターザメを使って上陸してくるようになって、陸上戦が頻繁に起こり始めていたのです。
 ある日、戦士たちの訓練所に立ち寄った時のことですが、それがきっかけで彼らに剣術の指南をする羽目に陥ったのです。
 私は子供の頃から剣道を習っていましたが、ある時佐々木小次郎の使っていたと伝えられる”ツバメ返し”に大変興味があって、その研究に没頭したことがありました。
 ”ツバメ返し”の極意は相手の攻めを誘って、攻撃を受ける、相手が”決まった”と一瞬気を抜いた瞬間、目にも止まらぬ早業で、返し剣が相手を攻撃する所にありました。それには、勿論、剣を自在に繰る豪腕が必要でした。
 私がたまたま訓練に参加した時、私の剣捌きを彼らは知らなかったので面白いように決まりました。パトラもアレクもベンでさえ驚きを隠しませんでした。是非その技を教えて欲しいというのです。”ツバメ返し”は返し技なので太刀は短くても良いが、勿論長ければさらに有利になります。
 彼らの剣の使い方は”防御と突き”が基本で”切り倒す”日本の剣道を教えるのに少し時間を要しましたが、それでも彼らの運動神経は並外れていましたので、瞬く間にマスターしてしまいました。
 私自身は真剣で戦ったことがなかったので、技を教えるが人を殺す目的の戦争に参加する気はないと話すと、それはそれで良いということでした。
 しかしパトラは不思議そうに、「あなたは戦争が間違っていると考えているようですが・・・・確かにあなた方の文明社会では戦争に爆弾、ミサイル、さらに原子力兵器などを使うので、人と人が公平に戦っているとは言えませんが、私達の社会では、決してそのような手段で戦争をすることはありません。人と人が自分の能力で戦いそして優劣を決めるのです。それに戦いたくない人は戦う必要はないのです。しかしこの国では、戦士でありながら戦わなければ、戦士の資格を剥奪されます。そして奴隷になることはありませんが、彼らの遺伝子はこの社会から抹殺されるという罰則があります。そのような遺伝子がはびこると、いずれこの国の人の能力が落ちると考えられるからです」、続けて、「自分の遺伝子を残したければ、この国では、自分の能力を人々に何らかの形で示す必要があるのです」「・・・・」私が黙っていると、ベンが「あなたは研究者としてだけではなく、戦士としても高い能力を示したと思います」と話を継ぎました。
 この国では、戦争は"悪”ではなかった。それは良い遺伝子をセレクションするための手段だったのだ。だから彼らは、高度な武器を作る能力があっても実際には、武器としては槍や剣しか使わなかったのだ。なるほど彼らの論理にも一理はある。しかし何か違和感があった。それは人類が一度犯した誤り、つまり誤った遺伝の優生学を復活させようとしているのではないか?という疑問が残ったからだ。しかし人間の優劣を生物学的手段のみを使って決めようとする戦争の考え方、それはそれで正しいのかもしれない・・・しかし、結局、彼らの論理の真偽を、直ちに決定することだけは避けた方がいいと思うだけで精一杯だった。


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