NINJA-SYSTEMS
るり子の日録【オリーブの森で語りあう】
るり子の日録【オリーブの森で語りあう】
るり子



 読まれている。

お寿司屋さんのカウンター席で

ひとしきり夕食を

彼とともに堪能し、

座いすがセットしてある掘りごたつ形式の

その座面を立つとき




ずれた座いすと小座布団を

カウンターと並行になるように正し

その場を去ろうとした時

彼が言う。







「瑠璃ちゃん、いい女だねぇ。」







フレンチやイタリアンなら、こんな事はしない。

それは ギャルソンの仕事。

でも、和食のそれとなると 事は違う。







「発つ鳥 後を濁さずの如くよ。

乱れた座面を残して去ることは 女がすたるわ。」


私は彼に そう説明する。



彼を大切な常連客として認識しているこのお店

彼が立つとき、何人もいる板さんの一人が

彼の靴をすかさず揃える。

それを見た彼が 板さんに優しく言う。

「寿司職人が 客の下足など揃えたらいけない。」







そういいながら

自分といえば、

私のハイヒールを私の足元に揃えている。

寿司職人に下足を触らせまいとするその彼の心意気が

私のハイヒールを彼に揃えさせる。







こういう 細かな心配りができる人

相手の立場を読み尊重し立てることができる人。

彼といるという事が私に教える リーダーとしての資質。

彼からの学びがある限り

私は 彼を尊敬し続けることができる。







このあとまだ仕事があるといいながらも

仕上げのバーに 私を連れていこうとする彼に

一日の締めくくりとしての時を

大切扱おうとする彼の心にうたれる。







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今日のフルーツが ほの暗いバーカウンターに並んでいる。

いちご 洋ナシ ザクロが見える。







心の中で ザクロがいいかな

と、

思う間もなく

彼が 私のためにカクテルをオーダーする。







「彼女に ザクロのカクテルを。」







どうして 私の心が読めたのと聞けば、

「いちばん最初に 一番好きなものを食べる瑠璃ちゃんだから

やっぱり それなら今夜はザクロでしょう」







読まれている。







2008年12月08日(月)
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