気分刊日記

2002年05月26日(日) 怠惰な休日

 あ、夕方5時に起きて大人計画『春子ブックセンタ−』を観てきました。B列センター付近と言ういい席なのですがちょっと圧迫感があって、もう少し後ろの列でもいいかなと……なんて贅沢な!本公演初の宮藤官九郎の脚本・演出。なんと行っても映画・TVと猛烈に評価を上げ注目を浴びまくってUVカットが必要なクドカンが原点に戻って舞台で本領発揮?

 劇評:大人計画の役者さんは皆個性豊かで天下一品、キャラの宝庫。それを殺さず生かしてお話を纏め上げるのは至難の業。今回も各々愛すべき役者達が御馴染みのキャラで登場。今回は演出を担当していない松尾スズキがいつもより休むことを許されない出づっぱり。にも拘らず、その力の抜き具合が良いわぁ!
 前半のストリッパーと春子の掛け合い、中盤の仮装・化粧・一発ギャグや、後半のコントなど場面場面での作り込みは達者なのだが、その場面でも中心にいる人以外がちょっと死んでる。それでも、各キャラ(役者)が目立てるようなシーンが配さた構成は上手。ただ、そこがネックにもなっていたようで今ひとつ全体の‘お話’が散漫な感じがした(今回も宮藤と村杉は顔見せ程度の出演だし、荒川・三宅も今一つ生きてない)。これは嬉しい悩みなんだろうが役者が皆立派に育ってそれぞれの魅力が捨てがたいのは良くわかるが、それを捌いてこそ演出家の手腕。
 TVでついた客は役者を観に来る事が中心なので芝居の面白さより面白いことやっている役者(持ちネタ見せ)があればそこそこ満足して帰る。でも、『大人計画』の面白さ(特色)って、そのアブノーマルで排他的でブラックで卑屈で鬱屈していながらきちんと腑に落とすorしこりを残す芝居と、それをきちんと消化して演じられる役者の魅力なんだと思う。私個人としては『大人計画』にはそう言う芝居を求めていた。
 それが、ここまで来るとマンネリと承知で公演を打つと言う雰囲気になっている(これって、最近の“ワハハ本舗”なんかそう?)。すごく勿体無い事なんだけど「大人計画」は劇団としての任をそろそろ終えようとしているのではないだろうかとさえ思わせる。シティーボーイズのように1年に1回集まって同窓会とも実験室ともつかない公演をやるもの良いが、それにしても人が多すぎる。夢の遊民社はそれが原因で解散したし、第三舞台もそれで悩んだようだ。劇団健康にしてもそれを解消するためにナイロン100℃というユニットに改変してみたりした。でも、後期の第三舞台みたいに役者達が積極的に他の劇団やユニットに参加して色んな刺激を得て第三舞台に帰ってくるみたいな、まるで各クラブチームで活躍した選手がナショナルチームの代表として集まるような劇団に発展すると言う方向性も無きにしも非ず……これって小劇団にとっての永遠の悩みのひとつなんだよねきっと。

 今回の公演の結論として、(これは微妙な感想だが)松尾スズキの脚本・演出ならもっと納得できる芝居が見れるのではないかと言うのも少し残った。クドカンの舞台は前回の「キラークイーン666」でも思ったが、短いコントとしての完成度は高く、長いものになると編集が入ればかなり良くなる映像向きなのかもしれない。

 〜今回の公演は確かに面白い舞台であったが、あんまり面白い芝居ではなかった。〜
 まあしかし、小劇場を代表する様な劇団となった今、面白いのは当たりまえ。それを踏まえてと言う事なので、並の劇団を観に行くくらいなら十分お釣が来る満足度を得られる事は間違い無い。


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