気分刊日記

2002年07月07日(日) 模倣日記

 前売り鑑賞券があったので「模倣犯」見てきました。因に、●●です。

『模倣犯』 原作は読んでいないのだが、映画とは結末が違うそうじゃないですか。何処から違うのか確かめたいんですが、映画と同じように変に煽る意味合いも有ってか、いまだにハードカバーしか出ていないみたいですねぇ?文庫が出るまで原作を読む事はないでしょう。そして文庫が出る頃には作品に対する興味も無くなっているでしょう。強いて読む機会が有るとすれば、私が長期旅行に行く時に文庫を持って出る時ぐらいしか可能性は有りません。
 映画の方は終止、中居正広が<知的で無感動な自信満々の犯罪者>を演じているんだが、どんなにがんばっても<軽薄で奢ってカッコつけのバカ>にしか見えないのが致命的。それはつまり、<かっこいいアイドルのつもりなんだけど歌も踊りも演技すら満足に出来ないジャニーズ>と言う、或意味超自然体のスタンスで臨む彼。それと似た様なズレが、いつも華やかなドラマのヒロインやCMで活躍している木村佳乃は、(ダイコンなのはわかっていたが)実はとっても地味な女優である事が再確認できる演技。恐らく本人もだいぶ前から自覚しているんだと思うし、実生活でも芸能人なんか似合わない地味な女性なんじゃないかなぁ?ゴシップも聞かないし。まあ、敢て華と思われる主役級のダメっぷり比して、準主役級の2人。津田寛治&藤井隆が充実した演技だった。津田さんは、ピ−スよりも計算高くなく、でも彼と同じ域に居る人間だと思いそうガンバル浩美をサラリと演じていた。藤井も、普通の人である事を自覚しその範囲内でしっかりと生きる良いやつを等身大で演じていた。津田さんに関しては、ベテランと言っても良い方なので置いておいて。藤井隆は、実に才能豊かなエンターティナーである。先ず自分のキャパ・性質を十分理解しており、状況を見て何処でどの引き出しを開ければ良いかを的確にできる人だ。それも、決して前面に出躍り出ず、例え出ても引き際も心得ているバランスの取れた芸人さん。特に、屋上でパインの缶を食べる浩美とのやりとりや、佳境に入る段での車の中出の浩美との会話にイイ人っぷりが自然に出ていて凄く感心。山崎努の演技は今更言う間でもなく‘日本のクリストファー・ウォーケン’。豆腐屋つながりだと、萩原健一がもうちょっと歳とってたらこの役ができたかも(やっぱりシブイ演技)。
 話は、原作を読みたくなる程完全犯罪には程遠いい破綻したプロットを自信満々にすすめるので?あからさまにシーンが有る浩美と和明の関係以外、(回想シーンの子役も下手なので)ピースと浩美の関係、有馬・滋子・真一・和明の妹等の関係性が中途半端にしか見えない??さらに、何を意識したのか時間を前後して物語を複雑に見せようとする編集が、単に前後を入れ替えてみただけにしか見えずメリハリもついてないので???色々細かい暗示的カットや小道具、効果を使っているようだが全体に盛り上がりのバランスが悪いので細かい芸も無意味に終わる。
 結論として、以前「es」の時にも書いた、‘人間は環境(状況)と教育に作られる’とい点に基づいた性善説的なオチなのだが、どんなにがんばってみても、日本と言う環境がかなり淀んでいるし、人間進歩がかなりリミットに来ているのでそのカウンター効果として、(感情や倫理・理論に基づいた連続性を必要としない人間同士の固体数削減が出来る)ピースみたいな人間はこれからも多く排出されるだろう。
相変わらず宣伝だけは仰々しくて、「黒い家」の教訓が何も活かされておらん監督じゃのぉ。って言うか、森田芳光は‘フィーリング’で作るらしいけどそれって80年代で終わってる!


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