たくさん てのひらからこぼれていく、 あのひとは知らず、 あのひとは気付かない
ゆるやかに、 くびをかたむければはらはらと花びらは砂のようにくずれて うっすらとゆびさきにしろく 灰が かすかにのこるだけで
朝は夜のなごり、 夜は夕のなごりをいつまでもとどめて みつめつづける眼にはきらきらとくらやみのなごりを 薄らに溶かして ひえてゆく
それは抱き寄せられるままに逆らわなかったわたしの罪科(つみとが)ですね
あれはなつのひ つよい青と緑のまぶしいひかり 奪うくらやみに それは 唇無くともこの腕無くとも みつめつづける眼ひとつででも犯し得た戒律でした、
のぼる端から階段は崩れていって足元にはいつも残像が置き去りになっているだけで 足を 絶えず踏み出していなければきっと うしろを振り返ってしまうから、 ただ 戻れないと後悔するためだけに、
たくさん、てのひらからこぼれていく あのひとは あのひとは 知らない。
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