短いのはお好き? 
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2002年05月21日(火) あゆむとあゆみ


 
 ママがあゆみの頭をこつんと小突く真似をした。
「こら遅いわよ」
「ごめんなさい。薫ママ」
「さ、じゃ早く席について」と、薫ママはカウンターにもたれかかりながら促した。
「あ。これ、お花」
 あゆみは、深紫のトルコ桔梗の花束を薫ママに差し出しながら、その桔梗に負けぬほどの笑みをこぼした。
「あら、いつも悪いわね。ありがと」
 なつめが駆け寄ってきて、その花束をすぐアール・デコ風なデザインが施された花瓶に活けた。
「まあ、きれい」となつめが呟くままに、漆黒のカウンターに置かれた透明な花瓶のなかで、ひっそりと息づくその深紫のトルコ桔梗は、優美なまでに美しく『ルネ』の店内に清らかな光を優しく放っていた。


 ステージでは、やっとメグ、いやポンさんが、源さんとやったと告白したところだった。
「で、どこまでやったんだ?」
「え、そんなぁ。そんなことまでいわなくっちゃいけないんですかぁ?」
「あったりめーだろ、ハゲ!」
「アタシ、こうみえても奥手なんです。まだぁ、山梨のぉ、田舎からぁ出て来たばっかしでぇ、なんにもぉ、知らなかったんですぅ」
「おい、まさか源さんが初めてなんていうんじゃねえんだろうな」
「え? はい。そうです」
「嘘つけ、このとっつあんボーやが。おめえが処女なんてここのいる誰も信じやしねえぞ」
「え! ほんとうです。神かけてほんとうです。源さんと知り合うまでは……ですけど」
 当の源さんは、目を白黒させている。
「ほう、上等じゃねえか。じゃ、百歩譲ってヴァージンだったとしよう。で、どこで源さんと知り合ったんだ?」
「あ、あのう、それも言わなくちゃ駄目ですか?」
「てめえ、おちょくってんのか!」と今度は麗子が灰皿を投げつけた。
 しかし、ノンプロでピッチャーをやっていたという麗子の投げた灰皿は真一文字にポンさんめがけて飛んでゆき、今度ばかりはツルリとすべることなく額を直撃した。が、もともと投げることを想定して置いてあった軽いアルミの灰皿であったため、ポンさんの額はわずかに血が滲む程度ですんだ。
 ポンさんが言った。
「わかりました。わかったから、もう物を投げないでください」
「じゃ、早く言えよ。どこで知り合ったんだ?」
「あ、あの……鶯谷のソープです」
「ばっきゃろー! じゃ、やっぱり処女なんかじゃねえじゃねーか」
「え、そんなあ。メグはれっきとしたヴァージンどぅえーす。もちろん仕事の上ですけど」
「バカか、おまえは」
「で、一日何人くらい客とってんだ?」
「え、それは今関係ないことじゃないでしょうか」
「アホ。なにお高くとまってんだよ。また灰皿投げられてえのかあ」
「ひっ。やめて。言います。5人です、5人くらい」
「うそつきだなあ、おめえはよぉ。何か、ハゲると嘘ついてもいいって法律でもあんのか、おいハゲチャビン」
「ホントです。平均して5人くらいでした」
「ハゲ、ナマハゲ、ずるムケ野郎! おまえみてえな、こどもとっつあんツルピカハゲ丸くんみてえのに、お客がつくわきゃねえだろが」
「え? でもほんとなんです。ほんとなんですってば」
「それじゃ、その店はハゲ専の集まる店なのかよ?」
「いえ、それは。お店に出る時には、ヅラかぶってますから」
「けっ、なにがヅラだよ、赤剥けティムポヅラしやがってからに」



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