短いのはお好き?
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2002年06月12日(水) |
ここにはなんにもありません |
浜松町ゆき東京モノレールに 彼は乗っていました 茶色の色眼鏡をかけていました レインボーブリッジを過ぎたころ 電話がかかってきました 彼は「はい」と言ったきり ひとことも喋りませんでした 相手は女性であることが 手にとるようによくわかりました 彼はケータイを切ると 死んだ魚のような眼をしました そして背広の左の胸ポケットから 銀色のびかびかひかるケースを取り出しました 蓋をあけると注射器と なんかのアンプルがみえました 右手にアンプルを持ち 左手の人差し指で軽く2、3度 その首を弾いてからぽきりと折った アンプルに注射針を刺し込むや ずるずると液体を吸い上げ ぴゅうと弧を描いて毒液を飛ばしてみせてから おもむろに 右手で舌を掴むと引っ張りだすようにして 舌の裏側に注射針を無造作に突き立てました それからすぐさま彼はケータイで誰かに電話して 打って変わって今度は他人の迷惑も顧みず
べらべらべら べろべろべろ
べらべらべら べろべろべろ
彼はしゃべりたおしました
モノレールはいつまで経っても 浜松町に着きませんでした
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