短いのはお好き?
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強い西風が吹いていたので檸檬が傷む前に狩りに行こうってことになって、じゃ、どこに何を狩りにいくのかって話になったら、大正池にアメンボを採りにいくんだよ、馬鹿なこというなって誰かがいって、その誰かが誰なのかを知りたくて仕方がなくなって、とにかくそれらしき人の後について、馬を走らせていたんだけれど、途中でアレっ! おれ乗馬なんか出来る筈ないじゃんて思ったら不意に落馬して頭から厩舎のなかに突っ込んで、もぎたての檸檬をかじってたらもうとにかく酸っぱくてそこで目が醒めたんだけれど、やっぱりてゆうか嘘みたいなんだけど右手には檸檬が握られていて、まいいかと思いつつ檸檬にかじりついたらやけにそれは甘くって、てかシュークリームというかプリンアラモードというかそんな感じのでたらめな味がしてぜんぜん檸檬ではなく、いやいや梶井基次郎もさぞかし嘆いていることだろう、なんて呟いてみたところでなんにもならないってことをよく知っていながらも、そうせざるを得なかったほど、やはり梶井の『檸檬』は素晴らしい作品であるとおもわずにはいられなかった、なんて日記に書いている自分を上から覗き込んでいるもうひとりの自分が存在するんだなってはじめて意識した。
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