短いのはお好き? 
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2002年12月31日(火)  イ ヴ  #7

 
 
……その時、フェリスは人の気配に気付き、ハッと後ろを振り向くと暗闇のなかから大きな白いものが、ぬっと現れた。


次の刹那、その白いものが、「この盗人め」と言ったのと、銃声がとどろいたのは殆ど同時だった。フェリスはガシャーンという窓の割れる音を聞きながらその場にくずおれた。


意識の遠退くなかでフェリスはサンタさんにお願いをした。


……サンタさん、ぼくがあの世というところへ行く前に、どうかパパとママに逢わせてください。お願いです…。


程なくしてフェリスは目蓋を透かして煌煌と明かりが灯るのを感じた。フェリスは期待を込めて、うっすらと目を明けてみる。


懐かしいパパとママが、そこには立っていた。震える声で小さく「…ママ…パパ」と呼ぶフェリスを、ふたりは怪訝な表情で見つめている。


フェリスはそんなことには気付かない。


「ほら、ママ。ぼくいつもこうしてママとパパのお写真を見てたんだよ」


首から下げていた小さなロケットを掲げてみせるフェリス。


「まあ、そのロケットは…」


ママが駆け寄りきつくフェリスを抱きしめた。
「フェリス! 元気だったのね。まあ、なんてことかしら…」


ママは泣きじゃくり、あとはもう声にならない。
フェリスは思った。サンタさん、ほんとうにありがとう。たとえ夢でもぼくには最高のクリスマス・プレゼントです! これでぼくも…


そこでフェリスはやっと気が付いた。 あれ? おかしいな全然どこも痛くないや。それに血も出てないし…。なんだパパは、ただ脅かすためだけに銃を撃ったのか。


ええ!! ということはこれは夢なんかじゃないんだ。今度はフェリスが激しく泣きじゃくる番だった。

そうして、イヴは明けてゆき、再開した親子三人は、めでたくクリスマスを迎えるのだった。






















しかし、ここで忘れられている存在がひとつあった。


パパは威嚇射撃をしたわけではなかった。その証拠に割れた窓ガラスの飛び散った雪の上には点点と血痕が塀の方へとつづいていた。








だが、その血痕も降りつづく粉雪に、ピンクへと変わり、やがて純白に染まっていった。






                                          (了)


















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一年間の? ご愛読? ありがとうございました。
今年はみなさんにとって、どんな一年でしたか?

みなさんのお幸せを衷心よりお祈りもうしあげます。


てなわけで、よいお年を!




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