短いのはお好き? DiaryINDEX|past|will
夏季講習の申し込みでアテネ・フランセに行った帰りに、駅前のディスク・ユニオンでCDを漁っているとケータイが鳴り出した。(ちなみに着メロは、YESのシベリアン・カトゥールだす) それはおかしな電話だった。 「やぁ、やほやほ。元気? 本当に久しぶりだね。で、きょうはどうしたの?」 「はぁ? そっちからかけてきといて、きょうはどうしたもないだろう。てか、アンタ誰?」 「いや、ほら。れいのさ、貸してあったアベカオルの本そろそろ返してほしいんだけど」 「え?」 「なにそれ! そんなの借りてないじゃん」 「またまたご冗談を」 「てか、あんた誰?」 「いや。その本てさ俺がヒロに、アベカオルのこういった本があるよって教えたやつじゃないですか。んで、貸してって言われたけど図書館の本だったから又貸ししたくなくって断ったやつですよ。憶えてないの?」 「憶えてないのって…それにヒロって誰?」 「確かにそのことは覚えてますよ。高橋さんがそのとき貸してくれなかったから結局自分でかったんですから。でも、その後で逆に高橋さんに貸したじゃないですか」 「ああ、そうだっけ?? で、オタクどこ電話かけてんの? それに高橋って?」 「もう勘弁してくださいよ」 「あんたね、それはこっちの台詞でしょーが」 「またまた。もうその手にはひっかかりませんよ」 「わかった。わかりました。じゃ、お聞きしますが、あなたは何番にお掛けですか?」 「そんなに俺のこときらいなんですか? もう見損ないましたよ。そこまで陰険な人だとは思わなかった。いやならいやとはっきり言えばいいことじゃないですか! それをのらりくらりと何だかんだいって馬鹿にしくさってからに」 「はぁ?? 」 「だからね…あ、わかった。わかりましたよ、結局あの本は返したくないってことなんですね? よ〜くわかりましたよ」 「あのね。ほんとに終いにゃ怒るよ」 「はいはい。あんたは昔からそういう人でした、自分の思い通りにいかないとなるとすぐ暴力に訴える。まるっきる進歩がない人間なんですね」 「おどりゃあああ! 下手に出てりゃつけあがりやがって、そこでまっとれ! いまぶち殺しにいったるさかい!!」 「ま、ま、兄さん。そんなん興奮せんで。また血圧あがりますよ。こりゃ、わいが言い過ぎましたわ。 ほんま、申し訳ありませんですぃた。ほれ、この通り。お尻ぺんぺん、オマエのかーさん、デーベーソ!」 「く、く、このどぐされめがー!!」 そういって、ぼくは思わず機種交換したばかりのSH-53をアスファルトに叩きつけ、鋲入りのエナメルの靴の踵でボッコボコにしていた。
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