短いのはお好き?
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2003年11月08日(土) |
maternal instinct |
カヲルは死んじゃっても なお艶かしい肢体の持ち主だった ローライズの腰から膝にかけての ラインなんか生唾ものだし…
生きてるときとちがうのは ちょっぴり青白いかなと思う顔と 触れても温もりのない肌くらいだった
で なんでカヲルが死んでしまったかといえば 別に僕は私淑するあまりバロウズという作家を 真似たわけじゃないんだけれど 形の上では似たようなことになってしまった というわけだ
バロウズは誤ってピストルで奥さんの頭を打ち抜いて しまった 思うに たぶん遊びでロシアンルーレットでもやってたんじゃないだろうか
バロウズも大きな十字架を背負って生きていたんだなぁ と改めて思った
ぼくにもそんなことができるだろうか
恋人をこの手で殺めてしまったという 重い十字架を背負ってなお これからも 何食わぬ顔で のほほんと 生きていけるものだろうか
もし仮に…
ちょっとちょっと膝小僧抱えてさっきから何ぶつぶついってんのよ ねー
つまんない
どこかいこーよ
カヲルの能天気な声にぼくは一瞬たじろいだ
カヲルは死んだのだけれども その遺体はまるで生きているかのように喋ったり ケーキを食べたり お風呂に入ったりする
この信じ難いけれども 動かし難い現実をもう一度 認識しなおさなければならない
現前こそすべてなのだ
というわけで ぼくらはDisneyに行くことにした
前は中目黒で日比谷線に乗り換えて八丁堀にでたけれど 臨海線が開通してからは 大井町線で大井町まで行って 臨海線で新木場まで行けば もう舞浜は隣の駅だった
いつもならばゲートを抜けたら 一気に突っ走るんだけれども これからはそうもいかない
アトラクションも『It's a small world 』くらいなら大丈夫だろうけれども プーさんの『Honey Hunt』はちょっと危ないかもしれない
子供用でも『Gadget』はもってのほかだし あと大丈夫なのは『Western River鉄道』くらいだろうか
『Jungle Cruise』は乗り降りの際にちょっと心配だ
というのも、カヲルは妊娠しているのだった 3ヶ月らしい
それを知らされたときには なんとも言われない不思議な感情に囚われた
はじめて父親になるから…ではない
カヲルがなぜこの世から姿を消さないのかがわかったからだった
それに気付いたがゆえに ぼくは喜んでいいのか 悲しんでいいのか わけがわからない感情に包まれたのだ
つまり ぼくにはわかってしまったからだ
カヲルは ぼくらの子供をこの世に残すために頑張っていて
新しい生命がこの世に誕生したとき 彼女は今度こそ彼岸に旅立ってしまうのだろうことを…
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