妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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| 2008年05月31日(土) |
『山ん中の獅見朋成雄』(小) |
【舞城王太郎 講談社文庫】
文庫化してるのに気づかず一年くらい経過していた。
いつもの舞城節ではあるけれど、いつもより語り口調のアクは少なめかと思う。 話しのアクは強いが。 舞城小説に慣れてない人だと、なにがなんだか・・・となるように思います。
何かと言えば、これは青春小説に違いないのだけど、『世界は密室でできている』とか『熊の場所』のほうが青春小説としては好きだったなぁ。
山の中の村や、馬や、人盆や、鬣がなんの暗喩なのかは、読み手によって解釈は異なるかも。 そして女子にはいまいち成雄がなにから脱却したのか理解しきれない、ような気がする。
| 2008年05月30日(金) |
『相棒-劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』(映) |
【監督:和泉聖治 日本】
テレビシリーズは最近ぼちぼち見るようになったので、あまり細かいことは知らないです。 が、テレビシリーズを観ていない人にもわかるように作ってるんだなぁというのはわかりました。 相棒といえばテレ朝の刑事もののわりに、社会派で時事問題を取り入れるのも早く(やや早すぎて練りきれてないんでは?ということもあるが)意欲的でよいなぁと思っていたのですが、今回選ばれたのがあの日本人拉致事件で起こった被害者へのバッシング。 満を持しての映画化でこの題材を選ぶって凄いなぁと、純粋に関心します。
冒頭、間違ってまたLを観に来ちゃったのかと思いました。
レギュラーメンバー総出演で誰のファンも楽しく、連続殺人から始まり、東京マラソンへのテロという緊迫感ある派手な事件と問題提起、なかなかうまく絡んでいたと思います。
やや、ネタバレを。
ラスト西田敏行と右京さんが取調室で相対するところ、右京さんが珍しく目をそらすのが印象的です。 ひじょうに重たくて恐ろしい問題だと思う。 映画では避難勧告が被害者に届いていなかったという真相が明らかになるけれど、もしも避難勧告が届いていたとしもバッシングは正当化されないだろうと思うと、物語をまとめるためにしかたない真相だったとはいえ、ややごまかされる気がする。 まぁ、あれ以上踏み込むと娯楽ではなくなるんだけど。
伊丹&亀山コンビが以外な活躍を見せてにやり。 伊丹さんかわゆい。
小野田、右京さんのアダルト組みももちろんあります。よいですね。にこにこ、と。
なんかいろいろとありがとうございます、な映画でした。
| 2008年05月27日(火) |
『坂道のアポロン 1』(漫)『モロッコ水晶の謎』(小) |
【小玉ユキ 小学館フラワーコミックス】
60年代後半の地方都市の高校を舞台にした青春ものとなりそうな雰囲気。 秀才優等生な転校生とバンカラ同級生がジャズを通して友情を育むという、まあ話しとしてはさして意外性はないのだけど、全体的に丁寧な描かれ方が好感触。 これからどうなるかに期待。
+++++++
【有栖川有栖 講談社文庫】
おなじみ国名シリーズ。 短編4本です。 おなじみなのでさくさくとおなじみの感想を。 今回はみょうにロマンチックな話しがなくてよいような寂しいような。
「助教授の身代金」 わかっちゃいるけど、ひょっとしてと思ってしまうタイトルですが、残念ながら火村先生は誘拐されません。ちぇ。 終盤、あなたはそんな些細な会話まで記憶しているんですか、と聞かれる火村先生が「一時間前に自分が話したことくらいははっきり覚えている」と答えるのだけど、アリスの発言だからじゃないの?と思うしだいであります。 このシリーズは、本格ミステリのわりに、犯人が異常な心理で動いていたりするのがおもしろい。 本格は異常にみえて、そうせざるを得ない理由があったとか、実は合理的な理由があったとか、が多いので。
「ABCキラー」 タイトル見てのとおりクリスティの『ABC殺人事件』を模したのか、という殺人事件が起こる話し。 作中のアリス同様、私もどんな話だっけー?とかなりうろです。『僧正殺人事件』と混じってるくらいに曖昧。 ま、曖昧でも読んでなくても問題はないのですが。 やや解決にシンプルさが欠けるのが残念かも。 アリスが、すごいよ、エルキュール・ポワロ、と思ってて、マサルさんじゃないんだから、と微笑ましい。 シリーズもけっこう出てますが、ここにきて新キャラが。今後どう絡んでくるのか楽しみです。
「推理合戦」 短編というよりも掌編。 事件はないけど、たまにはいいですね。 すっきりとしてて、小気味いい話し。
「モロッコ水晶の謎」 毒殺ものは、誰にでも入れることができたパターンと、誰にも入れることができないパターンがあって、これは後者。 アリスがまたも事件に巻き込まれるという、助手の鑑ですね。 たまに本気で容疑者になってみたとき、火村先生がどうするのか見てみたいとも思うのですが。 そろそろ、国名シリーズも実際に海外に行ってみるというのはいかがでしょう。 占いが絡んでくるというのは、なかなか読者を納得させるのが難しい部分もあり、解釈もいろいろできちゃうんだなぁというのが解説を読むとわかる。 おもしろい動機というか方法ではあるけども、ややすっきりしないものがなきにしもあらず。
| 2008年05月26日(月) |
『アフタースクール』(映) |
【監督:内田けんじ 日本】
見終わったあとにさざなみのように「だまされた」「だまされた」という声が聞こえてきた珍しい映画。 だまされたといってもなんともさっぱりとした後味でとてもよい。 何がどう、というのは観てからあっと思うのがよいと思うので詳細は後に回しまして・・・。
よくよく思い返すと、大泉洋が演技してるのをちゃんと見るのはほぼ初めてだったかもしれない。 ドラマではちょいちょい見かけてたのだけど。 地元の人間としてはどうでしょうのイメージが強くて、物珍しさで全国区でいまは引っ張りだこなのだろうと、いささか高をくくっていた部分もあったのだけど、今回主演しているのを見て、ひょっとして演技うまいのか?と印象も新たに。 洋ちゃん侮っててごめんよ・・・。 ほかのメンバーのキャスティングもうまく、まず見た目の印象からだましが始まっていたと今となっては気づかされます。 それにしても堺さんは悪そうなときも善良そうなときも、なんともかわいい。 騙されても許してしまうな。あの魅惑の笑顔。
以下ネタバレなどなど。
妻の出産の当日に失踪した中学時代の同級生を探す、教師と探偵、というあらすじにいったいいくつの嘘があるのかと、観終わってからあきれる。 前半と後半でがらりと印象がかわる話しだけど、どんでん返しがある映画なんてのは履いて捨てるほどあるなか、これがさわやかな印象を残すのは、騙していた側が全て善意で行っていたことであり、騙されていた側がその後ろ暗さから悪いほう悪いほうへ解釈して、結局騙される形になっているという点にあると思う。 そして、一番周囲を振り回していたはずの木村(堺雅人)が最終的には、実は一番何も得ていなかったというちょっとかわいそうなまでの理不尽なオチ。 このいかにも怪しい木村という役が本当にハマリ役でした。 堺雅人って善人をやってても、どこか怪しいんだもの。でも笑顔がかわいいので、なんだか騙された気がしてしまう。 いつも何かたくらんでそうに見えて、でも結局何もたくらんでなかった木村にぴったり。 大泉洋もいかにも人に騙される役回りをこなしてそうに見えて、実は逆だったという意外性。 一番狡猾に見えた、佐々木蔵之介がしてやられるという皮肉。
見事に前半と後半でみんなの印象が裏返る。
木村の中学生時代をやってた男の子が、とても堺雅人の演技に似ててびっくり。
『運命じゃない人』も観てみたいなぁと思いました。
| 2008年05月22日(木) |
『おせん 1・2』(漫) |
【きくち正太 講談社イブニングコミックス】
ドラマを見てたのでなんとなく読んでみました。 ちなみにドラマは蒼井ちゃんはかわいいけど、話しは別におもしろくはない。 露骨に新旧を対決させるのはどうも好かない。
原作はそんな露骨さはなくてドラマよりはおもしろいかなぁという感じでしょうか。 原作おせんは、ドラマよりも艶っぽいです。 薀蓄もさして押し付けがましくもないですし。今のところ。
大女将は白州正子かと思った。
| 2008年05月18日(日) |
『四畳半神話大系』(小)『ミスト』(映) |
【森見登美彦 角川文庫】
『太陽の塔』に引き続き二作目。 いやぁおもしろい。おもしろい。 前作と同じ、もてない学生がうだうだしてる話し、かと思いきや、1話目を読み終わり、2話目が始まると、おや?となる。 1話目とまったく同じ冒頭、でも読んでいくとちょっとずつ違う展開が。 「私」が大学に入学して最初に選ぶサークルによってちょっとずつ展開が変わっていくのが、アドベンチャーゲームのようなシナリオだなぁと思いつつ読み進めると、最終話で見事に収束していく。
違う展開ながらも3話目までは「私」が小津という悪友に振り回され、変な師匠と出会ったり、酒癖の悪い美女の羽貫さんと知り合ったり、明石さんに恋したりと、とてもにぎやか。 でも4話目では、同じ導入ながらも、どこまでも続く四畳半を延々と一人彷徨うというサバイバル(というほど命の危機感がない)的な展開で、今までとの対比でいっそう孤独感が募る。早く出してあげて!と。
4話をリンクするエピソードがあったり、回を重ねるごとに重みを増す小津の「慰めるわけじゃないけど、あなたはどんな道を選んでも僕に会っていたと思う。直感的に分かります。いずれにしても、僕は全力を尽くしてあなたを駄目にする。運命に抗ってもしょうがないですよ」という軽口、というか憎まれ口。 最終的に、小津、何者・・・とさえ思う。それにしてもすごいセリフだな。
まったく見事な一冊でした。でも著作の中ではあまり知名度高くない気がする。
+++++++ 【監督:フランク・ダラボン アメリカ】
ショーシャンクは観てないけど、グリーンマイルは観ました。 で、その二作のイメージで感動もんだと思っていくと手ひどい裏切りに会うこと請け合い。 私はキング作品はホラー系のほうが好きなんですけども。まぁ、キングに限らずホラーサスペンス系が好きなんですが。
キングなのですっごい恐怖感を盛り上げといてラストはエイリアン(のようなもの)かい!というような展開があるんじゃなかろうか、と思ったのだけど大いに期待はいい方向に裏切られます。 というか出来が良すぎてすんごい鬱映画となってます。
謎の霧が発生して、その中に何か恐ろしいものがいる、ということで客として訪れたスーパーに立てこもることになる人々。 かなり早々に霧の中の何かは姿を見せるので、その辺はちょっと拍子抜け。 でも恐ろしいのは得体の知れない何かではなく、恐怖に追い詰められた人々のとる行動そのもの。 こういう群集心理系は苦手なので、いやだなぁいやだなぁと思いつつ観てました。 主人公の息子が「ぼくを怪物に食べさせないって約束して」って言うセリフが絶望的すぎて泣きそうになる。
以下、ネタバレ含む。
いったいこの話しはどういうオチをつけるのだろうと、さっぱり予想がつかないながら、終盤、主人公たちを載せた車が霧の中に出発し、BGMがここで急に流れたときは、『鳥』のようなエンディングになるのかと思いました。 でもその後、車の行き着く先に待っている絶望たるや・・・! 観てるときに気がつかなかったのですが、ラスト主人公の横を通り過ぎるトラックに乗っているのが、最初にスーパーを出て行った女の人だっていうのがまた、凄い、凄い鬱。 エンディングも途中でBGMが消えて、戦車やヘリの音だけになるのも、もうやめてくれというほどの鬱。
観終わったあと、うなだれること間違いない傑作です。
余談だけど、オリーが見た目に反して大いに活躍して、なるべく長く生きてもらいたい、と思って観ていました。
| 2008年05月15日(木) |
『ファイナルカット』『少女七竃と七人の可愛そうな大人』(小) |
【水壬楓子 幻冬舎コミックス】
コミックスから出てるけど小説。 BL小説ってBL漫画の成長著しさに比べてどうもぱっとしない、なかなか成長しない、ような気がするんですがどうでしょうか。
映画監督(48歳)×俳優(33歳)となかなか大人カップルです。 あんまり年齢差感じないのが残念ですが。 年齢上で地位も上で、そのうえ攻めだなんて、まったく興味がわかないんですけどー・・・私は。
まったく好みじゃない、と言ってしまうとそれまでなのですが、主人公二人の性格もどうも好きになれず、終始好きにすればーという気分。 受けの野田がまったく歯ごたえのない性格だし(その無駄にハイスペックなプロフィールもいらねぇだろ!)、木佐はエロオヤジ発言全開だし、AV監督なのか、お前は。 お前らまじめに映画に取り組め、と。
とまあ、オヤジは好きだが枯れたおっさんが好きな私はだめでした。 でも文章は合格点です。偉そうで悪いですけど。
+++++++ 【桜庭一樹 角川書店】
表紙といい、タイトルといい、耽美なの?とちょっと引きますけど、読んでみると古風な言い回しながら、それが逆に滑稽味をかもし出す絶妙のバランスで、美少女に生まれついてしまった七竃とそれを取り巻く大人たちの事情が書かれています。 たまに犬視点で。 母と娘の親子小説であり、七竃の成長と恋心を描く成長小説でもあり、と多面的。
旭川が舞台なのが意外。 北海道好きなの?桜庭一樹。 それとも地方都市好きなのか。
| 2008年05月13日(火) |
『喪男の哲学史』(他) |
【本田透 講談社】
表紙、沙村広明だったのか。
喪男(モダン)とは「もてない男」であり、本書の定義ではさらに「もてることを拒否する男」なんだそうです。 インターネット用語ですが(有体に言うと2ch用語) 私もネットを徘徊してそれなりに長いので、文中の用語はそれなりに理解できますが、普通に哲学本として読もうとした人はどうかな、という部分も多々。 まあ、でもそういう人を対象にはしてないであろう本なのでいいのかもしれない。
内容はブッダから現代の茂木先生まで、「哲学というのはもてない苦悩から生まれるんだ」という視点に則って、時代に沿って哲学者たちの思想を追っています。 正直、冒頭の数ページでアホらしくなって読むのやめようかなと思ったのですが、途中で我にかえるかもしれないし、それに大真面目かつ執念と情熱でもって自分の土俵で哲学を語ってるあたりに敬意を表して読み通しました。 私としては哲学入門書を探してたのですが、明らかに間違えた。 モテないことと萌についてひたすら我田引水に語ってます。
著者は負け組みが何を言っても「そんなのはルサンチマンにすぎない」と否定されるのは違うという旨述べているのだけれど、モテないルサンチマンというか女に対するルサンチマン以外のなにものでもない本書。 (脚注が多いのに索引がなくて不便だ) フェミニストが読んだら怒るぞ、と思うのだが・・・。 まあ、あまり女性評が的を射ていないから対して腹も立たないかもしれない。 P27脚注に「(著者がモテないのは)日本の若い女どもがプラトンもニーチェも知らない愚か者だからです」と書いてみたり、全編にわたってモテない嘆きを書きながらも、肝心なときはいつもモテを拒否すべし、モテても救われないんだと綴る。
そこまでわかってるんなら、癒されようとしなければいいのに・・・。 癒しとか赦しとか救済とか全部、拒否すればいいのに。 恋愛至上主義を否定しながら、二次元への萌を推奨する。 著者は特別、女性に対して嫌な思い出が多々あるらしいのですが、『電波男』を読んでいないので詳細はよくわからない。
またモテの定義もされてないのでどういう状況を想定しているのかわかりにくいところがある。 単純に異性に好意を持たれたり恋愛対象として見られること、としてとらえてたのだけど、そのほかに異性に限らず他者に好意をもたれること、イケてる状況全般もさしてたように感じた。 喪男な哲学者や思想家がたまにモテても、それでも喪男は喪男と書いてみたりと強引な解釈も見られる。 どうでもいいけど、ギリシャ時代のショタはおもいっきり肉欲を伴ってたと思うよ・・・。むしろショタを認めさせるための論理だったんじゃないの。 第三章まではだめ男という観点から見る哲学史みたいで、だめ男好きとしては楽しかったのだけど、三章からは筆者の主張が強く出てきすぎて脱線しがち。
自分より下を見つけて優越感を持つことをよしとしないといいながらも、ところどころにイケメンじゃないけど、喪男なオタクでもない、ふつーの哲学書なんて読まない人への軽視が見られて、おいおいキミ・・・人間が小さいよと思った。 全編にわたってなんとも腹が立たないのはただただかわいそうだからだったと思う。 まったく望んではいないだろうけど、現実世界で菩薩のような女性に出会うといいですね、と言いたくなる。
哲学史はわかったようなわからないような、でしたが、とりあえず『ローゼンメイデン』と『ガン×ソード』『最強伝説黒沢』を読んだらいいということと、キモオタがなにゆえキモがられるのかはわかりました。 三次元の女性を徹底的に排除し、セックスを不純のものとして、二次元の女性キャラを理想として萌ながらも結局性欲の対象にしてるんじゃねーかよ、という部分がキモがられるうえに、蔑まされるんだと思いますよ。 二次元って結局、哲学上の二次元世界じゃなくて、ただのシュミレーションゲームであり、都合よく書かれたものであり、自分にとってはなんの害も与えないものにしか癒されないっていう幼稚な印象が拭いがたい。
哲学と引っ張り出して正当性を主張するなら、女という形すら取っていない脳内にしか存在しない観念を自分で作り出して美のイデアとすることを目標にしたらいいんではないですか。 女という形すら捨てたものというより、脳内にあるのだから形すらいらないでしょう。 そんなの生み出せたら仙人でしょうけど。
喪男というアイデンティティをいったいいつまで持ってられるのでしょうね。本田透は。 滝本竜彦だって結婚しちゃったし。 モテないならモテないで、うまく小説として昇華すればよかったのにと、森見登美彦『四畳半神話大系』を読みつつ思う(森見くんがモテないのかどうかは知らないが)
| 2008年05月12日(月) |
『首無の如き祟るもの』(小) |
【三津田信三 原書房】
『厭魅の如く憑くもの』のシリーズ3作目。 2作目が飛んでるけど、ミステリなのであまり気にせず。 厭魅の頃よりは文章が上達してるような気がするけど、ホラー度は下がっているし、薀蓄も減ったので持ち味半減という気もする。 持ち味が減って一般化したとも言えるかもしれないが。 終盤の怒涛の推理が肝なんだろうと思う。 よくできていたんではないかとは思うが・・・。 個人的に真相解明パートで探偵にだまされると、すごく裏切られた気分になるのであまり好きじゃない。 一番読者が無防備になるパートだと思う。
それにしてもこの人の話は、読み物としておもしろいのか悩む。 ひたすら必要な複線を張り続けるために綴られているような印象が残る。
以下ネタバレを含みます。
語り手部分にトリックがあるのが厭魅と一緒なのでなんとなく想像がついてしまう。 悪くはないけど。 キャラクターの薄さが今回はトリックに良い方向で出たのかな、と。 誰と誰が入れ替わってもたいしてわからん、という・・・。いいのか、それは。 せめて言耶くんくらいは、もう少しキャラ立てたほうがいいんじゃないのか、と思わなくもない。 言耶くんが、厭魅のときはあまり描写されてなかったけど、美青年と判明してなんとなくがっかり。 探偵は美青年じゃなくてもいいよ。 まあしかし、そのシリーズ探偵をすらミスディレクションとして活用してるあたり新しい。 というかそれだけシリーズ探偵として定着してないからできたのか。
斧高が長寿郎に好意を持っている、特殊な性癖を持っているらしいというのは、腐女子むけミスディレクションだったとしか思えない・・・。 そんな、女だったなんて!!なんてつまらないんだ!!(そこかよ)
真相解明が事件から10年以上も経ってるというのもなんとなく、カタストロフィーに欠けました。
| 2008年05月10日(土) |
『蜷川妄想劇場』(他) |
【写真:蜷川実花 集英社】
今をときめく俳優(以外もいる)16人のコスプレ(のような)写真集。 見たいのは大森さんの写真だったのだけど、そのほかの人も好きな人が多かったのでよかったです。 堺さんの写真がとてもかわいいし、加瀬亮もなんだかいいです。 サダヲちゃんもかわいい! 安藤政信はいっつもなんだかエロいよなぁとか、劇団ひとりが妙に色っぽく撮られててなんとも釈然としなかったり。
薔薇プールが似合うのは成宮くんと、香取くんぐらいだよなー。いささか懐かしいネタですが。
みんな素敵でした。ただ気恥ずかしい。
| 2008年05月09日(金) |
『聞こえない声』『見えない星』『青春♂ソバット1』(漫) |
【京山あつき 大洋図書】
二冊まとめて。 聞こえない〜のほうが、不器用な後輩がかわいくってしょうがない今井と、ちっちゃくてぶさいくなんだけどなんとも一生懸命な後輩引田くんの、高校野球部を舞台にしたあれそれ。 BLにあるまじきぶさいくなんだけど、もうかわいくてならない。気分は今井。 あんまりかわいいから、このまま今井とくっついてホモになるのは嫌だ、とすらちょっと思う(なんだかもう本末転倒)
見えない〜のほうは、無事にくっついた二人のその後ですが、大きな事件が起こるわけではないけれど、着々と距離を縮めてる様子が描かれてます。
二冊とも、なんだかタイトルがネガティブなのでちょっと将来の展開に不安を覚えるのですが、引田くんには幸せになってもらいたいものです。 大学生編があるのかどうかわからないけど、あるのなら楽しみにしてます。
++++++++ 【黒娜さかき 小学館IKKIコミックス】
IKKIはマイナーながらも粒ぞろいな印象。 青年誌的BL道ということだそうで、男女共学になったばかりの男子一期生である、有田とゲイの白州の友情物語り。 いまのとこ。 すでに有田が道踏み外しそうで、しっかり!と思う。 これがBL系雑誌なら先も読めるのだが、青年誌ということで、先が読みにくい。 友情を貫き通せるのか否か。 なかなか気になります。
【曽根圭介 角川ホラー文庫】
『沈底魚』がデビュー作だと思っていたのですが、先にホラー大賞を取っていたんですねぇ。 なんとも異色。 不条理系のホラーでいささか苦手でした・・・。
「暴落」 個人が株式として評価されている社会で、どんどん転落していく男の話し。 前半2作品に言えるのだけど、もっと短くして5編くらい収録したほうがよいんではないか、と。 アイディア一本勝負という感じで、長く感じた。 世にも奇妙な物語でドラマ化しそうな話し。
「受難」 目覚めるとビルの狭間で手錠でつながれて動けなくなっていたという、ちょっと映画『SAW』を彷彿とする出だし。 救いを求める男の下に現れる、3人の男女の不条理さが秀逸ながら、筒井康隆ならもちっと少ないページ数でスピーディーに処理してくれそうだなぁと思う。
「鼻」 二つのまったく異なるパートで成立している。 なんとなく貫井の『慟哭』を思い出す。 あれはミステリーですが。 この二つの異なる視点がどこでどうやって重なっていくかがポイントなのだけど、読みながらそうか!とならず、終わってから反芻して、あぁあれはこうで、これはこうだったのか、となったのがなんとも残念。ま、それは私の頭が働いていなかっただけなんでしょうけど。
3編ともブラックなオチで、一個くらい別のオチがあってもと思う。 あとどんでん返しのあるプロットはいいのだけど、キャラクターにバリエーションが少なそうだなぁ、という印象。 長編だとどうなってるのかわかりませんけど。 前からちょっと感じてたけど大森望とは趣味が合わないような気がする。
| 2008年05月07日(水) |
『死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う。』(他) |
【森達也 朝日出版社】
たぶん、10代の頃から罪とそれに見合う罰について漠然とそんなものはあるのかなぁというようなことを考えていた。 あるときは非道な犯罪に対して絞首刑なんてあっさりしすぎてるんじゃないかと思ったり、あるときは人殺しだろうがなんだろうが殺してもいいものなのかと思ってみたり。 ただ最近は、死刑が執行されたという短い記事を目にするたびに、嫌だなと感じる。 殺人や事故のニュースを目にしたときと同じように、嫌だなと感じる。 そう思っても、被害者遺族がこれでよかったと言うのなら、私に言えることは何一つないな、と思う。
そんなふうに、著者の森達也も死刑についてさまざまな取材を重ねる中で逡巡している。 とても重い足取りで、行ったり来たりする文章が、その逡巡を物語り、論理では納得しきれない死刑の存置、廃止という二極をさまよっている。 最近、死刑が確定した光市母子殺害事件の被害者遺族である夫の本村洋は、犯人の死刑を強く訴えている印象が強いけれど、その本村洋にしても死刑制度そのものにはひじょうに逡巡している様が述べられている。
つい最近、死刑の瞬間の音声が放送されたようだけれど、本書でこれほど死刑の実施が不可視なものなのかと驚く。 それと同じく、被害者遺族への保障のなさには愕然とする。
著者は一つの結論に達するけれど、それは死刑制度への答えではない。 読んで終わりという一冊ではないなと思う。
| 2008年05月05日(月) |
『喜劇は恋で進化する』(漫)『そして夜は甦る』(小) |
【阿仁谷ユイジ 東京漫画社】
別に東京漫画社のまわしもんではないのだが・・・今となっては読んでない本のほうが少ない。
なにかがすごく上手いというわけでもないのだけれど、かわいくてよろしいのではないでしょうか。 東京漫画社からでるBLは、主役から脇にいたるまでみんな善人なパターンが多くてそこがよくもあり、いささか食い足りない感もあり。
++++++++ 【原�錙.魯筌�ワ文庫】
原りょうを読むために、先月チャンドラーを読んだのです。 いややっぱり先にチャンドラーを読んでおいた方が、チャンドラーに捧げられたというこの作品を楽しめるんではないかと。
読んでみたら確かに、マーロウを髣髴とさせる主人公沢崎に、文体。 でも私はこちらのほうが楽しめたな。 おそらく純粋に距離感の問題なんだとは思いますけど。
この文体と練られたプロットを堪能すればそれ以上ことさら述べる感想もない気がする。 脇役たちが非常にすてきで、特に錦織警部はなんともよいなぁ。 登場する都知事兄弟が、どう考えても石原兄弟に見えるのだけど、この本が発行されたのは20年も前で、当然都知事に立候補すらしてない時代。 たまたまなのか先見の明なのか。
実在する大学名、新聞社名を使っているのも個人的に好感をもてました。 いっつも毎朝新聞とか、東応大学とかって・・・と違和感を覚えてしまうもので。
| 2008年05月02日(金) |
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上下』(漫) |
【漫画:杉基イクラ 原作:桜庭一樹 富士見書房】
小説を先月読んだので、漫画も読んでみた。 小説のほうが好きだけど、それは私がそもそも活字が好きだからというだけであって、漫画のほうが劣っているわけでもないし、漫画化としてはひじょうに成功している例だったと思う。 絵もうまいし。 小説を読んだときよりも、いっそう藻屑が痛ましくて、小説を読んだときは大丈夫だったけど、うっかり泣きそうになるシーンもしばしばあったし。
それと同時にあらためて、桜庭一樹の文章がよく吟味されてるんだなぁと感じた。 小説・漫画どちらもすばらしいできです。
| 2008年05月01日(木) |
『トロンプルイユの指先』(漫) |
【加東セツコ 東京漫画社マーブルコミックス】
このままではマーブルコミックスをコンプしてしまうんじゃないか、という気がする今日この頃。
この手の表紙はたいてい表紙にだまされた・・・となる場合が多いのだけど、これは大丈夫でした。 なんかBLっぽくない絵だなーと思いつつ(望月花梨に似てるなぁとちょっと思いました。望月花梨どうしてるんでしょうか)、うまいけど全体的に白い印象が。 もっと上手くなりそうな雰囲気はあるので2冊目以降に期待でしょうか。
絵はともかくとして、内容もまた絵同様きれいにまとまっているというか、ひっかかりの少ない話というか、その分印象が薄い。 悪くない、悪くないが・・・うーんとなってしまう理由は、きっと作者の嗜好が見えないせいかも。 BLに限って言えば、作者の並々ならぬ嗜好があってこそほかの作品との差異が出てくるんではないか、と。 お題に沿って書いてます、という感じがするんだなぁ。 上手いからそれでもまあ、いいのだけれど。
「われなべ、とじぶた」みたいな変態チックなのがわりと好きでした。 それにしても、学園モノって教師×生徒、生徒×教師はもういいから、たまには数学×歴史(教師)みたいのが出てこないだろうか。
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