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■ 和解?
「おひさしぶりでございます」
電話での会話は、Hくんの堅苦しい挨拶から始まった。 7ヶ月振りに聴くHくんの声。 やや緊張しているように感じる。
私は、いつかこの日が来ると分かっていたんじゃないか と思えるくらいに、落ち着いていた。 (こんなに早いとは思ってなかったけど)
人は時折、古い引き出しを開け、色褪せた想い出を引っ張りだし 過去の感傷に浸りたくなるもの。 そして気紛れに「元気?」とメールする。
でも、今回Hくんが私にメールした理由は 過去の感傷でも気紛れでもなかったようだ。
「彼女が…、出来たんだ」
「あ〜。F子さんでしょう?」
「えっ!どうして分ったの?」
「そりゃあ分かりますよ。掲示板でのお二人のやりとり見てたら」
「そうかぁ。知らぬは当人ばかりなりってやつかぁ」
「ふふ、そうよ」
前から、F子さんのことは知っていた。 昨年の秋くらいから、二人で逢ったりしていることも。 私は、とっくに付き合っているのだと思っていたけれど 正式に恋人関係になったのは、ごく最近らしかった。
「沙夜のこと、ずっと気になっていたんだよ。 メールや電話だけの友達になるか、それともすっぱり 連絡を取り合うのを辞めるのか。どちらにするにしても 話し合わなきゃって」
「そんな風に思ってたの? 私、放置のままのフェイドアウトかなって。 何ヶ月も音沙汰なしだったでしょう。 Hくんにはもう徹底的に嫌われちゃったとばかり」
「いやいやそんなことないですよ。 沙夜は、僕がどんな気持ちでもいいから付き合いたいと 言ってくれてたけど、僕としてはずるずると曖昧な関係を 続けるのはイヤだったんだ。 こんなんじゃこの先、ちゃんと彼女も出来ないなって思ったし」
ここで私は (だったら、私を彼女にしてくれれば良かったのに) という言葉を飲み込む。
でも仕方ないよね。 だってHくん、彼女にする程私のこと、好きじゃなかったんだものね。
「あのね、私にも彼がいるの」
「えーっ、そうなのー? なんだ〜、だったら早く教えてくれれば良かったのにー。 僕は沙夜が思ってる以上に、深刻に悩んでいたんだからー」
「だって…彼が出来たなんて、私から言える状況じゃなかったもの。 今だから笑って話が出来るけど、一時期はとても辛かったのよ。 Hくんの誕生日にプレゼントを送って、それで何のリアクションもなかったら 完全に諦めようって決めて…。 その後、一生懸命気持ちを切り替えたの」
「うーん。そうだよねぇ。すみませんねぇ」
そうだよねぇって…本当に分かっているの? でもなぜかしら、憎めないHくんのキャラ。
「今は大丈夫よ。 ある意味、彼と出逢えたのは、Hくんが私を振ってくれたおかげだし。 感謝しなくちゃいけないかもね」
「いや〜、そんな風に言ってくれると肩の荷が下りますよ」
2003年04月19日(土)
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