in love with...
沙夜

■■■
■■
■ 指環

「ね、私、リングが欲しい」

「リング?」

「そう、リング、指環!
プラチナ……とは言わないけど、ホワイトゴールドの。
シンプルで、ピンク色の石か、ダイヤがついているのがいい」

「それは……謝罪のリングとか?」

「ううん。
誠意のリング。愛情のリングよ(笑)
まぁ、お詫びのリングでもなんでもいいんだけど」

「誠意?
愛情、ね……」

「だから、豆ぞうさんが選んで、プレゼントして欲しいの。
おまかせするわ」

そんな会話をしたのが、旅行の2日前。


きっと、『なんで買わなくちゃいけないんだよっ』と、
思ったに違いないけど、彼は何も言わなかった。





旅行の翌日。
こちらでの仕事が終わったら、そのまま帰るつもりだった彼に、
私は「デートしたい」とわがままを言った。
少しだけでも会いたかった。






お茶するかな。
もっとゆっくり出来るのかな。
……それとも、バイバイかしら。

ランチの後、私は助手席でそんなことをぼんやり考えていた。

「指環、見に行こうか」

「え。……いいの?」

この時、指環のことは、全然考えていなかったので驚いた。


2店舗をハシゴして、あれこれ指にはめてみた。
最終的には、私が最初に良いと思ったものに彼も同意して、
それをプレゼントしてもらうことになった。






結局。
こんなことをしてもらっても、彼にしてみたら何の意味もないのだろう。
彼女が欲しいと言ったから、買ってあげた。
指環には、謝罪だの、愛情だの、何の意味合いも込められてはいない。

無理を言ってしまって悪かったと思う反面、
無理を聞いてくれたことが嬉しくもあった。

でも、こんなことで愛情の度合いなんて量れるわけじゃないし、
愛情を縛り付けておくことも出来っこない。

それでも、今の私には意味があり、なにかカタチあるものが必要だった。




2006年07月24日(月)

■■■
■■
■ Everything

胸の奥が時折ヒリヒリと痛む。
なんだかとても久しぶりに味わう、懐かしい感覚。
この感覚は……


+++


急に決まった旅行だった。

神々しい山々。蛍。満天の星空。
湯の花が舞う、かけ流しの露天風呂。

どれもが素晴らしく、癒された。
多分今までで一番安価であった宿なのに、最高に贅沢な気分を味わうことが出来た。


明かりを落とし、露天風呂で二人、しばし夜空を見上げ続けた。
天の川を見るのはこれが二度目だ。
ただ、すごい、という言葉しか出ない。
前日までは雨が降り続いていたというから、この幸運に感謝しなければ。

「あ、また流れ星」
「ずるいな、沙夜ちゃんばっかり」
「でもお願い事は出来なかったわ」

きっと今の私には願い事がありすぎて、ひとつには絞れない。


宇宙を感じながら、このままここで眠れたらどんなに素敵だろう。
名残惜しかったが、いつまでも真っ裸でお風呂に突っ立っている訳にもいかない。


「あー、幸せ。このまま死んでもいい」

部屋に戻り、布団に身体を横たえながら彼が言う。

「そうだね……」

それが可能だったら、どんなにいいだろう。



チェックアウトぎりぎりの時間まで温泉を堪能した。
笑顔でお見送りするおカミさん達に彼は「また、来ます」と声をかけていた。

雪の季節に訪れることが出来たら最高だ。
道のりは恐ろしく大変だろうけど。


+++


帰り道、カーオーディオから流れるMISIAの "Everything" を聴きながら、
押さえ込んでいた感情が涙となって溢れ出した。






2006年07月23日(日)
≪ ≫ 初日 最新 目次 MAIL

※my登録を「告知しない」に変更しました※