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■ 指環
「ね、私、リングが欲しい」
「リング?」
「そう、リング、指環! プラチナ……とは言わないけど、ホワイトゴールドの。 シンプルで、ピンク色の石か、ダイヤがついているのがいい」
「それは……謝罪のリングとか?」
「ううん。 誠意のリング。愛情のリングよ(笑) まぁ、お詫びのリングでもなんでもいいんだけど」
「誠意? 愛情、ね……」
「だから、豆ぞうさんが選んで、プレゼントして欲しいの。 おまかせするわ」
そんな会話をしたのが、旅行の2日前。
きっと、『なんで買わなくちゃいけないんだよっ』と、 思ったに違いないけど、彼は何も言わなかった。
旅行の翌日。 こちらでの仕事が終わったら、そのまま帰るつもりだった彼に、 私は「デートしたい」とわがままを言った。 少しだけでも会いたかった。
お茶するかな。 もっとゆっくり出来るのかな。 ……それとも、バイバイかしら。
ランチの後、私は助手席でそんなことをぼんやり考えていた。
「指環、見に行こうか」
「え。……いいの?」
この時、指環のことは、全然考えていなかったので驚いた。
2店舗をハシゴして、あれこれ指にはめてみた。 最終的には、私が最初に良いと思ったものに彼も同意して、 それをプレゼントしてもらうことになった。
結局。 こんなことをしてもらっても、彼にしてみたら何の意味もないのだろう。 彼女が欲しいと言ったから、買ってあげた。 指環には、謝罪だの、愛情だの、何の意味合いも込められてはいない。
無理を言ってしまって悪かったと思う反面、 無理を聞いてくれたことが嬉しくもあった。
でも、こんなことで愛情の度合いなんて量れるわけじゃないし、 愛情を縛り付けておくことも出来っこない。
それでも、今の私には意味があり、なにかカタチあるものが必要だった。
2006年07月24日(月)
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