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2010年06月30日(水) 順当な結果 ― ベスト8決定

ベスト8が出揃った。決勝トーナメント(決勝T)ラウンド16の結果を振り返っておこう。※(  )内はFIFAランキング。

▽ウルグアイ(18)2 –1韓国(47)、▽アメリカ(14)1 – 2ガーナ(32)、▽ドイツ(6)4 –1イングランド(8)、▽アルゼンチン(7)3−1メキシコ(17)、▽オランダ(4)2–1スロバキア(38) 、▽ブラジル(1)3―0 チリ(15)、▽パラグアイ(30)0−0(PK戦)日本(45)、▽スペイン(2)1−0ポルトガル(3)

(1)結果は概ねFIFAランキングどおり

極めて順当な結果だ。FIFAランキングの下位国が上位国に勝ったケースは、ガーナがアメリカをくだした1試合のみとなった。ラウンド16では、小さな番狂わせが、たった1件(ガーナ対アメリカ戦)起ったにすぎない。

グループリーグでは波乱続きだったW杯南ア大会だが、決勝Tに突入するや、サプライズに乏しくなった。その理由は、決勝Tに勝ち上がってきた国々は、周到な準備をし、コンディションを整えてきたところばかりだからだろう。このことを逆に考えれば、グループリーグで敗退した強豪国は、大きな問題を抱えていたということになる。問題の深刻さが、ベスト16入りを阻んだのだ。たとえば、前回優勝国イタリアは、前回優勝メンバーに固執し、新戦力を包含しなかった。選手選考に大きな誤りを犯した。準優勝国フランスは、代表監督がチームをマネジメントできなかった。ホームともいわれたブラックアフリア勢は、チームづくり、組織づくりに失敗した。とりわけ、スーパースターをチーム内で機能させる仕組みをつくれなかった。

(2)決勝は南米の2カ国か

同大陸同士のチリがブラジルに負けたものの、ウルグアイ、パラグアイがアジアの韓国・日本に勝ったので、南米がベスト4を独占する可能性まで生じた。ここまでくれば、決定戦はブラジル対アルゼンチンの南米対決になる可能性が高いし、そうなってもらいたい。

奔放なマラドーナか、規律のドゥンガか。もちろん、準々決勝でオランダがブラジルの、そして、ドイツがアルゼンチンの足もとをすくえば、欧州勢の土壇場での巻き返しも可能となる。

(3)得点に絡む誤審防止に新テクノロジーの導入を

ラウンド16では、▽ドイツ対イングランド、▽アルゼンチン対メキシコの2つの試合で、重大な局面における、誤審があったことはご存知のとおりだ。前者では、1−2でリードされたイングランドが2−2に追いつくはずの得点だっただけに、イングランドには不満が残る。サッカーでは2−0は危険な得点差であることはよく知られている。ドイツが早い時間に2−0でリードし、イングランドが1点を返した。この場合、次の1点をどちらが奪うかで試合は決まる。2−0から2−1になった途端、リードしている側に大きなプレッシャーがかかり、2−2になると形勢は逆転すると。この論法に従えば、誤審がなければ、イングランドに勢いが生じ、形勢を逆転させた可能性を否定できない。

後者の場合は、もっとも重要な先取点に係る誤審だっただけに、メキシコにとって大きな痛手となった。グループリーグでは勢いのあったアルゼンチンだが、試合巧者のメキシコが序盤を制していた。メキシコはメッシを徹底マーク、強烈なタックルで何度か倒した(削った?)。メキシコの作戦は理に適っている。アルゼンチンにやりたい放題やらせるのではなく、序盤にイエロー覚悟でメッシの自由を奪う作戦は、これからアルゼンチンと対戦するチームの参考となる。

誤審がなくとも結果は変わらないという見方もあるだろうが、得点に絡むシーンだっただけに、残念だ。得点シーンについては、カメラ判定の導入が必要だと思う。FIFAの決断が待たれる。誤審をした2人の審判がW杯で今後笛をふくことはないだろうし、あってはならない。2人が誤審の不名誉をこの先ずっと、負い続けるのも悲劇ではないか。

(4)日本は健闘したが南米との差は大きい

パラグアイ対日本の試合については、総括が難しい内容だった。お互いがお互いの良いところを消しあった、という見方は誉めすぎだと思われる。攻撃力、得点能力を欠いた2つのチームが、ともに守備的に、120分間頑張ったといったところだろう。ボクシングに喩えれば、脚を使ったボクサータイプ同士が接近戦を嫌ってガードを固め、ジャブを出し合うものの、踏み込んだパンチを放てないまま最終ラウンドのゴングが鳴ってしまった、といったところか。

本大会を通じて、日本の健闘を讃えるとしたら、120分間走り続ける体力・気力を証明したことだ。ドイツ大会では、後半足が止まり、ジャンプ力が落ちたけれど、本大会ではそんなことはなかった。明らかに持久力が向上していた。岡田ジャパンがジーコジャパンよりも優れていたのは、�.灰鵐妊�ションづくりの成功、�▲侫�ジカルの強化に成功、��チームの結束力・組織力の醸成に成功、の3点だろう。それが守備力の向上につながった。

(5)日本はもっと上質のサッカーを目指せ

岡田監督からすれば、南ア大会のベスト16入りは、「コロンブスの卵」なのだろう。「ああいう戦い方なら、負けない」という批判は無意味だし、卵を立てた結果については、コメントしない。

しかし、筆者は岡田ジャパンの南ア大会の成功を評価しない。民放TVのW杯中継で言われるように、「強い者が勝つ」のではなく、「勝ったほうが強い」というのが勝負の世界の鉄則だとは思うものの、[勝つため=強くなるため]のロジックを放棄してもらっては困る。

世界のサッカーの方向性は、ビエルサ監督が示したチリのような攻撃的スタイルにあるのではないか。岡田ジャパンの戦術であれば、日本は「よくて」ベスト16止まりだろう。それはそれで立派な成績なのだろうけれど、日本代表に投下される資本、ヒト、そして、国民的バックアップを併せ考えるならば、日本はもっと“上質”のサッカーを志さなければいけない。

「ベスト16」「ベスト8」という結果ではない。「強い攻撃」を迎え撃つための「強い守備」であり、点を取れる選手の育成であり、より複雑で多様なチーム戦術の構築である。日本の課題が見えている。



2010年06月26日(土) グループリーグを総括する

(1)日本、予選リーグ突破――筆者の予想外れる

W杯グループリーグE組、日本はカメルーンには勝てる可能性があると予言した筆者だが、デンマークには負けると確信していた。ところが、結果は3−1というこれまた想定外のスコアで日本がデンマークに勝ち、決勝トーナメント(決勝T)に進んだ。

デンマークといえば、欧州予選を無敗で突破した強豪。その中には、本大会で北朝鮮に7−0で大勝したポルトガルから奪った勝利も含まれる。E組では、ご存知のとおり、初戦、オランダに0−2で負け、第2戦、カメルーンに2−1で勝っている。そんなデンマークを撃破して、岡田ジャパンは海外開催W杯で初の決勝トーナメント進出を果たした。

本大会前、日本のトレーニングマッチ(セルビア〜韓国〜イングランド〜コートジボワール)を見る限り、日本の予選突破を予想することは困難だった。日本代表に何が起きたのか。

決勝Tに進めた主因は、初戦のカメルーンに、なにはともあれ、勝ったことだ。日本があの試合に勝てた内部的要因は、本田のワントップ及び阿部のアンカー起用という配置換え、GK川島の先発起用ということになる。戦術的には、前からプレスをかけ相手ボールを奪う“積極的守備”を放棄し、自陣に守備ブロックを形成する戦術を徹底したことによる。

そのことと並行してだが、第二は、岡田監督が本田と“心中”を決めたことだ。カメルーン戦で本田がゴールを決めて勝利し、それが、決戦のデンマーク戦にも引き継がれ、本田がフリーキックからのゴール、直後の遠藤のフリーキックの成功、さらに、デンマークの焦りを誘い、心理的に追い込んで、岡崎の3点目に結びついた。本田こそが「ラッキーボーイ」だ。

カメルーン戦勝利の外部要因は、前に書いたとおりなので詳述は避けるが、おそらく、チームの内紛だろう。


(2)欧州勢の不調

本大会予選リーグでは、欧州勢――フランス(A組)、ギリシア(B組)、スロベニア(C組)、セルビア(D組)、デンマーク(E組)、イタリア(F組)、スイス(H組)の7ヵ国が敗退した。前回優勝国(イタリア)、同準優勝国(フランス)がともにグループ予選で敗退したわけで、南ア大会はまさに、意外性の大会だった。また、オランダ(E組)、ポルトガル(G組)を除く欧州勢――イングランド(C組)、ドイツ(D組)、スロバキア(F組)、スペイン(H組)も、予選突破を果たしたものの、かなり苦戦した。

(3)ホーム、アフリカ勢の不振

アフリカ勢もガーナ以外の予選敗退が決定した。アフリカで開催されるW杯だから、アフリカチームはほぼホームだという見方もあったが、筆者はアフリカ勢の活躍はないと予言しておいたが、そのとおりとなった。ガーナがどこまで勝ち上がるか。

(4)南北アメリカ大陸勢の好調

ウルグアイ(A組)、メキシコ(同)、アルゼンチン(B組)、米国(C組)、パラグアイ(F組)、ブラジル(G組)、チリ(H組)の南北アメリカ大陸勢が勝ち上がっている。参加国中、予選敗退したのはホンジュラスだけとなり、南米勢に限れば、突破率は100%になる。いずれにしても、北中南米勢は調子がいい。

タレント兼サッカー評論家で、パラグアイ・リーグでプレー経験をもつ武田修宏氏は、欧州勢の苦戦、南米勢の好調の傾向について、「南米勢は環境適応能力が高い」と某TV番組で分析している。適正な指摘だと思う。W杯南ア大会は、試合が開催されるそれぞれの地域の自然環境(温度差、標高差等)に著しい差異がある。広大な南北アメリカ大陸も緯度の差が大きく、開催都市も低地、高地さまざまである。また、移動距離も長い。北中米、南米ともに、南アに劣らず過酷な自然環境にある。そんな風土で予選等の試合を経験している北中南米勢は、狭くて平坦な欧州で試合をする欧州勢よりも環境適応力は高くなる。

(5)アジア勢も健闘

アジア勢では、北朝鮮(G組)、オーストラリア(D組)が敗退し、韓国(B組)、日本(E組)が突破を果たしている。オーストラリアはドイツに、また、北朝鮮はポルトガルに、ともに大敗したが、それはアジア勢の戦術的未熟さを体現したものといえる。オーストラリアは2位ガーナと勝ち点差で並んでいるわけで、W杯の戦い方が課題として残った。

(6)地域別の突破率

グループリーグ突破率を地域別参加国数でみると、欧州は13カ国中6カ国(46%)、北中南米(アジアとのプレーオフで勝ちあがったウルグアイを含む)は8カ国中7カ国(88%)、南米に限れば100%だ。アジア・オセアニアは5カ国中2カ国(40%)、アフリカは6カ国中1カ国(17%)。開催国の南アも敗退している。強いフィジカル、高い個人技、優れた身体能力といわれるアフリカ勢だが、とりわけブラックアフリカ諸国においては、ナショナルチームの強化方法に大きな課題を残している。戦術、組織、規律といった面を鍛錬しないと、W杯では勝てない。

(7)その他――いまのところ新星の登場なし

データはとっていないものの、シュートがバー、ポストに当たるシーンがやたら目に付いた。GKのハンブル、ハンドの反則、退場者も多いような気がするが・・・この当たりは、公式データの発表を待ちたい。

グループリーグ48試合消化した時点だが、衝撃的なニュースターは不在。プロのスカウトはだれに注目しているのだろうか。強いてあげれば、パク チュヨン(韓国)、本田圭佑(日本)、メスト エジル(ドイツ)か。3人ともちょっと、スケールが小さいかも。

グループリーグ全試合を通じて、最も印象に残った選手を1人選べば、米国のランドン ドノバン。運動量、闘争心、リーダーシップ、チームへの献身・・・地味だけど尊敬したい選手の1人。チームでは、マルセロ ビエルサ率いるチリ。日本の次期代表監督は、ビエルサに決まり。



2010年06月25日(金) ギャー、イタリアが予選敗退だ

筆者が「優勝候補」と予想したイタリアがグループリーグで敗退してしまった。グループFは、イタリア、パラグアイの2強、スロバキア、ニュージーランドの2弱で決まりだと思っていた。イタリアの敗退を予想した人は、そうたくさんはいないと思う。前回決勝進出の2国(イタリア・フランス)が、そろってグループリーグで敗退した大会というのは、今回の南アが初めてらしい。そういう意味では、南ア大会は波乱のW杯なのかもしれない。

イタリアの敗因は、守護神GKジャンルイジ・ブッフォン、攻撃の中心選手アンドレア・ピルロ(MF)の故障、いわば飛車角落ち、というチーム状態にあったというのが常識的見方かもしれない。だが、イタリアはそんなとき、新星の誕生があって、危機を乗り切ってきたように思う。たとえば、1990年イタリアW杯では、不調のジャンルカ・ヴィアリ(FW)に代わって出場したサルヴァトーレ・スキラッチ(同)が、7試合で6得点マークという大活躍で、イタリアを3位へ導いた。

今回は決勝トーナメント進出をかけたスロバキア戦では守備が崩壊し3失点を許した。2点を返して意地を見せたが、イタリア本来の試合展開ではなかった。イタリアにとって、グループリーグ最大の誤算は、初戦のパラグアイとの引分は仕方がないとしても、2節の対戦相手であるアマチュアのニュージーランドから得点を奪えず、0−0で引分けたことだろう。この引分が致命傷だった。油断、驕り、集中力の欠如、調整の失敗・・・といった部分が敗退の主因だと思う。

もちろん、強豪イタリアから勝ち点1を奪ったニュージーランド、そして、サバイバルマッチに勝利したスロバキアの2国の健闘を讃えることを忘れてはいけない。とりわけ、スロバキアはW杯の真剣勝負で、ジャイアントキリングをやってみせたのだから。



2010年06月23日(水) フランスはW杯南ア大会を汚した

前回準優勝国・フランスがこれほど酷いとは思わなかった。W杯開催中に監督と選手の内紛が表面化。監督批判をしたとされるエースのアネルカが最終戦を前にして代表追放処分を受け、強制送還となった。その翌日、選手は練習をボイコット。最終戦(南アフリカ戦)、キャプテンのエブラが最後までベンチ。まさに異常事態で、もちろん最終戦も負けた。日本代表に喩えれば、エースの本田が追放され、長谷部がベンチというに等しい。

フランス代表のごたごたは、ホスト国である南アフリカに対して非礼であるばかりか、大会そのものに傷をつけた。フランスの最大の罪は、プロフェッショナルが全力を尽くさずに自壊し、全世界のサッカーファンを失望させたこと。フランスサッカー協会はそのことを全世界のサッカーファンに謝罪すべきだし、自らを処分すべきなのだ。チームをマネジメントできない者を監督にした責任は重い。

そればかりではない。欧州予選のアイルランドとのプレーオフを思い出してほしい。あの試合、フランスのアンリがハンドで決勝点をアシスト。主審はハンドを見逃し、アイルランドの抗議は受け入れられなかった。それまで優勢だったアイルランドは涙を飲んだ。

フランスがアンリの犯した罪を償うためには、W杯本戦で、最低限優勝に絡む活躍をすること以外にはなかったはずだ。ハンドの反則は取り消せないものの、フランスが本戦で勝ちあがることにより、その実力をアイルランド代表及びアイルランドサポーターに対して傍証する以外になかったはずだ。フランスはアイルランドに「ハンド」で勝ったのではない、実力で勝ったのだと。

アンリの「汚れた手」で欧州予選を通過したフランスに課せられた義務は、結果はともかくとして、一戦一戦の勝利に向け、最善の努力を惜しまないことだった。アンリを含めたフランス代表選手はただただ、全力でプレーすることだった。そうすることにより、アイルランド戦の不正勝利の罪は償われるのである。

ところが、フランスは勝利のための準備を怠った。グループリーグ初戦のウルグアイ戦に引き分け、2節のメキシコに負けたところで、選手と監督の対立が一気に表面化したようだ。もちろん、W杯開催前から、フランスについては、代表監督ドメネクの評価をめぐっていろいろと取沙汰されていた。しかし、前回W杯準優勝の実績をもつドメネクを外す決断がくだせなかった。この判断が誤りだった。

FIFAランキング9位、1998年W杯優勝(自国開催)、2006年W杯(ドイツ開催)準優勝と、フランスは輝かしい成績を誇るサッカー強国の1つ。代表には、欧州ビッグクラブで活躍する才能のある選手を抱えている。選手個々の実力を比較すれば、ウルグアイ、メキシコを下回るはずがない。だが、サッカーはいくら「個」が優れていても、勝てるとは限らない。フランスのグループリーグ敗退から学ぶべきは、「個」よりも、「チームの結束力」の大切さである。



2010年06月20日(日) 退屈な試合―日本対オランダ

W杯南アフリカ大会グループリーグE組、日本vsオランダは、予想どおり、オランダが勝った。試合はスペクタクル性に乏しく、退屈だった。

オランダの決勝点を呼び込んだのは、闘莉王のクリアミスから。本番前の練習試合(イングランド、コートジボワール)で闘莉王はオウンゴールを重ねていた。彼はクリアする方向と相手選手の位置関係がイメージされていない。その欠点は本番までに修正されていなかった。

同じく練習試合からカメルーン戦まで、評判の良かったGK川島も、シュートコースと正対する基本動作をとることができず、スナイデルのシュートの弾道を後方にはじくという、GKにあってはならない最悪の処理をしてしまった。ミスが重なった失点であることから、悔やまれる。しかも、オランダの調子がいまひとつで、勝ち点1が取れた試合だった。日本のDF陣の甘さが目立った。

退屈だった日本vsオランダのE組裏カード、カメルーンvsデンマークは、お互い負ければグループリーグ敗退が決まるだけに、エキサイティングな試合となった。結果はデンマークが2−1で逆転勝ちしたが、カメルーンの出来は日本戦よりも数倍がよかった。その主因は先発の選手起用にあった。ルグエン監督は、日本戦で先発したMFマクン、マティブ、FWチュポモティングを外して、A・ソング、ジェレミ、エマナを入れた。筆者が想像したベストメンバーに近い(GKカメニが外れたが)。とりわけ、A・ソングの存在の大きさが際立った。彼の加入により、カメルーンの動きは日本戦に比べて見違えるようによくなり、躍動性が生じた。いったいなぜ、日本戦でA・ソングが出なかったのかは不明なままである。また、ワントップに入ったエトーが持ち前の攻撃性を取り戻し、デンマークゴールを脅かした。本領発揮に近づいた。この形で初戦の日本戦に臨めば、日本はもっと、苦戦したことだろう。

日本のグループリーグ最終戦の相手デンマークは、言うまでもなく、日本に負ければグループリーグ敗退が決まる。彼らはこれまでの2者――内紛を抱えたカメルーンとも、気合の入っていないオランダとも異なる。しかも、彼らのストロングポイントは、ファミリー(結束力)である。チーム力は日本に劣らない。

日本にとって、無条件で勝ちに来るデンマークとの戦いは、日本と世界の距離を計る絶好の機会となるだろう。



2010年06月17日(木) W杯、興奮はまだまだ続く

W杯南アフリカ(南ア)大会に出場するすべての代表チームが試合をした。グループリーグのサプライズとしては、B組の韓国2−ギリシャ0、C組のイングランド1−アメリカ1、D組のセルビア0−ガーナ1、E組の日本1−カメルーン0、H組のスペイン0−スイス1が挙げられるが、なんといっても、スイスが優勝候補といわれるスペインに勝ったことだろう。筆者の予想からすると、この組はスペイン、チリを予選通過国としたので、予想が外れる可能性が高まった。

印象的な国は、第一にチリ。ビエルサの思想が選手に浸透し、早くて運動量の多い攻撃的サッカーは魅力満点。こういうチームこそ決勝トーナメント(決勝T)に勝ちあがってほしい。チリ対スペインの対戦は、両者が噛み合えば、大会屈指の好試合となることが期待できる。

筆者の予想が危なくなったのがA組。筆者は、フランス・南アを決勝T進出と予想していたのだが、開催国の南アがウルグアイに0−3と大敗してしまった。南アがフランスに勝てば、決勝T進出はウルグアイ・南アとなる可能性が高まるし、フランスが南アに勝てば、南アの敗退が決まる。いずれにしても、フランス・南アがともに決勝Tに進む可能性はないに等しい。

グループ内のチーム構成をみると、いわゆる“3強1弱”が目立つ。まず、A組がメキシコ・ウルグアイ・フランスの3強と、南アの1弱に分かれる(但し、ホームなので予選リーグは通過と予想)。D組はドイツ・セルビア・ガーナが3強、オーストラリアが1弱。E組は、オランダ・デンマーク・カメルーンが3強、日本が1弱。1弱の日本がカメルーンに勝ったからいうわけではないが、カメルーンの調子が悪いので、この組は“2強2弱”の様相を呈してきている。G組が典型的な3強1弱で、ブラジル・コートジボワール・ポルトガルの3強と、北朝鮮の1弱に分かれる。H組はスペイン・スイス・チリが3強でホンジュラスが1弱。

“2強2弱”がC組。イングランド・アメリカが2強、アルジェリア・スロベニアが2弱。F組はイタリア・パラグアイが2強、ニュージーランド・スロバキアが2弱。

大混戦が予想されるのがB組。アルゼンチン・ナイジェリア・韓国・ギリシャの力は拮抗している。下馬評ではアルゼンチンが優勝候補に挙げられ評価が高いが、南米予選の結果は1位ブラジル、2位チリ、3位パラグアイで、アルゼンチンは4位。本大会出場国のうち、アルゼンチンより下位の南米代表はウルグアイ(5位)のみ。ウルグアイは、北中米・カリブ地区4位のコスタリカとのプレーオフに勝って予選通過した。

“3強1弱”で編成されたグループでは、決勝Tに進むチームを予想することが難しい。その一方、最も力が拮抗していると書いたB組で、本日、アルゼンチンが韓国に勝つと、アルゼンチンは大会最初の予選通過国となる可能性もある。意外な展開だ。というわけで、見所満載、まだまだ、W杯の楽しみが続く。



2010年06月15日(火) 「勝ち」は「勝ち」

◎予言どおり、日本が勝った

6月4日付け当コラム(「調整遅れのカメルーン――日本にチャンスあり」)にて、日本がカメルーンに勝つ可能性が高いことは、予言しておいた。結果はそのとおりになったわけで、だから、筆者は日本の勝利にあまり、驚いていない。サッカーでは、どんなに「個」が強かろうと、高い「身体能力」をもっていようと、それだけで試合に勝つことは難しい。組織、連係、戦略、戦術、コミュニケーション等の熟成がなければ、勝利を得ることは難しい。

◎カメルーンに何があったのか

カメルーン代表に何があったのかはわからない。ボーナス闘争の調整が不調に終わった、ルグェン監督の選手起用に納得しない選手が多かった??? 試合を見た人ならば、カメルーン代表チームの状態が尋常でないことを感じただろう。この件については諸説あるものの、真相は伝わらない。とにかく、W杯グループリーグの日本戦、カメニ(GK)、エンゲモ(MF)、A・ソング(MF)は出なかった。一般には、起用されなかった選手は調子が悪いから、ですむのだが、カメルーンの場合はそう断言できない。

◎何があろうと「勝ち」は「勝ち」

何はともあれ、「勝ち」は「勝ち」。相手のチームの調整が悪かろうが、選手と監督が不和だろうが、試合に勝てばいい。W杯の公式記録には、日本が強豪・カメルーンに1−0で勝ったこと、そして、南アフリカでジャイアントキリング(番狂わせ)を起こしたことが残る。

日本側から見れば、海外W杯初勝利(勝ち点3)、日本人代表監督の初勝利という輝かしい記録が残る。岡田ジャパン(岡田代表監督と日本代表選手)に“幸あれ”。

◎カメルーンの敗因

立ち上がりは不気味なほど、静かだった。カメルーン選手は、全員が慎重かつ用心深い様子で、試合を恐れているかのようだった。そして、実際、彼らはW杯を恐れていた。

右サイドに入ったエトーが勝利のために貢献した働きをしたのか。否。少なくとも筆者には彼がハードワークしたようには見えなかった。彼の動きは“限定的”だった。当該コラムで何度も書いたとおり、筆者は、W杯におけるブラック・アフリカ勢の力量を過小にしか評価してこなかった。その代表がカメルーンで、日本戦がそのことを証明した。カメルーンは、チームとしてはまったく、熟成されていないまま。終盤のパワープレーに迫力は感じたけれど、あれが“カメルーンのサッカー”ならば、この国のサッカーは終わっている。

カメルーンの敗因は明白である。カメルーンが戦うための組織構築に失敗しているとしても、中盤のキープレーヤーであるA・ソング(アーセナル)が出ていれば、試合展開はかなり異なったものとなっただろう。A・ソングがいれば、エトーは自由にポジションを変え、ゴールに向かう回数を増やしただろう。エトーは「使われる」選手であって、「使う」タイプではない。彼は、ゲームを制御する資質を持っていない。

◎日本はまだ、何事もなし得ていない

日本のスポーツマスコミは、日本がグループリーグ初戦に勝利しただけで大騒ぎだが、これで終わったわけではない。日本がオランダ、デンマークに負ければ、勝ち点3で敗退する。

筆者の予想では、オランダは日本、カメルーンに勝って勝ち点9で1位通過する。デンマークはカメルーン、日本に勝って、勝ち点を6に伸ばして2位通過する。つまり、日本はグループリーグ3位で終わる。いまのところ、オランダ、デンマークからは、カメルーンほどの“否定的情報”が流れてこないから、そう思う。もちろん、そうなる可能性が高いという意味だが。



2010年06月14日(月) 自滅したセルビア

合理的なものとは、数ある体系の中の1つにすぎない――フランスの哲学者ロラン・バルトは『表徴の帝国』(バルトが日本を訪れた際の印象をまとめた書)の中にそう記した。

プロの優秀なサッカー選手が、凡人がまったく理解に苦しむプレーをしてしまうことがあるものだ。だれも、本人さえもが、説明できないものだ。珍プレー、凡プレーと、笑って済まされるうちはいいが、W杯の大事な試合においても、否、大事な試合だからこそ、そのようなプレーが出てくるとも思えるのだ。

大観衆の声援とブーイング、国を背負う自意識、相手選手のプレッシャー・・・正常な判断を狂わせる要素が満ち満ちていることは理解できる。だが、わずか数秒の「誤り」を除けば、概ね90分間は正常な、つまり、合理的な判断の下でプレーをしているのだ。

東欧のブラジルと異名をとった旧ユーゴスラビア。旧ユーゴを構成していたセルビアは、ユーゴ崩壊後の内乱の影響により、長らくサッカーの国際舞台から遠ざけられていた。そのセルビアが、W杯の晴れ舞台で自滅した。勝利したガーナを貶めるつもりはないが、セルビアが自ら敗北を招き寄せたようにさえ見えた。アフリカの強豪・ガーナが勝利に値する試合をしたのかどうか判断に迷う。ガーナの勝利、すなわち、セルビアの敗北について、うまく説明することは難しい。

セルビアは、後半29分、DFルコビッチが2度目の警告で退場となった。しかし、10人になったセルビアが逆に攻勢に出て、ガーナが防戦一方にまわる時間帯もあった。ところが後半38分、ガーナのアッピアからの左クロスに対し、セルビアのクズマノビッチがペナルティーエリア内でハンドの反則。ガーナのジャンが冷静に決めて、決勝点とした。
 
客観的に見れば、手を出す場面でないことは明白だ。欧州予選において、アンリ(フランス)がアイルランドとのプレーオフで行ったハンドとは異なる。もちろん、マラドーナの「神の手」とも異なる。アンリもマラドーナも攻撃中、すなわち、得点を取りにいく状況における、ハンドだった。一発レッドの可能性もあるが、現行の裁定基準ではイエロー(警告)にとどまっている。しかし、クズマノビッチの場合は、ペナルティーエリア内。DFがそこで反則をすれば無条件でPKを取られてしまう。

なぜハンドなのか、推測しにくい。あの場面、クロスに反応したガーナの選手の姿がクズマノビッチの近くに確認できた。おそらく、クズマノビッチは、ボールに触らなければ決定機をつくられると思った可能性が高い。しかし、前出のとおり、ペナルティーエリア内のことだ。ボールを手で制御すればPKだ。審判が見ていないと判断した?いくら考えても、ハンドの場面ではない。しかも、自軍は一人少ない・・・

結果論とは、合理的な推論の積み重ねだ。われわれが絶対的前提だと確信する合理性が数ある体系のうちの1つなのだとしたら、その社会や生活はどうなるのだろう。そう危惧するのは、近代人のポーズにすぎない。われわれは、自身が“別の体系”を選ぶことを十分知りつくしている。サッカーにおいても、社会においても。

われわれは、クズマノビッチを責められない。なぜならば、彼が自分であることを理解しているからだ。それゆえに、このようなかたちの敗戦を受け入れられるし、また、受け入れなければならない。これもまた、最近よく使われる表現だが、「サッカーの一部」なのだ。



2010年06月13日(日) W杯始まる

W杯南アフリカ大会が始まった。6月13日の午前の段階で、グループリーグA組(南アフリカ1−メキシコ1、フランス0−ウルグアイ0)、B組(韓国2−ギリシャ0、アルゼンチン1−ナイジェリア0)、C組(イングランド1−アメリカ1)の5試合が終了している。

たかだか5試合をTV観戦しただけで、大会の全体像を云々することはできないけれど、開催前に予想していた事項について、ああ、やはりそういうものかな・・・と確認できたものを、印象としてまとめておこう。

◎W杯は“最高”ではない

“最高”という言語が何を意味するかという前提の定義が必要だけれど、ここで用いるのは、サッカーの完成度という観点だ。あるTV番組のインタビューでメッシ(アルゼンチン代表)が、代表チームの難しさを説明していた。かつて、メッシは所属クラブにおけるほどの活躍が代表では出来なかったため、アルゼンチン国民から厳しい批判を受けたことがあった。彼はそのことに触れて、「代表チームの調整期間は1月ちょっと、難しいことはできない」というような意味の発言をしていた。

欧州リーグは5月中旬(セリエA最終節=5月16日、イングランド=5月9日、スペイン=5月16日)に概ね終了し、その直後、UEFAチャンピオンズリーグのファイナルがある。ファイナルに出場した選手(今年の場合は5月22日に開催、バイエルンとインテルが出場した)が代表チームに加わることができるのは5月下旬、しかも、肉体的・精神的な疲労を抱えたままである。欧州各国リーグに所属する各国の代表選手は、抜け殻状態とは言わないまでも、精神的・肉体的には万全とはいえない。なかには、満身創痍に近いものもいる。

アフリカ、中南米、アジアを問わず、力のある選手はみな欧州各国リーグに集まるから、北朝鮮を除く出場国が、欧州各国リーグの日程の影響をこうむっていることになる。つまり、W杯という大会は、調整期間1月弱という急造チームが行うサッカー大会だということだ。チーム戦略・戦術並びに連携については、とても最高を極められるような“大会”ではない。世界サッカーにおける最高の試合を求めるならば、UEFAチャンピオンズリーグもしくはリベルタドーレス杯(南米クラブ戦)のファイナルを見るか、世界クラブ王者決定戦を見たほうがいい。

このことを裏返すと、W杯で勝利するためには、1月弱でどれだけ強いチームをつくることができるのか――ということになる。

◎ホームの利とアフリカ勢の弱点

開幕試合では、ホスト国・南アフリカがメキシコ相手に惜しい引分で、勝ち点2を失ったものの、フランス、ウルグアイの調子がいまひとつのようなので、ベスト16入りの可能性は高まったように思う。筆者の予想は当たりそうだ。

なお、筆者は南アフリカを除くアフリカ勢について、すべてグループリーグ敗退と予想した。そのような意味で、ナイジェリアに注目していたのだが、アルゼンチンに0−1で負けた。強豪アルゼンチン相手だから、結果は仕方がないという見方もあるだろうが、ナイジェリアは攻守の連携が見られないし、守備のマークの確認も甘く、内容が悪かった。韓国の組織的速攻は通じるだろう。

◎優勝候補の調子をどう見るか

前出のとおりアルゼンチンはナイジェリアに勝って順当なスタートを切ったものの、いまのままのチーム状態ならば、優勝は難しい。

イングランドはGKのハンブルという、予想外の失点で追いつかれ勝ち点2を失った。堅守米国から1点を奪った点は評価できるが、米国にかなりてこずったという見方のほうが適正だろう。イングランドはベスト4どまりという筆者の予想も当たる可能性が高まった。

攻撃のタレント揃いのフランスも、退場者を出したウルグアイから得点を奪えなかった。欧州予選プレーオフで、アンリのハンドによってW杯出場を決めたフランスである。こういうチームには優勝をしてほしくない。



2010年06月06日(日) W杯優勝は、ずばりイタリア

サッカーW杯南アフリカ大会は今月11日に開催する。ということは残り1週間を切った。出場国は練習試合、強化試合を概ね切り上げ、現地入り。最終調整に入ったようだ。そこで、ずばり、今回の優勝国を予想してみよう。

まず、グループリーグの組合せを確認する。
(グループA)
南アフリカ・メキシコ・ウルグアイ・フランス
(グループB)
アルゼンチン・ナイジェリア・韓国・ギリシャ
(グループC)
イングランド・アメリカ・アルジェリア・スロベニア
(グループD)
ドイツ・オーストラリア・セルビア・ガーナ
(グループE)
オランダ・デンマーク・日本・カメルーン
(グループF)
イタリア・パラグアイ・ニュージーランド・スロバキア
(グループG)
ブラジル・北朝鮮・コートジボワール・ポルトガル
(グループH)
スペイン・スイス・ホンジュラス・チリ

グループリーグの結果は以下の通り。
(グループA)1位:フランス、2位:南アフリカ
(グループB)1位:アルゼンチン、2位:韓国
(グループC)1位:イングランド、2位:アメリカ
(グループD)1位:ドイツ、2位:セルビア
(グループE)1位;オランダ、2位:デンマーク
(グループF)1位:イタリア、2位パラグアイ
(グループG)1位:ブラジル、2位:ポルトガル
(グループH)1位:スペイン、2位:チリ

以上がベスト16だ。

グループリーグにおけるサプライズは、�.曄璽狷逎▲侫螢�の2位通過(グループA)、�▲▲献∪�韓国の2位通過(グループB)、�C両�ピエルサ率いるチリの2位通過(グループH)、である。準ホームとも考えられるブラック・アフリカ勢のナイジェリア(グループB)、ガーナ(グループD)、カメルーン(グループE)、コートジボワール(グループG)については、個々の選手の身体能力、パワー等は群を抜いているものの、ナショナルチームとしての完成度という観点から評価を落とし、ベスト16入りはないと見た。

決勝トーナメントは2組に分かれる。まず、第1グループ1は、グループAの1位(以下「GAの1」と略記)フランスとGBの2の韓国が戦ってフランスが勝ち残る。以下、GCの1・イングランドとGDの2・セルビアはイングランド、GEの1・オランダとGFの2・パラグアイはオランダ、GGの1・ブラジルとGHの2・チリはブラジル。

第2グループは、GBの1・アルゼンチンとGAの2・南アフリカはアルゼンチン、GDの1・ドイツとGCの2・アメリカはドイツ、GFの1・イタリアとGEの2・デンマークはイタリア、GHの1・スペインとGGの2・ポルトガルはスペイン、――が勝つ。

ベスト8(準々決勝)は、第1グループがフランス⇔イングランド、オランダ⇔ブラジルの4カ国、第2グループが、アルゼンチン⇔ドイツ、イタリア⇔スペインの4カ国の合計8ヶ国の組合せとなり、第1グループではイングランドがフランスに勝ち、ブラジルがオランダに勝つ。第2グループでは、ドイツがアルゼンチンに勝ち、イタリアがスペインに勝つ。

ベスト4(準決勝)では、ブラジルがイングランドに勝ち、イタリアがドイツに勝つ。

決勝では、イタリアがブラジルに勝ってW杯優勝――と、筆者は予想する。

ベスト8以降の戦い、すなわち、フランス⇔イングランド、オランダ⇔ブラジル、アルゼンチン⇔ドイツ、イタリア⇔スペインの対決は、どちらが勝ってもおかしくない組合せばかり。“勝負は時の運”の諺の通り、予想できるものではない。たとえば、オランダとブラジル、イタリアとスペインは決勝戦にも値する。しかし、組合せの妙で先に当たってしまうにすぎない。

なお、サプライズは少ないと考えたグループリーグでも、前出のブラック・アフリカ勢、メキシコ、ギリシャが勝ち残る可能性もおおいに起り得る。



2010年06月05日(土) 内容乏しい練習試合

どちらのチームからも内容を感じさせない、凡庸な練習試合だった。日本は開始13分、セットプレーからイングランド戦に続く闘莉王のオウンゴール(OG)で失点。その直後、コートジボワールのスーパースター・ドログバが闘莉王と接触して負傷退場。右腕骨折の重傷らしい。チェルシーではおなじみの彼の動きだが、代表チームではどんな動きをするのか――期待が大きかっただけに誠に残念。ドログバの予想外の負傷交代で、興味半減といったところ。

■「死のグループ」に属する両国

W杯グループリーグE組の日本からすれば、相手のコートジボワールは仮想・カメルーンに当たり、G組のコートジボワールからすれば、日本は仮想・北朝鮮に当たる。お互い、本番前に、アジアとアフリカのサッカーの質の違いを確認することが第一義であることは言うまでもない。

ちなみに、E組とG組はよく似た構成になっている。まず、グループ内1位通過、すなわち最強国はE組がオランダ、G組がブラジルと考えられる。どちらも優勝候補の呼び声が高い。2位候補はどちらも欧州勢だと考えられ、E組がデンマーク、G組はポルトガルとなろう。FIFAランキングではポルトガルのほうがデンマークより上だが、欧州予選では両国は同じグループに属していて、デンマークがポルトガルをおさえて1位通過した。ポルトガルはどうにか2位を確保し、プレーオフにまわってW杯行きを決めた。その意味で、両国は欧州予選の因縁を引きずっている。

残念ながら予選敗退となる可能性が高いのが、E組のカメルーン、G組のコートジボワールのアフリカの強豪。そして、グループ最下位候補がアジア勢の日本(E組)と北朝鮮(G組)であろう。E組、G組はともに強豪国揃いの、いわゆる「死のグループ」。日本が南アフリカ大会の目標として掲げるには、せいぜい、ベスト16がいいところだと思うのだが・・・

■コートジボワールのほうがカメルーンよりチーム状態は良い

結果は0−2でコートジボワールが日本に勝った。この時期の練習試合であるから、結果も内容もあれこれいうに及ばない。両国とも、アフリカ⇔アジア、双方のサッカーの感触を実感するという最低限の目標は達成したとは思うものの、コートジボワールにしてみれば、エースのドログバのケガは予想外であろう。高すぎる代償である。

先般、ポルトガルが仮想・コートジボワールとして練習相手に選んだカメルーン――日本の本番の対戦相手――をコートジボワールと比較すると、守備の完成度という面で、コートジボワールのほうが上である。現段階では、日本の対戦相手・カメルーンよりも、コートジボワールのほうがいいサッカーをしている。両者に共通するのが組織力の弱さと、個々のプレーヤーの力量の高さ。ブラック・アフリカ勢に対する一般的評価、すなわち、組織力は劣るが、個の力は強い――に誤りはない。

コートジボワールの場合、現代表監督のエリクソンが監督に就任したのがおよそ2ヶ月前。規律や組織をチームに浸透させる時間としては短すぎる。それでも、コートジボワールのほうが、カメルーンよりは組織的であり、日本ボールのときの寄せが早く、圧力もあった。本番でカメルーンがコートジボワール並みのプレッシャーを日本にかけてきたとしたら、日本は苦しい。

なお、コートジボワールが日本から奪った2点は、いずれもセットプレーから。ブラック・アフリカ勢が本大会で得点を奪うとしたら、早いカウンターからか、もしくは、セットプレーからとなる確率は高い。どちらも連携というよりは、個の運動能力に依存した形である。

■相変わらず、攻撃の形が見えない日本

日本の課題である攻撃=得点機会はどうであったか。チャンスが皆無だったわけではないが、得点が取れる空気を感じさせないままで終わった。この試合、日本の両SBの上がりが乏しく、サイドからのクロスがゴール前に入る場面が見られなかった。長身のディフェンダーが守備ブロックを敷く前にサイドに基点をつくり、ゴール前で勝負する形がほしかった。

ロングボールを蹴って、岡崎を裏に走らせる、点で合わせる日本の攻撃の狙いは、成功する確率が奇跡に近いほど低いように思う。FWが疲労するだけだろう。ここにきて、守備重視の岡田ジャパン、ドリブルで突破を図ろうとしてボール奪われた場合のカウンター警戒が優先されているようだが、本番では、日本は初戦のカメルーンに勝つしか予選突破の可能性はないと思ったほうがいい。ならば、練習試合でリードを奪われた局面ならば、リスクを負って、失敗を恐れず、ゴールに迫るトライをしなければならなかったはずだ。岡田ジャパンは、まるで、“惜敗”を狙っているかのようにさえ思えてしまう。カウンターで何点取られようと、この段階で日本がほしいのは得点であるはず。攻撃の選手は、勝負にいってほしかった。蛇足だが、岡田監督に、大久保を選んだ根拠を聞きただしたい。彼は攻撃の駒として、まったく機能していない。

■守備重視の配置転換か

日本の陣形を見てみよう。この試合、日本はこれまでずっとボランチで起用してきた長谷部をトップ下に上げ、阿部と遠藤をボランチで組ませた。また、急造左SBの今野を右SBに回して、長友を左SBにした。この配置転換が何を意味するのかは不明だが、相手の強力選手に対し、長谷部、長友をぶつける作戦かもしれないが、ちょっとわからない。

W杯南アフリカ大会において、日本がベスト16入りを果たすには、カメルーンに勝つしか道はない。勝つためには、得点が必要。失うものなど何もない練習試合なのだから、とにかく、得点を追及したプレーを見せてほしかった。そうしなければ、チームの力は上がらない。そういう意味で、残念な試合だった。



2010年06月04日(金) 調整遅れのカメルーン――日本にチャンスあり

W杯に向けた練習試合、ポルトガルvsカメルーンは、ホームのポルトガルが3−1で勝った。録画中継されたこの試合を見たところ、筆者がかねがね、当コラムで力説してきた“カメルーン対策”が、的外れでないことを改めて確信した次第である。

試合早々、カメルーンのスーパースター・エトーが2枚のイエローをもらって退場。親善(練習)試合としては最悪の展開だった。この試合は、エトーの退場に加え、カメルーンが1週間に3試合の練習試合を消化した3試合目に当たるという。つまり、主力中の主力の退場に、過密日程による疲労という悪条件が重なったわけで、カメルーンのチーム状態を計るにはまったく適さないという見方も出来る。だが、筆者はこのチームは、いまだ、おおいなる調整過程にあるものと確信する。換言すれば、この試合のカメルーンは、絶好調のカメルーンではないし、前出のとおり、チームは限定された状態にあり、本番における姿とはほど遠いにもかかわらず、それでも、カメルーンの弱点が象徴的に現れた試合だと断言できる。以下、繰り返しになるが、“カメルーン対策”を総括しておこう。

■カメルーンの守備陣はザル状態

カメルーンの守備陣の連携の悪さは、アフリカ選手権から修正されていないままだ。カメルーンのルグエン代表監督はこの期に及んで、CB二人を決めかねている。このことは、グループリーグのカメルーンの対戦相手(日本ほか2カ国)にとって、たいへん喜ばしい。

そればかりではない。ポルトガル戦に出場したCB二人は、スピードに欠ける。世界レベルのスピードをもつFWならば、裏を取れる機会は十分にある。そこで重ね重ねも残念なのが、岡田代表監督が、FW佐藤(広島)を代表に選ばなかったことだ。佐藤は日本人FWの中でもっとも相手守備陣の裏を取る才能に優れた選手の一人。カメルーン戦における最終兵器だった。体調不良の内田、中村俊輔、玉田、稲本のうちの一人の診断書をFIFAに提出して、佐藤を再登録してほしい。

■カメルーン選手は感情のコントロールが不得手

カメルーンに限らずアフリカ人選手は身体能力が高いといわれ、中でもカメルーン選手は群を抜いていると。そのことに間違いはないものの、だからといって、相手との競り合い、球際、接触プレー等に強いとは限らない。カメルーン選手全体に、折衝プレー、激しいチャージを嫌う傾向があるように思える。失礼ながら、彼らは意外にもナイーブなのだ。その裏返しとして、彼らは自分たちのペースを崩されると、苛立ちを隠さず、熱くなる。この試合、ゲームキャプテン・エトーが抗議とラフプレーで退場になったことは既に述べた。

エトーの退場には伏線があり、彼は試合開始直後、ポルトガル選手からタックルを受けて痛んだ。エトーは、このラフプレーにイエローを出さなかった審判に対し、不信感を抱いたかもしれないし、ポルトガル選手に怒りを覚えたかもしれない。エトーが、というよりも、カメルーン選手の傾向として、感情のコントロールが不得手だとはいえまいか。

日本側からすれば、カメルーンを大いに挑発すべきだ。執拗以上にチャージを加え、カメルーン選手のペース、リズムを狂わせ、苛立たせるべきだ。笛が多い試合にもちこめば、苛立ったカメルーン選手がラフプレーによるカードを受けて退場・・・と、墓穴を掘るかもしれない。なお、エトーが欧州チャンピオンリーグ決勝の疲労を引きずっていることも、日本には有利な要素である。

■アンカー=A・ソングを引き出せば日本に大きなスペース

カメルーンの守備的中盤は、A・ソングのワンボランチ(アンカー)。A・ソングは守備と攻撃の両方の基点となっていて、守備の統率、サイドのスペースを埋める役割を負い、さらに、前線への楔のパス供給までやる、まさに八面六臂の活躍をする。しかし、彼が攻撃に向けて前に出たときボールを奪えれば、ゴールに直結するスペースが生まれる。このことは、TV解説者の山本氏から再三指摘があった。しかも、この試合のようにカメルーンの最終ラインの動きが鈍い場合、大きなスペース=チャンスが、日本に生まれる。

■警戒すべきはカウンター、セットプレー、ミドルシュート

守備の連携に不安を残したまま、しかも、中盤の攻守の基点をA・ソングにおんぶに抱っこ、というカメルーンだが、日本がはるかに及ばない攻撃力をもっていることも確か。本調子でないエトーが本番まで眠ったままならありがたいが、日本が警戒を怠ってならないのは、エトーよりも、アチール・ピエール・ウェボのほうではないか。強靭な身体能力をもつウェボは、高さ、破壊力抜群のミドルシュートをもっていて、日本のDFでは止められないかもしれない。

■精神の主導権争いに勝つこと

サッカーに限らず、ボールゲームとは試合の主導権を争うもの。そのことは必ずしもボールポゼッションの比率を競う結果とはつながらない。相手にボールを回されても、それが守備ラインの前であれば、脅威は少ない。どちらがゲームを支配するのか、相手を自分たちの描いた術策にはめられか――そこに勝負の鍵がある。

日本は、カメルーンのリズムを崩し、カメルーンに試合のペースを握られないようにするため、考えられることすべてを試すべきだ。カメルーンの選手個々の実力は、日本をはるかに上回っていると思うものの、カメルーンはチームとして、熟成されていない。筆者は、カメルーンがチーム力・結束力・組織力において、いまだその弱点を修正できず、本番まで引きずるのではないかと考える。

■ブラック・アフリカ勢の基盤の弱さ

ブラック・アフリカ諸国全体に共通していることだが、彼らの自国リーグの基盤は脆弱だ。アフリカ選手権をエジプトが制覇したように、エジプトに代表される北アフリカ勢のほうがブラック・アフリカ諸国よりも国内リーグのレベルが高い。北の選手のほうが、国内リーグにおいて、厳しい経験を積んでいる。代表チームの強さとは、その国の国内リーグのレベルにシンクロする。

北に比べて、高い資質をもったブラック・アフリカ勢だが、彼らがW杯で高順位の成績を残せない理由の1つは、国内リーグというインフラの弱さにある。

日本はW杯日韓大会において、ホームの利もあったが、北アフリカの最強国の1つであるチュニジアに勝った。チュニジアは、アフリカ大陸内において、ブラック・アフリカ勢を凌ぐ実績を残している。カメルーンもエジプト、チュニジア等には簡単に勝てない。そのことが、日本がW杯南アフリカ大会のグループリーグにおいて、唯一勝つチャンスのある対戦相手がカメルーンだけだと推論する根拠となっている。

翻って、野球のWBC大会において、日本が2連覇を成し遂げられた主因の1つとして、NPB(日本プロ野球)の歴史の長さを挙げることができる。NPBはおよそ100年にわたり職業野球としての歴史をもち、日本人は野球文化を生活に根付かせている。日本社会をあげて、優秀な野球選手を育成し、選ばれた選手が若いころから厳しい競争により切磋琢磨を続けている。今日、サッカーにおいて、ブラック・アフリカ勢が個々に優秀な選手を欧州市場に送り出せてはいるものの、国家単位の代表チーム、すなわち、ナショナルチームとしては欧州・南米諸国の後塵を拝していることは、野球において、中南米諸国がWBCで簡単に勝てないことと似ている。

■「システム」よりも“気力”

日本がカメルーンに勝つには、これまでにも何度も当該コラムで述べてきたとおり、強い闘争心で結束し、チームとして未成熟なカメルーンを粉砕する以外に方法はない。岡田監督がそこまでの闘争心を選手に植え付けられるかどうか、選手が闘争心を抱けるかどうかにかかっている。個々の代表選手がどこまでタフになれるかどうか・・・このような尺度において、選手選考・起用を構想するのならば、登録メンバーのうち、カメルーン戦の先発メンバーは自明のこととなろう。

6月1日に最終登録者をFIFAに提出したものの、診断書さえあれば、メンバーの入れ替えは、試合開始の1日前まで受け付けられる。体調不良で調子が上がらない選手や故障が完治しない選手を見極め、カメルーン戦勝利に不可欠の選手を再登録することは、いまなら、まだ間に合う。


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