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ひとりなのに ベッドの片側で 眠っている わたし
嬉しかったり 悲しかったり
なんでもないことに 揺り動かされる その わたしを
嫌いだったり 好きだったり
しあわせだと 思った
なにも 恨むことも 怒ることもないんだ
不安は ないともいえないけれど
このままで いたいと思った
どうして わたしたちだけでは できなかったのだろう
ただ あなたたちが 来てくれただけで
だから... 楽しかったのに 悲しかった
本当は わたしは あなたたちの一員じゃないのに 一緒になったつもりでいた
こんなに 楽しかったのに
もう一人 わたしがいて わたしを叱るので 身の置くところがない
なんで わたしなのに わたしを怒るの?
いつも やさしい わたしでいてね
怖いわたしは わたしも 怖い
そうでありたいと 思っているのに たやすくも裏切ってしまう その わたしは 本当に そうありたいと 願っていることすら 信じているのだろうか
なんでもない 普通の一日 見知らぬ人たちは 知らないままに 目の前を過ぎる
風が髪をなぶる 知らない人の髪にも 同じ風がふく
風の冷たさが 思いださせる そのときの 肌のぬくもり
そんなにも たやすく なじみあってしまった そのときのように
おぼろげな記憶なのに はっきりと残る
いつのまにか 目の前の木には 黄色い花が咲いていた
まだ明るい街を 歩いている
季節が もう ひとまわりする
小さな粒で できている 真っ暗やみ
覚める前には まぶたのうらに重たいよ
今朝は 飛ぶ夢をみたけれど いまにも落ちてしまいそうだった
あぁ この落ちる感覚が 好きだった
暗闇に まっさかさまに 落ちてゆく
もうすぐ わたしも 夜になる
トラムのなかに ぽつんと座って 遠くの空に伸びて行く 白い雲を見ている
どこに帰るのか 帰っても そこにないかもしれない
閉じたブラインドを通して 光は柔らかかった
遠くのほうから聞こえる 鐘の音も夢うつつのようだ
まっすぐ見つめるよりも 心地よいのかもしれない
崩れそうになりながら いつかもとに戻る
振り上げた腕は 真っ直ぐおりることはなかった
そうして 別のバランスが 狂う
いけないと思うから とらわれてしまうのかしら
とつぜんのめまいのように それは わたしのなかに 生まれた
まっすぐ前を 見ることができなかった
こんなに鮮やかな 空の下で ひとりだけだった
繋ぎとめようとすると 抗うのだった
繋がれまいと わたしも そうだった
それで いつか 見失ってしまった
ずっと遠くに まだ それでも わたしたちが争っていたら いいのに
芽吹きかけた枝が 白く覆われる
薄暗がりの向こうに 木々も また わたしと同じように 佇んでいる
めざめると ずっと しっていた きおくをみていた
そんなにも わたしは はなれていたかしら
かみが シーツに ちって てあしを のばしてみた
あ まだ わたしのもの なのね つめたい あしに ふれてみた
むねに てを やると いつか つきたっている ちくび
あ なんだ まだ ゆめの つづきだったんだ
暗く青い空に 月がぽつんと浮かんでいた 鳥の声が帰ってきていた
街は春のお祭りに備えている
季節がひとまわりする
残して来たものにも また
風が吹いていた
この瞬間に 誰かが失っている
肌が ちりちりと痛い
わたしが失いたくないもの を 思っていた
いつも こんなにも ゆき違うなら
はじきあうように 離れていくなら
いっそ ばらばらに してしまおうか
始まろうとしたときから 始まっていた
誰かに背中を押されたのでもない 誰が石を投げ入れたのでもない
きっと眠っていた わたしの意思
そっと触れて ふと目が覚めた
忘れていた わたしになれる その瞬間に
胸にこみあげる いいようのない 不在の感覚
どこにいるのかしら その わたし
あなたに会うときには そのときの わたしだから
いつもの わたしを あなたは 知らない
いつもの あなたを わたしも 知らない
そのときの あなたを ありありと おもいたい
心がざわめかないように このまわりのものを
眼にも 耳にも 抗うことなく
まっすぐに受けとれるように 風は吹いていた
すれ違う人たちと 一言づつ挨拶をかわす 見も知らない同士
足元では わずかに残っていた雪が 崩れていった
2004年02月01日(日) |
わたしがいるところに |
昼下がり 誰もが ゆっくり歩いている 風は冷たくて 髪を乱すばかり
こんなにも早く 日は翳ってゆく
遠くに見える 街並み どこか知らないような
足元から凍りつく 静かに空は灰色になる
帰らなくちゃ
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