恋文
DiaryINDEX|past|will
川の流れが まぶしい
みどりが 揺れている
風が やってくる
川原の小石も まっしろに 見えて
午後は ゆっくり すぎてゆく
慣れていたはずの 静けさが
もっと 静かになったような 夜
繋がりを もとめて
手がかりを たどる
途切れてなんか いない
校庭の隅の 大きな夾竹桃の木
枝をかきわけて 幹の上に登った
花は バニラの匂いがする
葉っぱのあいだから 洩れてくる ひかりを 見ていた
鍋はゆがんできて フライパンは焦げ付いて
きょうも 糧を 作ろうね
わたしも いっしょに
老いてきた
さまざまな音が いつもように 聞こえてくる
なにごともなく 一日が すぎて
窓を 閉めようとすると
草の匂いが 忍び込んでくる 夜といっしょに
光と風と 水の音
それだけでは 足りないと いうのだろうか
ぽっかりと すきまが できてしまって
食べ切れなかった 食物が また 冷凍庫に はいった
リス暮らし と つぶやいて
ひとり 笑ってみる
誰もいない 聖堂のなか
ひかりは ふんわり やわらかい
ことばは 胸のうちに おいておき
耳を すます
影が かげになる ひとときを 見ていよう
まだ 色は いろのままに
ひかりが さめてゆくまで
ひとりでいると 自分の時間しか 流れない
町にでてみる 交錯する 人々の時間のなかに はいってみよう
気づくと まだ 自分の時間に とどまっている
雨も ゆったりと 降る
灰色になった 空も 家のなかも
カーテンも 家具も
しんと 静まりかえっている
なんにも 起こらない日が いいのだろうね
光と風 あたりまえのように
ラジオが 遠い国のことを 言っている
ふと 立ち止まると
まわりは 静かだった
どこかに 迷いこんだ 気分
どんなに 海は 光っているでしょう
夏の空は 青いでしょうね
知らない 国のように
思い浮かべました
わたしのかたちになって 眠る
眠っているあいだ ほどけてしまって いるだろうか
残っている かたち
占っても しかたない
明日は やってくる
祈っても しかたない
けど 祈ろうか
夕焼けが 薄れていった きょうの夜
雨音の夜も 静かだったけれど
やっぱり 今日も 静かだ
さらさら 耳元でささやくように 雨のおとがする
へやのなかは 藍色に 染まっている
もう少し 夢のなかに いようか
雨の空の色に 染まってしまったのだ
いつもより しずかな夜
まだ 残ったままの ひかりが 冷めてゆく
木の枝も 影になって じっとしている
ラジオから流れる ブルースを 聞いている
風といっしょに 歩く
陽だまりに 咲いている 無窮花
まだ ここにいるけれど
いつか つながる
知らないうちに 降っている
しずくが つながって 見えて
音が 後から ついてくる
日向のにおいを 洗っていってしまった
わずかな 窓のすきまから 風がはこんでくる 雨のにおい
とおい町に 降った雨を 思いうかべる
気にしながらも 取り越し苦労なら ほっとすればいい
いちにちが なにごともなく 過ぎてゆく
空の縁が 薄くれないに 光っている
こんなに 早く 暗くなったのだろうか
記憶は あいまいなまま
この夏も 思い出になってゆくだろう
すくんでしまった みたいに 立ち止まる
ずっと むこうは はるかに遠い
真っ白な道 野の草、花
風が とおりすぎて
誰もいない
風が でてきたから 草も 木も 揺れる
部屋のなか みんな 止まったまま 影のまま
真っ暗な空が 一瞬 真っ白になる
知らないところが 現れるみたい
|