恋文
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島にいる
潮騒のように 聞こえてくる
雨の音
風にも 親しくなろう
柔らかな 日差しのなか
歩みを また 進める
まぶしい光
まだ 風は冷たい
ゆっくり 歩む
声なく つぶやく
わたしの 一部
外から 子供たちの声が 聞こえる
遠くの山並みに 雪が まだ 筋をひいている
午後は ゆっくり すぎてゆく
少し 春に近づいたように
雨は 柔らかくなった
どんな一日も 過ぎる
夢を 見ないままでも
そういえば 草や木や 土の匂いを 忘れている
雪のあとを わずかに残して 凍りつく
花を待つあいだ
雪になり
道は ぬかるみになり
すでに みな濡れて
街灯の ひかりも
濡れている
晴れ渡った空
尾根を白くして
この冬になる
白く煙る山並み
雪はみぞれになり 雨になり
やがて 夜になる
今日は いちにち 雪が降っている
時は 足早に過ぎてゆく
雪は なにも知らない
聞こえてくる ドイツ語のニュース
遠くにあった 生活を思う
追われる獣
逃げるだけ
毛布のなか くるまって
じぶんの 体温に つつまれて
あしたのことは 忘れよう
オレンジの皮を剥く 一日の終わりの夜に
手を濡らす果汁と 広がる香りの中
時計の音と一緒に 過ごしている
時を よみがえらせて
陽が 射しこむ
立ち止まる 時間が要る もう少し
わたしが わたしでなくなってゆく 一瞬は どこにも とどまっていない ゆっくりと 崩壊する
ラジオは そのまま そこのまま
の ように 歌っている
離れているのは わたし
かすかな風に ひらひらと
雪の粒は ただよって
まだ 消えない
同じ景色を 眺めていた
それが いつまで 残っているだろうか
そこにも わたしのなかにも
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