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めも。 | 2007年02月08日(木) |
おそらくは忘れた恋の夢を 思い出すのをおそれたのだ (プーシキン「コーカサスのとりこ」) |
マイディアとホットチョコレート。 | 2007年02月07日(水) |
「dear, dear」 まどろむ意識の向こう側から呼ぶ声がする。 雑事に追われて不機嫌なことが多い彼の、こういう調子は珍しい。 もう少し、とベッドの中でうずくまる彼の背を優しい手が揺らす。 かすかに香る甘い匂いはホットチョコレートか何かだろうか。 早く起きないと怒られることは重々分かっているのだけれど、いつもはひとりきりの家に誰かが――彼がいてくれることが嬉しくて、甘えるように持ち上げかけた瞼をまた閉じた。 ――ばしん、という乾いた音とともに、意識に軽い衝撃が走る。 滲んだ視界の焦点が合わさると、よく知った顔が苦虫を噛み潰したような渋い表情で彼の前に立っていた。かけっぱなしで転寝をしたせいか、眼鏡のフレームが多少歪んでいるようだった。 「……ようやく起きたかこのねぼすけ」 手で軽く捻ってフレームの歪みを直すついでに埃のついたレンズを拭く。顔に差した影に視線を上げると、手にしたファイルで軽く肩を叩きながら、二つ三つ年上の青年がそうこぼしていた。どうやらそのファイルで彼の頭を叩いて起こしたらしい。 「あれ、……ホットチョコレートは?」 「飲みたかったら自分で作れ」 いきなり何を言い出すか、と言いたげな視線で見下ろされ、寝ぼけていた意識がようやく正しく現状を認識した。夢か、と彼は少しだけ肩を落としたが、今重要なのはそちらではない。 「自分で作ったって美味しくないよ。ホットチョコレート!」 「あのなぁ……ガキじゃねーんだから自分で作れって……」 「君の作ったのがいいんだよ。……駄目かい?」 今はだいぶ疎遠になってしまったけれども、かつて可愛がっていた弟分がだだをこねて甘えれば大抵のことに折れるということを、双方が無意識のうちに了解していた。それを証明するかのように、呆れ顔が僅かに動揺している。 「……紅茶でよけりゃ俺も呑むし淹れてやらんこともないがな、」 「えええ、ホットチョコレートー」 まるで子供のように頬を膨らませて抗議すると、目の前の青年が少しだけ視線を彷徨わせ、その迷いを打ち消すように顔をしかめた。 「お前いつコーヒー党から鞍替えしたんだよ……」 「今はそういう気分なんだよ。ねえいいだろう?」 お願いだから、と物事を頼むときの基本、にっこり笑顔で見上げると、苦い顔をしながらも「今回だけだからな」と彼が呟いた。 「その代わり、作ってる間にこっちの仕事片付けとけよ」 「うん」 ファイルの中から幾枚かを差し引き、彼に手渡すと、青年はキッチンへ続くドアを開けた。 *** 実はうっかり二次創作(……)。予想以上に黒くなった……。あとふたりとも彼でどっちがどっちだか分からなくなってたらすみません固有名詞は出さない方向なもので。 なんでそんなものをここに書いてるかといえば、今ちゃんとした話にしたり頁作る余裕がなくてしかし書かずにはいられなかったという事情でしてともあれ脳内てんやわんわ。 しかも1番難産になりそうなレポートの締切日がかなり早いという罠。しかも資料集まってない。鬱。 |
たかくたかくはばたく。 | 2007年02月04日(日) |
さあ、行っておいで。 この手を離れたからには、けして振り返らず。 どこまでも、行ける限りの涯てを目指して。 その背の翼にとって、世界はどのくらい広いものだろうか。 青空の下に広がる血溜まりなどに気がつく必要はない。 君にとって必要なのは、ただ高く高く高く、果てのない天と、舞い上がるための追い風だけだ。 君が帰ることはなくても、僕が留まることはなくとも。 かつてふたりがいた、そして今はもう空っぽのこの場所は僕が守ろう。 そんなものにはもう何の価値もないだろうにと君が笑っても。 また笑いあえる日を愚かにも夢見ているこの心の平安のために。 君を誰より愛した僕だからこそ言おう。 さあ、何処までも行くと良い。 振り返っては落ちてしまう。 君を縛る手も庇護の手も、何もかもをためらうことなく断ち切っていくからこそ、君はそこまで高くはばたけるのだから。 |