短いのはお好き? 
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2004年09月25日(土) black out








200X年8月8日
な、なんなんや、あのときって?全然わからんし…。それにしても誰なん?
誰が誰に言うてるん?それともうちはとうとういかれてしもたんかなぁ。
そういえば、おかあちゃんがいうてた。
知らない人に話しかけられても、絶対言葉を返したらあかんて。


ああ、おかあちゃん、どないしたらええねんやろ?
このごろなことに酷いんや。
うちのなかにな誰かおるんや。
どないなタイミングで喋りはるのかわからへんねんけど、喋り出したらとまらんくらいようけ
喋りはるんやで。
まあな、寂しいときにはそれでもええねんけど、考え事してるときなんかやと、もうええ加減しばき倒したろかいな思うねん。





200X年9月7日
おかあちゃん、あんなぁ。ちょっと相談事があるんやけど。
実はな、うちの頭んなかにおる彼のことなんやけど、ずっと話し聞いてるうちに会話するようになってん。それで…好きになってもうてん。やっぱりな情が移るんやろか。






200X年10月23日
おかあちゃん。大変なことになりました。うち、彼から告られてん。どないしたらええねんやろ。
もう、うちパニクッてわけわからんようになってます。






200X年12月20日
おかあちゃん、急な話でびくっりするやろけど、うち彼と結婚することにしてん。
もちろん、ヴァーチャルやからホンモノではないけれども、そんなんこの際どうでもええねん。
もう式の日取りも決まってん。
おかあちゃん、うち絶対しあわせになったるねん。






200Y年11月16日
おかあちゃん、うち無事に第一子を出産しました。
丸々と太った男の子やった。
名前は、パパがユウと名付けてくれました。






200Z年1月4日
おかあちゃん、明けましておめでとう。
新年を家族3人で無事に迎えることができました。
ユウくんは、すくすく育っています。
きのうは、みんなで�眦膕阿砲�買い物にいってきました。
大奮発してユウくんにおもちゃ屋さんで一万円の福袋を買いました。
まだまだ赤ちゃんやから、使えんものばかりやけど
早よ大きくなって、つこてほしいから、思い切ってこうてやってん。

こんなこと書いてるけど、うちはむろん男の人とHしたことなんかないんやから
情報が少なすぎてヴァーチャルですら構築できへんかった。
せやから、Hはすっ飛ばして、いきなり赤ちゃん作ってもうてん。
でもなぁ、おかあちゃん。
うち、やっぱり本物の赤ちゃんほしかったわぁ。
愛する人とめぐりあって結婚し、赤ちゃんを産みたかったわぁ。






200Z年3月24日
おかあちゃん。
もうなにもかもいやになりました。
自分を欺いているのに疲れた。
実体のないホログラフィの赤ちゃんにおっぱいあげてなんになるんやろ。
どんどん惨めになっていくだけや。
せやから、うちもうやめたんや。
ヴァーチャルの世界はすべてdeleteした。
あとは、うち自身をこの世からdelete出来たらどれだけ楽かしれへんけどな。
もう、いややねん。
おかちゃんのいるとこに、うちも早く行きたいねん。
なぁ、おかあちゃん助けて。
こんな植物人間の意識だけの存在のうちは、生きてるなんていわれへんねん。
うちは、生ける屍以外のなにものでもない。
もうこんなんいやや、おかあちゃん後生やうちを助けて!
なぁ、おかあちゃん!





200Z年5月3日
おかあちゃん、うちまだ生きてます。
いったい、いつまで生きてるんやろ。
誰か、うちを死なさせてください。
お願いします。


おかあちゃん。
これは、なにかの罰ゲームなんやろか…。









2004年09月10日(金) ☆panda









ふと目覚めると、俺はベッドに横になっていて、となりにはパンダが寝ていた。その顔を覗き込むようにすると、寝返りを打ってこちらに背を向けた。


なんでまた俺は、パンダなんかと一緒に寝ているんだろう。



ベッドを共にしているということは、このパンダが俺の彼女もしくは奥さんなのだろうか…。



頭のなかでこの雌パンダと愛し合っているサマを思い浮かべてしまい、俺は頭を振ってそのオゾマシイ映像を彼方へと押しやった。


でもよく考えてみると、雌パンダなどという認識がどこでなされたのだろうか。もとよりパンダの雌雄の識別法など知らない。



でも、どうみても雌としか思えない女性的な雰囲気をまとっているからではないだろうか。なんかよくわからないが、そんな気がした。



どうでもいいけれども、これからどう展開するのかが愉しみではある。





と、そんなことを考えながら俺はまた眠ってしまったらしい。目覚めると眼前には信じがたい光景がひろがっていた。




見渡す限りの大海原。






俺はドーナツ型のチューブに乗っかって、クラゲみたいにぷかりぷかりと波間に漂っていた。





そして更に驚くべきことには、ナイスバディの金髪ギャルたちが、周りを囲むようにして同じようにぷかりぷかり漂っているのだった。




これこそ現実だと思った。この到底ありえないシチュエーションだからこそリアルにちがいない、などと思うのだ。




むろん、胆のなかでは嘘っぱちだとわかっているけれども、ぼくも大人なので一刀両断、即座に切り捨てなどという青いまねはしない。わざわざ波風立てて何になるだろう。



それが大人のやり方ってもんだ。




…などと訳のわからないことを誰にいうとでもなく呟きながら、俺はパツキン美女を横にはべらせたまま、王様気分で再びうとうとと、まどろんでしまった。




どのくらい居眠りしてたのか…。




目覚めは悪くなかったけれども、現前する光景にはまったく凹んだ。




事態はまったく変わっていなかった。




彼女はエプロン姿でシンクの前に立ち、何かを刻んでいる。





どうやらこれが現実で、この現実を受け入れるほかないらしい。




俺は諦めて、かいがいしく立ち働く彼女の背に声をかける。




「ねぇ、きょうの晩ご飯なに?」





彼女は、ちょうどお皿に盛り付けていたパスタを無言で掲げてみせた。





了解。俺も手を上げて応える。





そうだった、パンダが喋るはずもない…。
















2004年09月02日(木) ゆらゆらゆるゆる










きみのことを考えながら俺は居眠りしてしまったらしい。



気付いたらなんか奇妙なオブジェが立ち並ぶ薄暗い森のなかに俺は独りいるのだった。



オブジェを縫って俺は歩いてゆく。



夥しい数のオブジェたち。



気付くとオブジェたちはゆらゆらゆるゆると蠢いている。



それらは、たぶん何かをデフォルメしてつくられているであろうことは、わかるのだけれど、それがなんであるのかどうしても思い出せなかった。




わかっているのに思い出せなくて苛つくのだけれど、また一方ではそんなことよりも、このわけのわからない世界からどうしたら抜け出すことが出来るのか、徐徐に心配になってきていた。



どこかに現実へと繋がっている出口がある筈なのだ。




それが何であるのか、見てみないことにはわからないが、とにかくなんらかのサインが必ずあるはずで、誰に教えてもらったわけでもないのに、それだけは妙に確信があり、魂の奥底に幾重にも刷り込まれた太古からの記憶のように、それはごく自然のように思われた。



しかし、ここがどこなのかさえわからないのだから、ここから出さえすれば元の現実に戻れると考えるのは、あまりにも短絡的ではないだろうか。



だって、そもそも現実ってなんなんだ。



知ってるやつがいたらマジに教えてほしい。




そんなことを考えながら、ふと上を見上げて驚いた。どんよりと重く垂れ込めていた雲の天井が、不意に頭上間近まで迫ってきていた。



いつのまにかロケーションが変わり、俺は洞窟のなかを歩いていたのだ。雲の天井は消え、そのかわり雲と同系色のコウモリが洞窟の天井にびっしりと張り付いていた。



啼きもせず微動だにしないコウモリたちは、上を見上げなければ気付くこともなかったかもしれない。それほど洞窟に同化しきっていた。




やがて洞窟は大きくカーブを描いて右に曲がっていき、曲がり切るとすぐに三つに分岐しているところに出た。



ふたつに道が分かれているのならば、間違いなく俺は左側の道を選ぶと思う。癖みたいなものだ。だが、三叉路となるとわけがわからない。というか、今自分の行動パターンなどわかったところでなんにもならないが、どの道を選んでいいのか見当もつかないのだった。




もしかしたら、それから小一時間ほどもあれこれ考えあぐねていたかもしれない。あるいは、3分程度だったかもしれない。完璧にパニクっていた。




とてつもなく怖いことが待っていると第六感が告げているのだ。いくら考えても答えなど出るわけもない。




俺はイチ、ニィと数を数えながら目を瞑ってその場で回転しはじめる。





目がまわって倒れこんだ道が進むべき道だ。




やがてトランス状態のような浮遊感を伴ったいい感じになった途端、いきなり俺は猛烈な勢いで堕ちはじめていた。




三つのうちのどの道なのかわからないけれども、選んだ道の暗がりの向こうは、底なしの穴だったようだ。




ついさっきまで身体などないようなふわふわとした酩酊感を味わっていたのに、この圧倒的な喪失感はいったいなんのだろう。






落下しながら何物かに激突する恐怖よりも、すべてが失われてしまった空っぽな心に気が狂うほど戦慄し、俺は間断なく絶叫しつづける…。






吐き気がするほどのこの恐怖をどうしたら断ち切ることができるだろうか。









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