2009年10月04日(日)
おまえの頭の中には映画のことしかないんか、 などと言われてしまいそうなので今日は読書日記。 ここ数ヶ月、夏以降に読んだ本。
山崎豊子「運命の人」。 新人賞にこんな作品が応募されてきたら、まちがいなく選考から洩れる。 最終巻である第4巻、この構成はないだろーと心底思う。 あとがきとは言い訳のことかと問い詰めたい。 主人公にまったく感情移入できなかったのもつらかった。 そもそも彼が記者時代にしたことが正しいとはぼくには思えない。 ときに清濁併せ呑むことは、政治、特に外交にあっては必要だろうとも思う。 「知る権利」のごり押しには疑問を感じる。 事件以降、家族をないがしろにすることのはなはだしさにも呆れる。 それでも、まー、小説から遠ざかり説教垂れ流すしかない作家を思えば、 80を越えてなおこういう作品に挑んだ山崎豊子は見事。
誉田哲也「武士道エイティーン」。 シリーズ3作めにして、初めて主人公のふたり以外の独白が登場。 いわばサイド・ストーリーというやつか。 はじめちょっとした違和感を覚えたそれらが外周からじわじわ近づき、 最後にはきっちり物語の核に重なっていくさまは小気味よく感動的。 ぼかぁ、かなりうるうるしてしまったぞ。 ところで、1作めの「シックスティーン」を読み終えた時、 映画化に際しては北乃きいでしょうとぼくは書いたが、当たってた! ま、もうひとりの多部未華子は外れて、代わりに成海璃子だったが。
西村淳「面白南極料理人」。 映画「南極料理人」ににんまりできたので手に取ってみた原作本。 が! こんなに下手な文章を読んだのはずいぶんと久しぶり。 面白可笑しく書いてやろうという魂胆が見え見えで、なおさら語り口が陳腐。 それでも非常に貴重な体験であることは確かなので、興味深くは読めた。 で、思うのは、さすがに映画の脚本はよくできている! 原作にない部分が面白い! そんな感想を持たれていいのか、作者。うむむ。
川上未映子「ヘヴン」。 それぞれ凄惨ないじめを受ける中学生男女の交流と、苛める側の理論。 テーマは重く、全然楽しくもなく、むしろ不愉快でさえあるが、 それでもぐいぐい引きずるようにして読ませてしまうのは作者の力量だろう。 これは本当に視る人、書ける人であったのだなぁと思う。 ちなみに、正直に言ってしまうとぼくは率先して苛めるタイプ。 それに乗り遅れたら我関せずを決め込む。 まちがっても、尻馬に乗る取り巻きと化したり苛められる側にはならないだろう。
そして、今読んでいるのが宮本輝「骸骨ビルの庭」。 自分が読み進めているくせに残り少なくなっていくのが惜しい、久々のそんな話。 登場人物の誰もが実際に息づいている人のように感じられる。 ぼくにそんなことを思わせるのは、他には宮部みゆきくらいだ。 王道であると思う。うまいと思う。おそらく映画化されるだろうとも思う。 子役には「まえだまえだ」を使ってほしい。
さらには、まだ下巻が残っている「骸骨ビル」の後に控えているのが 奥田英朗「無理」、金原ひとみ「憂鬱たち」の2冊。 広告見たら即座ですよ、買いに行くの。 今すぐに読み始められるわけじゃないのに。 なんの躊躇もなくハードカバー買うようになってしまったなぁ。 浪費なのか、これって。お買い物日記なのか、実は。うむぅ。
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