竹裡館の怠惰な日々...竹裡館住人

 

 

記憶とムカデ - 2003年06月07日(土)

今、「嘘をつく記憶」という本を読んでます。
犯罪事件の目撃者証言について、記憶とはどういうメカニズムなのか、人間はいかにして記憶するか、またどのように記憶は変容するのかということを研究した本。

人間の記憶は非常に複雑で、コンマ7秒で消失する知覚記憶から生涯忘れない長期記憶まで、色々なプロセスでもって実行されるものらしいです。非常に面白い。

絶えず人間が実行している無意識の機能というのはスゴイものです。
面白いと思ったのは、そう言う研究者の人たちも、記憶機能をフル回転で研究しているのに、その記憶を自分がどのように実行しているのかが分からなくて研究しているわけです。
アシモの開発の方々もそうですね。自分がどうやって歩いているのかよく分かってなかったわけですよ、人間は。だから研究するわけです。そうして初めてロボットが歩けるようになるわけで。

「自分がどうやって歩いているのか、考え出したら歩けなくなったムカデ」
という話を思い出しました(笑)。研究者の方々はちゃんと歩いているので立派です。

人間の知能はなかなか人間の機能を理解できないでいるのですなあ。



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久しぶりの図書館 - 2003年06月05日(木)

図書館でルワンダの資料を探してみましたが、案外無いものです。図書館の規模があまり大きくないからかも知れないけど。
学生の頃は毎日のように通った図書館ですが、近年はついでが無いのでとんとご無沙汰。電車賃がかかるもんで。
しかし家の本を読み尽くすとやはり重宝なものです。

小野不由美の「屍鬼」上下巻は重たかった…。←余計なものまで借りてしまいました(笑)。

今日のご本   
「漂泊のルワンダ」 吉岡逸夫


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恐ろしい話 - 2003年06月04日(水)

先日ふと古本屋で見つけた曾野綾子の「部族虐殺」という本で、ほとんど忘れかけていた「ルワンダの大虐殺」について読みました。
この事件が起こったのは1994年の4〜7月、当時世界を駆けめぐった大ニュースだったわけですが、当時ニュースを聞けば聞くほど訳が分からなくなってしまったので、結局自分としてはその後たくさんの大事件の中に埋もれてしまった事件でした。

しかし作家というものはえらいもので、「部族虐殺」にかかれていることが余りにも衝撃的だったため、急にあの事件が「よく知っておくべき事件」となってわたくしの前に立ち上がってきたような気がしたのでした。

3ヶ月で100万人。
ルワンダの首相暗殺(未だ犯人は不明らしい)をきっかけに、各地で同時発生的にフツ族によるツチ族の大虐殺が行われました。四国より少し大きいくらいの国でです。しかもそれは軍隊などの組織によってというより、普通の庶民の手によって行われたのだそうです。殺されたのはそのへんに住む普通の人々、殺したのもその辺の普通の人々。そして穏健派のフツ族も1万人ぐらい殺されました。フツ族とツチ族が結婚している場合、家族に殺すことを強要したとも聞きます。
その後形勢が逆転し、組織されたツチ族が政権を取るや今度は報復をおそれたフツ族が大量の難民となって国外へ流出、これが「ルワンダ難民」問題です。

ルワンダの多数民族フツ族(80パーセント以上)と少数派のツチ族の対立が、歴史の上でも今までにいくつかの虐殺事件を起こしてきたのは確かなようです。しかし、だからといって昨日まで隣人として暮らしてきた人々、通婚も普通に行われていた民族同士で、ある日突然一方的な虐殺が始まるなんてちょっと想像のつかない恐ろしいことです。

もちろんこの事件には非常に複雑な背景があるようです。
旧宗主国の思惑だの経済だの、そりゃもう色々と。わたくしもネットでにわか勉強しましたが、ちょっぴり把握したことが明日には覚えていられないんじゃないかと思うぐらい複雑です。

しかし何より恐ろしいのは、教会が利用されたことではないかと思います。
カトリックが深く浸透しているルワンダでは、皆何かあると教会へ行くのだそうです。だからツチ族の人々は異変が起きると教会へ保護を求めて集まったのです。そうして人が集まったところで、一気に虐殺が行われたケースが多いとか。これは計画的な行動です。しかも、それを行ったのが神父や修道女だったというのは衝撃的です。自ら銃をとって虐殺を行った神父もいたということです。
何が恐ろしいといって、こういう形で信頼が裏切られることほど悲惨なものも少ないように思います。

もちろん、ツチ族を庇った神父も、隣人を殺せと言われて従わずに殺された人々もいたのですが、ツチ族の虐殺に加わった聖職者たちにとって、キリスト教とはなんだったのでしょうか。
中世における魔女裁判の時と同じ心理になるものなのでしょうか。
カトリックの世界でもこれは一大不祥事と見なされたようです。

ルワンダ難民の問題を含めて、この事件の悲惨さを考えると部族対立の解消なんて夢のまた夢のように思われます。家族を残虐に殺害した隣人とともに暮らすのは容易ではないでしょうし。

しかし、ルワンダの人々は本来とても陽気でめげない親しみやすい人たちだということです。そんな人々が何故このような事件を起こしたのか。「普通の人々」が殺戮の狂気にとらわれる時。それは考えておかなければならない事のような気がして、明日図書館へ行こうと思っています。


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