| 2005年09月19日(月) |
荻原 浩『明日の記憶』★★★☆☆ |
 『明日の記憶』 荻原 浩 光文社 (2004/10/20)
途中まではちょっと退屈してた。
読みおえて。
なんていう恐ろしい小説なんだと思った。
フィクションだけど、フィクションじゃない。 誰に、そう明日私に起きてもおかしくない、現実。
若年性アルツハイマーにかかった壮年の男性の物語。
広告代理店で働き詰めの日々ももうすぐ一息つきそうで、やっと妻を旅行にも連れて行ってあげられそうかもと思う。 一人娘は来年結婚、もうお腹に子どももいる。
そんな最中、異変が起きる。
記憶の欠落。
度重なる日常生活への支障。
そして恐れていた診断。
あがこうと、メモで膨らんだポケット。
陶芸教室での焼成代金の度重なる支払い。
妻の顔さえ分からなくなる恐怖。
日記を書いているあたりが「アルジャーノンに花束を」と似てるなぁと思ったけれど、あれはSFで、これはノンフィクションだと思ったら、心底ぞっとした。
若年性アルツハイマーに、現在のところ治療薬はない。 進行を遅らせる薬などはあるが、かかってしまったら通常よりも早いであろう死へと向かうのみ。(誰だって死へ向かってはいるのですが)
ハッピーエンドはありえないのではないかと最後は読みたくない気持ちにもなっていたのだけど、救いはあった。 献身的な妻の、愛。
このところはフィクションっぽいと思ったけれど、小説だし、そうでもしないとつらすぎるだろう。
わずかな焼成代にもたかろうとしてしまう、食えない陶芸家の苦悩には主人公同様私も怒りより悲しみを覚えた。 生きるということは、大変なこと。
でも、まだ「健康」の範疇にいられる自分。
生きてるだけで丸儲け。
と思ってやれることやりたいことに取り組んでいきたいと思う。 頑張りすぎるとまた鬱になるのでほどほどに。
『明日の記憶』
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