活字中毒のワタシの日記

2006年03月03日(金) 鈴木 光司『ループ』★★★☆☆

ループ
ループ
鈴木 光司
角川書店 (1998/01)

鈴木光司さんの作品で私が一番好きというか、一番怖いのは『仄暗い水の底から』なんですが、あれを★4つくらいとすると、この作品はがんばって3つ、ってところでしょうか。

小生意気なほど知的探究心の強い少年馨。

研究者の父とネイティブアメリカンの民間伝承に詳しい母の下で、長寿村と重力異常の相関に気づき、家族旅行でそこを訪れる計画を立てる。

父の体に転移性ヒトガンウィルスが侵入したのはそれからすぐのことだった。

すでに世界各地でこのガンの患者や死者は増え続ける。

転移する確率は100%。
ウィルスは不死性。
気力だけで生き続ける父。すがれるものなら何にでもという狂気手前の母。
そして大学生になった馨は、息子をそのガンに冒された女性礼子と出会い、恋に落ちていく。

鍵は、「タカヤマ」が握っているという。

タカヤマはどこにいるのか。
何かに導かれるようにしてアメリカへ渡った馨を待っていたものは。

…驚愕の事実。

といったところなのだけど、リングもらせんも読んでない(映画のリングをちょろっと見た)私には、きっと感じられる面白さは半分もなかったのかもしれない。
3部作って、最初に言ってよ。

なので、読んでいるうちに、ん?ビデオを見た?死んだ?これってなんか聞いたことあるような…タカヤマ?映画化?へ?
リングじゃーん!

まぁリングを見たヒトがみんな××していっちゃう(ネタバレなので伏せます)のはフィクションじゃないと困るけど、なんなんだこれは。

すべての鍵はタカヤマが握っている。

最後はすっきり落ち着く所に落ち着くんですが、でもちょっとご都合主義。

東野圭吾さんの『時生』みたいな終わりの方が、きっと泣けたよ。と思うのだけど。

帯の「最高傑作」はいいすぎでは。
鈴木光司さんはもっとおもしろいもの書ける人だと思います。

ループ



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2006年03月01日(水) 福井 晴敏『Twelve Y.O.』★★★☆☆

Twelve Y.O.
Twelve Y.O.
福井 晴敏
講談社 (1998/09)

先月夜更かしして読みきった『亡国のイージス』の福井さん。
今度も夜更かし?と期待して読みました。夜更かししました。

面白かったです。さすが江戸川乱歩賞。

沖縄から米海兵隊を撤退させた、たった一人のテロリスト。
名前は「12(トゥエルブ)」。

彼は一体何者なのか?
テロの目的は?

彼の武器は最強の最強のコンピュータウィルス「アポトーシス2」と謎の兵器「ウルマ」。

読み進めていくうちに、もしかしてこの二人が『亡国のイージス』の××に?なんておバカな読みをしてしまったのですが、「12」は狂ってはいなかったのでした。
彼には動機があった。

悲しく痛ましい過去による、その動機とは。

防衛庁、在日米軍、権力者たちの思惑が渦巻く中で、駒として動かされる命。

”兵器”であるウルマの活躍に、ある女性を思い出した。

そう、最近読んでない松岡圭祐さんの『千里眼 岬美由紀』!彼女の活躍も久々に読んですかっとしたいな。

ついでにこの作品の「ユリ」は千里眼の有里(だっけ)にかぶる。

一番かぶるのは、この騒動に巻き込まれ、活躍してしまう一見転落人生を送ってる中年自衛官、平。
この人は、『亡国のイージス』仙石曹長そのまんま。
両方読んだ人、そう思ったでしょー?でしょでしょ?

ヘリに乗せられて蒼白、足腰立たないオッサンが…。

かっこいいんです。
日本のオヤジも捨てたもんじゃないという気持ちになります。

ストーリーの破天荒なところは素晴らしいけれど、人物描写の深さはいまひとつ。
ウルマや組織を離脱してまで彼女を守ろうとする護、壮大なテロをしかけようとするトゥエルブの動機にもっと感情移入したいけど、しどころに欠ける。
一番書けてるのは協力者夫婦かな。
彼らのサイドストーリーがあれば読みたいと思う。

シリーズもの流れとしては、これを読んでから『亡国のイージス』なんだけど、どっちでもいいと思う。
私はこの順番で、『沖縄?』『あっ!出て来た悪魔の兵器!』『ああ、あの事件のことね』とメイキングビデオを見てるような気になれて面白かったです。

また、福井さん読もう。

Twelve Y.O.



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2006年02月23日(木) 大崎 善生 『聖(さとし)の青春』★★★★☆

聖(さとし)の青春
聖(さとし)の青春
大崎 善生
講談社 (2002/05)

早世した天才棋士、村山聖(さとし)。

彼の短い人生を熱い筆致で伝えてくれるルポ。

彼とほぼ同世代の私は、自分の子ども時代と重ね合わせて、彼がくぐり抜けて来た道の厳しさとその偉業にただ圧倒された。

広島に生まれた腕白少年は5歳で突然ネフローゼを発症。運動を禁じられるが言うことを聞けず、医者通いを繰り返した末に入院。
長期療養病院で間近に死と接する日々の中で、出会ったのが将棋。
ベッドの上で、ひたすら難しい漢字が並んだ将棋の本を読み、詰め将棋を解く日々。
そして周囲が驚くほど強くなっっていく。

同じ頃、東京でも天才少年が将棋に没頭していた。
羽生善治、のちの7冠王。

谷川名人の誕生。
彼を破りたい、名人になりたいとの一念で親族を説き伏せ、病の体をおして奨励会をめざす村山少年。
応援する家族。
彼に何の罪もない所で奨励会試験を不合格とされる不運。
(徒弟制度のタブーをやぶったとかで、灘蓮照九段の怒りに触れたため。この本ではすっかり悪者。でも私もこれはあかんと思うよ。5勝1敗で文句なしやったのに)
泣いて泣いて熱を出し、入院となってしまう。

その後、人間味あふれる森師匠のもとで、1年後(この1年が彼にどれだけ貴重だったかと思うと、私も切なくなる)文句なしの入会を勝ち得、名人への道を苦しみながら昇っていく。

美化された部分があるとは思うけれど、彼は本当に純粋でひたむきなひとだったのだと思う。
そして家のダニすら殺せず、髪すら切れない『生きてるものを殺すのはかわいそうじゃないですか』という優しさを持っていた。

病と闘いながらの強豪との戦い。
最後には癌で命を奪われてしまった。

惜しい人をなくした、という言葉はこういう時に使うんだな、と思った。

東の天才羽生と、西の怪童村山。

彼が生きていてくれたら、羽生さんが巻き起こした将棋ブームがいっそう面白く、長く盛り上がったことだろうと思う。

たまに相方とやる将棋(みたいなもの、といっていいレベル)。
遊びでもかなり悔しい思いをするのに、人生かけての一勝負(そしてその連続)というのはどれくらいの負荷なのか、想像もつかない。

ほんとに偉人だったと思う。
私もぼやぼやしてられないな、と思うことができたことに感謝。
コドモにも大きくなったら読ませてあげたい。

ご冥福をお祈りします。

聖(さとし)の青春



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