| 2015年12月04日(金) |
岸恵美子『ゴミ屋敷に棲む人々』★★★☆☆ |
 岸恵美子『ゴミ屋敷に棲む人々』
「セルフ・ネグレクトはその場で命を断つわけではありません。自分の世話をしない、自分を放棄することによって、長い時間をかけて生命を脅かしていく行為です。」(p21)
「言い換えれば、セルフ・ネグレクトは長い時間をかけて命を断つ自殺、つまり『消極的な自殺』とは言えるかもしれません。」(p22)
「マリア・P・パブロウは、セルフ・ネグレクトを次のように定義しています。 �� 個人の、あるいは環境の衛生を継続的に怠る �� QOL(Quality of Life=生活の質)を高めるために当然必要とされるいくつか、あるいはすべてのサービスを繰り返し拒否する �� 明らかに危険な行為により、自身が危険にさらされる」(p23)
リスクファクター(マリア・P・パブロウらの分析) 依存性、認知症、うつ、アルコール問題、不安障害や恐怖症、統合失調症や妄想性障害、強迫神経症、人格障害や生まれながらの人格特徴、その他の精神障害、感覚障害、身体の障害、社会的孤立、教育、貧困、人生の困難なこと、自立を維持したいというプライド
愚行権と生存権のせめぎあい。 「人は、『健康に悪い』とわかっていても、それをあえて行う『自由』が認められています。それは『愚行権』という権利です。愚行権とは、たとえほかの人から愚かな行為だと評価・判断されても、個人の領域に関する限り、邪魔されない自由のことです。(略) つまり他の人から見て正しいからといって、何かを強制することは正当でない、という考え方です。」(p132-133)
「その一方で、日本国憲法にはこういう条項もあります。国民の権利及び義務として、第25条に『国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』『国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない』という『生存権』が定められています。」(p133)
また、老人福祉法でも老人の健康の保持や福祉に関する措置を講じることが定められていること。 「さらに第2条では『老人は、多年にわたり社会の発展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする』としています。」(p134)
「これらを踏まえると、セルフ・ネグレクトは個人の自由意思に基づくものだから、放っておいてよいということにはならないと、私は考えています。」(p134)
岸恵美子『ゴミ屋敷に棲む人々』
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