最近の日向は 宝箱に閉まっておきたくなるような 寒がりのアルを暖かくしてくれる そんな言葉をポロリとこぼす
それは突然で わたしは未熟で その大切な言葉を受け止め切れなくて 言葉を返す事もできず 無言で 誤魔化してしまう
そして どうやって その日向の言葉を 保存しておけばいいんだろうって 困る
なんでもない日常会話の中に紛れるように こぼすそんな台詞は 本当はちっとも簡単じゃない その言葉を口にする為に 沢山の思いと覚悟を決めて それをずっと秘めて そして時にその思いがふとこぼれる 氷山の一角みたいに その言葉の奥には ずっとずっと沢山の想いが 隠れているから
想像も付かないような 日向のその深い思いを 私はどうやって受け止めればいいのか
どうしたらそれを返せるのか 分からなくて 泣きたくなるような むずがゆさを胸に抱えて 日向の腕の中に 顔をうずめる
**プロポーズだった**
日向の衣装作りを手伝いながら 今度結婚する共通の友人の話をしてたら
私は結婚はしないよ
だってアルとずっと一緒にいたいから
一瞬動きを止めて ぽそりと言った
今まで沢山日向に甘えながら ずるずると引き延ばして でも
日向はいつか誰かと結婚すると思ってた
それが親孝行だからと その道を踏み外せないのだと 長女たる責任を果たす為の経済力も必要だから いつか 日向は結婚すると言っていた
今の幸せは幻だよって 私に言い聞かせてた その話を私にする事自体 日向だって切ないだろうに 私を傷つけない為に 時に忘れそうになる私に話してくれていた
だから 「一緒に生きていく」 という言葉は「友人として」という意味も 含む事が出来る言葉として 捕らえていたから
だから 私にとって 「結婚しないよ」 という言葉がプロポーズだった 言われた瞬間にそう思った プロポーズだ。って
プロポーズって結婚を申し込むって意味なのに 「しない」って言葉がプロポーズなんて 変なのって思うけど
でもこの言葉が 私の中のこんがらがった糸を解き解してくれた
一般的にプロポーズと言われるような そんな言葉と同じ意味合いをもつ言葉
そしてその衝撃を受けたから
これはプロポーズ
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