TWILIGHT DIARY
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深夜、帰宅してBSをつけたら、 リヒテルのシューベルトコンサートの模様が映しだされた。
私は子供の頃、リヒテルのレコードをよく聴いていた。
はず、なのである。 神経質そうな、リヒテルの顔のジャケットを今でも憶えているが、 はてさて、何の曲を聴いていたものか、すっかり忘れてしまっている。
何枚かのリヒテルのピアノソロのレコードの、 どれを聴いていたのかを忘却している。 幼稚園か小学生の頃である。
TVのリヒテルは、すっかり高齢の大先生になっているが、 音の響きやタッチは、力強くて重く、ある時は軽くて繊細だが、深い。
これはヨーロッパの音だなぁ、と思う。
深い森や、大きな美しい噴水のある、たくさんの薔薇が満開の庭園のある古い城。 日傘をさした女性や、白いセーラーを着た、頬がばら色の子供たち。
リヒテルの音を聴いていると、ヘッセやトーマス・マンの世界になってしまう。
残響音も何だか良いなぁと思ったら、会場には日本人はいない。 日本のホールではないらしい。 拍手まで重く響いて、良い音に聴こえる。 字幕によると、ホールはイギリスのサフォークにある、 スネイプ・モルディングス・ホールだそうである。
アンコールが終わっても鳴り止まぬ拍手の中、 シューベルトの多分年代物であろう筈の、すっかり茶色になった譜面を、 先生は大事そうに抱きかかえて深くお辞儀をし、コンサートは終わった。
映像は1977年の録画映像であった。
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